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マイクロソフト、“Windows Server System”の製品展開の成果と今後についての説明会を開催――米本社グループVPのケビン・ジョンソン氏が来日

2004年04月27日 00時00分更新

文● 編集部 内田泰仁

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マイクロソフト(株)は27日、“Windows Server System”関連製品のこれまでの成果と今後の戦略を解説するプレス説明会を開催し、米マイクロソフト社グループバイスプレジデントでワールドワイドセールスおよびマーケティング&サービスグループ担当のケビン・ジョンソン(Kevin Johnson)氏と、同社代表執行役社長のマイケル・ローディング(Micheal Rawding)氏が世界および日本の状況について説明を行なった。

統合的革新による価値創出とセキュリティー対策に
重点を置いた“Windows Server System”の世界戦略

米マイクロソフト社ワールドワイドセールス、マーケティング&サービスグループ担当グループバイスプレジデントのケビン・ジョンソン氏

はじめに登壇したジョンソン氏は、全世界的な“Windows Server System”に関する事業戦略の成果や現状、今後の展開について説明。冒頭、『Windows Server 2003』の発売に伴ってユーザーが得た利点として、

  1. x86サーバーによるTCOの削減
  2. .NETによるビジネスアプリケーションの価値の向上
  3. “Information Worker”のための環境の構築

の3点を挙げた。また、現在のITに対する投資比率の平均は、既存のIT資産の維持や運用が70%、新しいIT資産の獲得が30%となっているが、理想的な数字は既存資産の維持・運用が55%、新しい資産獲得が55%とギャップがあり、新しい価値の増大と保守および展開作業の減少を目指すことが必要だとした。

ジョンソン氏は、サーバーOSや各種サーバーアプリケーションを包括する“Windows Server System”、および“Microsoft Office System”や同社の各種ソリューションビジネスまでの大きな枠組みを「統合された革新」による製品として説明
“Windows Server System”は、単純なサーバープラットフォームではなく、そのほかのさまざまなサーバー製品群も含めた「統合された革新」であるとし、自社の“Windows Server System”製品群、さらには自社およびパートナー企業のソリューション展開などまで含めた統合プラットフォームであることに高い価値があると述べている。同一の機能を持つアプリケーションを、『Windows Server 2003』+.NET Framework環境で開発・運用する場合と、Linux+Java 2 Platform, Enterprise Edition(J2EE)環境で開発・運用する場合では、Windowsプラットフォームのほうが25~28%ほどTCOが低く、“Microsoft Office System”製品群との連携により“Information Worker”の生産性向上にも大きく寄与しているとしている。

また、ジョンソン氏はプレゼンテーションで最近の大規模導入の事例として、成蹊大学の例を紹介(この事例は同社の広告やカタログなどでも紹介されている)。従来はUNIXベースの高価なシステムを用いていたものの、さまざまなシステムやアプリケーションが入り乱れていた状態だったが、今回新たに“Windows Server System”を導入、約8500人におよぶ全学生の情報をActive Directryに統合して一元管理化、Exchange Serverによるメールシステムの再構築、セキュアーな環境の実現などを果たしたと述べた。



セキュリティー対策施策による成果今後のセキュリティー対策のロードマップ

“Windows Server System”に関連するセキュリティー施策については、「全社の最重要課題である」と述べ、『Windows Server 2003』に関する脆弱性情報の量が『Windows 2000 Server』より大幅に少なくなっている例を紹介し、『Windows Server 2003』がいかにセキュリティーの安全性に考慮して開発されたのかをアピール、製品品質の向上、脆弱性の生まれにくい製品開発、顧客アウトリーチの推進に取り組んでいるとした。また、UNIXやLINUX環境と『Windows Server 2003』環境での脆弱性情報やセキュリティー上の欠陥の報告件数の説明では、同社製品が他製品に比べこれらの情報が少ないことを示しつつも、「(セキュリティーの問題は)我々だけでなく業界全体の問題」と述べた。セキュリティーに関する今後のロードマップとしては、2004年前半に“Windows Update Services”“Microsoft Update”の公開、各種トレーニングプログラムの展開を、後半には『Windows Server 2003』 Service Pack 1の公開と更新機能の強化を行なうという。また、今後は迷惑メール対策となる“Active Protectionテクノロジ”“Exchange Edge Services”のリリース、次期Visual Studioでのセキュアーなプログラム開発環境の強化などの取り組みを行なっていくという。

ジョンソン氏は最後に、“Windows Server System”のこれまでの展開について「この数ヵ月の動きに非常に満足している」と述べ、今後もパートナー企業との協力を強めながら事業を進めていくとした。

パートナー企業との協業発表が相次ぐ
日本国内戦略と今後の展開

マイクロソフトの代表執行役社長、マイケル・ローディング氏
日本国内におけるIT投資規模予測日本国内におけるプラットフォーム別のIT投資規模予測

一方日本法人社長のローディング氏は、日本国内の取り組みと今後の展開について説明した。IT全体に対する国内の投資規模は、景気を反映して2001年以降落ち込んできていたが、2003年を底に今年から上向き、さらに、x86およびIA-64プラットフォームの製品群に向けた投資が全体に占める割合は2003年以降順調に伸び、今後もその流れが続くと見ているという。また、過去12ヵ月間のデータでは、IT投資のうち、既存システムの維持・運営のための投資は全体の57%になっていると述べ、同社が示す理想の投資比率に近い数値が日本で実現されているという成果を示した。

『Windows Server 2003』の市場での成長を説明するスライド。成長のスピードは『Windows 2000 Server』を遥かに上回るという

ローディング氏によると、「『Windows Server 2003』は歴代サーバー製品の中で最速の成長を遂げた製品」だといい、『Windows 2000 Server』に比べて売り上げは3倍、発売9ヵ月後の新規購入者数の比率は、『Windows 2000 Server』が25%だったのに対して、『Windows Server 2003』では43%になっていると述べた。また、同社のエンタープライズ顧客のうち75%がActive Directoryを展開、186のOEMハードウェアと461の対応アプリケーションがリリースされ、1万5000人のパートナー技術者トレーニングを行なってきているとした。

ジョンソン氏のプレゼンテーションの中でも強調されたパートナー企業との協力だが、この日同社は、パートナー企業との協業を3つ発表、ローディング氏がそれぞれ概要を説明した。

マイクロソフト、オービックジビネスコンサルタント、日本ヒューレット・パッカードの3社協業による“レガシーマイグレーション活動”の概要OBCの代表取締役社長、和田成史氏

(株)オービックジビネスコンサルタント(以下OBC)および日本ヒューレット・パッカード(株)との協業による“レガシーマイグレーション活動”では、オフコンや小規模なUNIX環境を展開している企業の約5万台のオフコン/サーバーを対象として、1年間で500件の環境移行を実施するというもの。64bit版の『Windows Server 2003』とSQL Server 2000に対応したOBCの中堅/中小企業向け業務管理システム“奉行21バージョンVer.II”シリーズを提供し、全国17ヵ所、2000人を対象とした“奉行21マイグレーションセミナー”も開催するという。この説明の中でローディング氏から紹介され登壇したOBC代表取締役社長の和田成史氏は、同社の事業展開の柱のひとつとしてマイクロソフトの技術にフォーカスしてきたことを紹介、「(同社の事業の)ブロードバンド化と64bitおよび.NET環境への移行は(MS-DOS時代、Windows NT時代に続く)第3フェーズ」であるとした。

また、東日本電信電話(株)(NTT東日本)との協業では、外食産業向けの受発注ソリューション“AutoEDI”を28日に提供を開始するという。ローディング氏によると、外食産業の受発注処理は、電話やファクス、インターネットを介したウェブベースのEDI(Electronic Data Interchange)システムが主流で、受発注情報を既存の基幹システムへ人手を介して入力し直しているケースも少なくないという。“AutoEDI”は、BizTalk Server 2004を基盤としたソリューションで、自社システムと取引先システムとの間で行なわれる受発注処理を自動化するもの。NTT東日本が提供および販売を、マイクロソフトが技術支援を行ない、提供価格は基本機能のみのプラットフォーム導入価格で500万円程度の予定。年間販売目標は20社としている。

“ノーツ環境 無償診断サービス”の開始アナウンスと協業する9社の一覧
さらに同社はこの日より、従来大企業を中心に展開してきた“Lotus Notes/Domino”からの移行施策を中堅、中小企業にも拡大し、Notes/Domino利用顧客に対し、個別に既存のNotesアプリケーション資産の棚卸および移行のためのアセスメントを無償で行なう“ノーツ環境 無償診断サービス”を実施する。このサービスでは、20日にリリースされた同社の『Microsoft Application Reporter for Lotus Notes』を利用して出力したNotesアプリケーションの活用度の分析結果を同社に送付すると、同社が顧客個別にNotesアプリケーションの棚卸と移行に関するアセスメントレポートを作成、提供するというもの。これにより利用者は、不要な既存環境のアプリケーションの破棄や必要なアプリケーションの移行の選別が可能となるため、移行のコストを最小限に抑えられ、さらに移行後のTCO削減も可能になるとしている。また、アセスメント後の顧客の移行作業を支援するため、Note/Domino管理者および開発者向けに“ノーツ移行 無償技術トレーニング”を全国7都市にて無償で開催するという。

同社は、“Information Worker”向けのコラボレーション促進を目的とした製品としてExchange関連製品やSharePoint Portal Serverなどをリリースしているが、今回の施策では、NECシステムテクノロジー(株)、NECソフト(株)、NECネクサソリューションズ(株)、(株)大塚商会、CSK(株)、日本ヒューレット・パッカード(株)、日本ユニシス(株)、日立ソフトウェアエンジニアリング(株)、(株)富士通ビジネスシステムの9社がパートナー企業として参加し、Notes/Domino環境から同社のコラボレーションプラットフォーム製品への移行を行なう顧客の支援を行なっていくという。

プレゼンテーション終了後の質疑応答では、セキュリティー対策の展開についての質問が挙がり、ジョンソン氏は、同社の製品開発に努力や、クライアント向けの啓蒙活動やサービスに加え、各企業の事例に基づいたベストプラクティスの共有や、法機関やIT業界全体との連携が重要だと述べた。また、“Windows Server System”によるTCO削減の説明でJ2EEを比較対象として挙げたことに関連し、米サン・マイクロシステムズとの今後の関係についての質問については、「.NET環境とJ2EE環境の相互運用性の向上」に期待を示した。



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