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“World Tour 2004”開催!エンタープライズLinuxの優位性を再確認

2004年03月18日 23時00分更新

文● 編集部 小板謙次

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米レッドハット社は長期的な事業戦略、製品戦略など紹介する“World Tour 2004”を開催。このイベントは世界6ヵ国7都市で開催されるもので、報道関係者や技術者ばかりでなく関心のある人なら無料で参加できるものだった。17日には最初の開催地となった東京に関係者が集まった。

6時間にわたって開催されたイベントは2部構成になっており、第1部では主にビジネスの観点から製品戦略を紹介、2部ではSELinuxや『Red Hat Enterprise Linux 4』の特徴紹介やQ&Aセッションなどが行なわれた。

参加者でいっぱいになった会場
参加者でいっぱいになった会場

第1部で“Red Hatのエンタープライズ戦略”と題した講演を行なったのはシニア・コミュニティリレーションシップ・マネージャのジェレミー・ホーガン(Jeremy Hogan)氏。氏は、グラフを示しながらパフォーマンスの高さとコストの低さが原因でインテルアーキテクチャーのLinuxへの移行がはじまっており、一方でUNIXアーキテクチャーの落ち込みが激しいことを示した。Linuxの優位性について、TCOはWindowsの40%、UNIXの14%しか占めていないと説明した。

シニア・コミュニティリレーションシップ・マネージャのジェレミー・ホーガン(Jeremy Hogan)氏
シニア・コミュニティリレーションシップ・マネージャのジェレミー・ホーガン(Jeremy Hogan)氏
パフォーマンスの高さとコストの低さが原因でインテルアーキテクチャーのLinuxへの移行がはじまっている
パフォーマンスの高さとコストの低さが原因でインテルアーキテクチャーのLinuxへの移行がはじまっている

また、パフォーマンス面でのメリットとしては、Red Hat Enterprise linuxはWindowsよりも37%速く60%も低コストである点、データベースソリューションではWindowsと比較して12%速く20%安上がり、UNIXソリューションと比較すると4%速く、47%安上がりであるとした。このため、大企業の17%がLinuxを導入しており、72%が今後2年間で使用率を高めていこうとしているというデータを示した。それら大企業のなかには米アメリカ・オンライン(AOL)社や米モルガン・スタンレー社、米アマゾン・ドット・コム社などが含まれているという。

また、エンタープライズリナックス環境を管理していくRed Hat Networkでは、将来的にはモニタリングも入ってくる。このモニタリングはサーバーのみにソフトをインストールするだけで、このモニタリングが可能になるとした。

第2部に登場したエンジニアのジェイ・ターナー(Jay Turner)氏は GCC3.4、SELinux、カーネル2.6、Sistina GFS(Global File System)、Resourec Managementなど新機能について説明した。なかでも注目に値するのはSELinuxとSistina GFSだろう。SELinuxは強制アクセスコントロールにより、ルートがのっとられた場合でも個別ユーザーへのアクセスが制限される。一方で米レッドハット社は米Sistina Software社を買収したが、同社のGlobal File Systemはオープンソースとして出され、Red Hat Enterprise Linux 4で実装されるだろうと話した。また、そのRed Hat Enterprise Linux 4のアーキテクチャーとしては、IA-32、IA-64、AMD64、IBMのメインフレーム(pSeries、iSeries、zSeries)に対応、日本語を含む10ヵ国の言語をサポート、DVDサポートなどが紹介された。

エンジニアのJay Turner(ジェイ・ターナー)氏
エンジニアのJay Turner(ジェイ・ターナー)氏
Sistina GFSについて説明するJay Turner(ジェイ・ターナー)氏
Sistina GFSについて説明するJay Turner(ジェイ・ターナー)氏

今回のイベントにはIBMのLinux事業部からもエンタープライス戦略が紹介された。日本アイ・ビー・エム(株)Linux事業部Linux事業企画部長の上條利彦氏は“徹底検証!IBMのLinuxの底力”と題した講演を行なった。氏はまずLinuxが身近なところで使われている例として、(株)セガのオンラインゲーム『DERBY OWNERS CLUB』や目黒区役所の庁内ネットワークなどが同社のブレードサーバーとLinuxで動いている例を示した。

日本アイ・ビー・エム(株)Linux事業部Linux事業企画部長の上條利彦氏
日本アイ・ビー・エム(株)Linux事業部Linux事業企画部長の上條利彦氏。「LinuxのコミュニテーとIBMがどのように関係していくかに配慮した。昔のIBMであれば顧客を囲い込んで話さないというイメージ。そういうことをやってたんで1990年代の初頭IBMが潰れかけた。実にしみたのでLinuxをビジネスとしてLinuxのよさを顧客に伝えるにはコミュニテーの方とどういう関係を築けるかが鍵だろう。コミュニティーだけのために働くような組織を設立。600名を所属させている」

また、IDCの市場予測を引き合いに出しながらLinuxが高い成長率を誇っている点をアピール。Linuxサーバーの出荷台数は、出荷台数で今年度中にUNIXを上回るとして、「LinuxはもはやUNIXの代替品ではなく、意識的にLinuxを選択して企業で使われるようになったことだ」と話した。また、電子政府とLinuxの関係について触れ、「電子政府をオープンソースで、という動きは単なるムーブメントではなく活用の段階に入っている」と話した。その裏づけとしたのが、OSDLがまとめたレポートの抜粋だ。電子自治体システムに関する技術要件を見てみると、Linuxでできないことはないという。

Linux導入事例の一部
Linux導入事例の一部
国内のサーバー市場を見たグラフ。左がOS別出荷台数
国内のサーバー市場を見たグラフ。左がOS別出荷台数、右がUNIXとLinuxの出荷台数推移。UNIXとの比較では今年中にUNIXとLinuxが逆転する

珍しいデータとして紹介されたのが、Evan Data社によるアメリカで働くソフトウェアエンジニアに対する調査だ。“前年1年間にソフトウェアエンジニアとしてどのOSプラットフォームをターゲットとして一番多く開発を行いましたか?”という質問に対して、Linuxをターゲットとしてソフト開発を行なったというエンジニアが一番多くなっている。しかも、そのなかにはWindows系アプリケーションの開発を行なっていたエンジニアが多いという結果がでている。氏は「我々の感覚では、SolarisやHP-UX、AIXアプリのエンジニアがLinuxに移っているのではと思っていたが、Windows系のエンジニアが多かったのは意外だった、この傾向は遅かれ早かれ日本でもでてくるだろう」とコメントした。

Linuxをターゲットとしてソフト開発を行なったというエンジニアが一番多くなっている
Linuxをターゲットとしてソフト開発を行なったというエンジニアが一番多くなっている
東京三菱銀行での導入。Red Hat AS2.1とxSeriesが採用されている。
東京三菱銀行での導入。Red Hat AS2.1とxSeriesが採用されている。同銀行と取引先との間のウェブサービスシステムに採用。

続いて登壇した日本アイ・ビー・エムxSeries&IntelliStation事業部事業部長の岩井淳文氏は、xSeriesにおけるプラットホーム推移を示した。それによると2年前には約6~7%がLinux(それ以外はWindows)であったものが、昨年の第3四半期にはLinuxが30%を超える結果になっている。

日本アイ・ビー・エム(株)xSeries&IntelliStation事業部事業部長の岩井淳文氏
日本アイ・ビー・エム(株)xSeries&IntelliStation事業部事業部長の岩井淳文氏
xSeriesにおけるプラットホーム推移
xSeriesにおけるプラットホーム推移

「大きな案件を加えると40%近くがLinuxで動いていることになる。Windowsで動いているものをLinuxに置き換えていくと、自分(IBM)の首を絞める形になるため、UNIX市場をIAサーバーで置き換える方向にフォーカスしている。また、UNIXで動いているプログラム、例えばCOBOL、C++など言語で書かれているところには手はださない。我々はミドルウェアで動いているアプリケーションに着目し、そのミドルウエアがLinuxに対応しているかどうかを調査。対応していればIAサーバーに変えてしまいましょうと提案している」と岩井氏はxSeriesの戦略について語った。顧客のメリットとしてはアプリケーションは全く変わらず、低コストとパフォーマンスの高さを享受できるという。「Solarisが高いシェアを持っているのはソリューションの多さと言われている。AIXよりも多くソリューションが稼動するという点が強みだったが、実はそのソリューションがどんどんLinuxで動くようになってきている。結果、従来IBMとしては手を出せなかった分野に、IAサーバーとLinuxを使って進出できる」と話し、その事例としてSolarisで稼動していたウェブサーバーをIBMのブレードサーバーとLinuxに置き換えた米アメリカ・オンライン社や、SolarisベースのシステムをLinuxベースに全面移行してコストを削減したイー・トレード証券(株)の例を提示した。

米アメリカ・オンライン(America Online)社の事例 某国内大手ISPの事例
米アメリカ・オンライン(America Online)社の事例某国内大手ISPの事例
製造業A社の事例 コーエーの事例
製造業A社の事例コーエーの事例

また、Linuxを使いながらブレードを組むというメリットについても強調した。ストレージエリアネットワークにダイレクトに接続できるスイッチやレイヤー4から7といったネットワーク系のスイッチもブレードに付け加え、インフラをシンプルにするのが目標であるという点、またオートノミックブレードを強調した。オートノミックブレードとは自己構成、自己修復、自己最適化、自己防御という4つのコンポーネントから成り立っており、コンピューターが人手を介することなく自分自身を修復していく機能で、ブレード自身が構成を変更するなどを無人で実行していく。

オートノミックブレードの例。Apacheに予期しない取引が入ってきて負荷がかかってきた場合、それをモニタリングしていて、予備ダーバーを立ち上げる
オートノミックブレードの例。Apacheに予期しない取引が入ってきて負荷がかかってきた場合、それをモニタリングしていて、予備ダーバーを立ち上げる。トランザクションやパフォーマンスを監視し、無人で適切に対応する
東京晴海にある日本IBMのコンピテンシー・センターに設置したブレード・サーバー“BladeCenter”からファルコンストア社の東京、香港、ニューヨークのオフィスにある各ディスク機器のWindows Server 2003、Linuxを起動させる実験例
東京晴海にある日本IBMのコンピテンシー・センターに設置したブレード・サーバー“BladeCenter”からファルコンストア社の東京、香港、ニューヨークのオフィスにある各ディスク機器のWindows Server 2003、Linuxを起動させる実験例。

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