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セイコーエプソンとルネサス、次世代携帯機器向け高速シリアルインターフェース仕様“Mobile Video Interface”を策定

2004年03月10日 00時00分更新

文● 編集部

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セイコーエプソン(株)と(株)ルネサス テクノロジは10日、携帯機器の表示と画像データに特化した高速シリアルインターフェースの標準仕様として“Mobile Video Interface”を公開すると発表した。これは、携帯電話機において、液晶パネルや内蔵カメラの高精細化、動画表示の要求などから、二つ折り携帯電話機では、ヒンジ部に、多いものでは100本を超える信号線が通っており、機構設計が難しくなっているうえに、データ量の増加による電磁ノイズ(EMI:Electro Magnetic Interference)などの問題が大きくなってきていることから、新しいインターフェースとして両社が共同開発したもの。

武田浩氏
セイコーエプソン(株)半導体事業部副事業部長の武田浩氏

“Mobile Video Interface”は、携帯電話機のアプリケーションプロセッサー(AP)/モバイルグラフィックスエンジン(MGE)と液晶ディスプレー(LCD)の間、ベースバンドエンジン(BBE)とAP/液晶ディスプレーコントローラー(LCDC)の間、AP/LCDCとカメラの間などを、少ない信号線で高速にデータを転送するために適用範囲を明確化したものとなっている。従来のCMOSの電圧駆動型のパラレル転送ではなく、電流駆動型LVDS(Low Voltage Differential Signaling:低電圧差動信号)方式による高速シリアル転送を採用したことで、1チャネルあたり最大200Mbpsの安定した高速転送に対応したのが特徴。単方向/半二重/全二重通信をサポートするほか、“8B/10B符号化”によるエラー検出機能も搭載する。より高速なデータ転送が必要な場合は、チャネル数を自由に増やすことが可能。また、物理層のみを規定しており、上位レイヤーはアプリケーションによって自由に設計できるようになっている。

原英夫氏
(株)ルネサス テクノロジSOC事業部副事業部長の原英夫氏

物理層(PHY:PHYsical layer)は、“ホスト”と“ターゲット”で構成され、両者を結ぶ信号線は、1チャネルの全二重通信の場合、ホストからターゲットに供給するクロック信号(CLK+/-)、出力データ信号(DTO+/-)、ターゲットからホストへのストローブ信号(STB+/-)、ターゲットからホストへの入力データ信号(DTI+/-)の8本の信号線が利用される(基本構成)。半二重通信では、ストローブ(STB+/-)と入力データ(DTI+/-)は利用しないため4本ですむことになる。さらにターゲットは、ホストからのクロック(CLK+/-)をシステムクロックとして利用するため、周波数を同期させるための“PLL(Phase Locked Loop)”回路が不要になり、低消費電力化も図れるという。データ転送クロック周波数は最大200MHzで、LVDSのHシンク電流(IH)が500μA、Lシンク電流(IL)が100μA、伝送路の電圧は1V。消費電流は1チャネルあたり1.4mAになるという。また“8B/10B符号化”は、信号の0と1の出現頻度を均一化し、DCバランスを保つことで通信の安定化を図るとともに、エラー検出に対応するために採用したもの。12種類の特殊符号(Kコード)が割り当てられているため、転送開始/停止などのコントロール信号も利用できる。この8B/10B符号化機能は物理層に実装されるため、ユーザーは意識する必要はないという。

ロゴ
“Mobile Video Interface”のロゴマーク

両社は、“Mobile Video Interface”をライセンスフリーのオープンアーキテクチャーとして提供する。フレームワークとして、“コアメンバー”、“パートナー”、“SIG(Special Interest Group)”の3つのカテゴリーが用意されており、両社がコアメンバーとなり仕様を策定し、“パートナー”に対して、開発期間を短縮できるようにデザインガイドや開発キットを有償で提供(500万円)する。採用を検討しているメーカーなどが対象となるSIGに対しては仕様の提供のみを行なうことになるが、SIGで仕様を入手し、製品を開発することも可能であり、特に拘束などは設けないという。両社は、“Mobile Video Interface”の普及促進のためにロゴマークも制定。ロゴを利用できるのはコアメンバーとパートナーで、開発した製品がデザインキットに含まれるチェックシートで要求仕様を満足している場合に利用できるという(ただし互換性を保証するものではない)。

ロードマップ
仕様のロードマップ

同日午後に開催された記者発表会では、セイコーエプソンの半導体事業部副事業部長の武田浩氏、ルネサス テクノロジのSOC事業部副事業部長の原英夫氏、セイコーエプソンのIC企画設計部部長の桜井洋一氏、ルネサス テクノロジSOC第六部部長の川崎郁也氏が登場した。

冒頭、挨拶に立ったセイコーエプソンの武田氏は、“Mobile Video Interface”について、両社が2003年9月に高速インターフェースの標準仕様として策定を開始したもので、背景には、携帯電話機のヒンジの部分の端子数の削減、低消費電力化、低EMI化の要求に対して、従来のCMOSインターフェースでは限界が見えてきたことがあると説明。半導体メーカーとしてさまざまなインターフェースの規格に対応するより、両社で共通仕様を策定することで開発に割り当てるリソースが減らせるメリットがあることから、デファクトスタンダードにしたいと述べた。続いて、ルネサス テクノロジの原氏も、信号線の本数やEMI対策などが問題となっていることを挙げ、同社がアプリケーションプロセッサー“SH-Mobile”を製品化しており、セイコーエプソンが“Mobile Graphics Engine”などのコントローラー製品を持ち、それぞれシェアを持つことを紹介、今後の液晶ディスプレーの大画面化などにおける課題を解決していくとともに、共通仕様をオープンとすることで本当の標準化に持っていきたいと述べた。

川崎氏 桜井氏
ルネサス テクノロジSOC第六部部長の川崎郁也氏セイコーエプソンIC企画設計部部長の桜井洋一氏

次に、ルネサス テクノロジの川崎氏が、携帯電話を取り巻く環境や“Mobile Video Interface”の特徴、適用範囲などを説明した。現在の二つ折り携帯電話機のヒンジ部には多いのものでは100本を超える信号線が通っていることや、液晶ディスプレーの解像度がQVGA(26万色)に高精細化され、内蔵カメラの画素数が200万を超える現状を紹介し、ヒンジ部のピン数の増加により設計が難しくなっているうえに、データ量の増加に伴う電磁ノイズや消費電力の増大が問題になってきていることから、新しい仕様の策定が必要になったと説明した。

セイコーエプソンの桜井氏が技術説明を続け、LVDSで適切な電流値の決定が重要であることや、使いやすさに重点をおいていることを強調した。携帯電話機の評価ボードを例にとり、従来の48ピンRGBインターフェースを6ピンの“Mobile Video Interface”(細線同軸ケーブル)に減らせただけでなく、携帯電話の感度に影響する200MHzから1GHzまでのEMIが大幅に低減していることを実測値のグラフで示した。そして、ライセンス形態やロゴなどについて説明したのち、ロードマップを紹介した。今回発表されたのは、“Mobile Video Interface Rev.1.0”であり、液晶ディスプレーとのリンク(LINK)を想定しているが、第4四半期にはカメラとのリンク、2005年第1四半期にはベースバンドエンジンとのリンクを予定しており、2005年第2四半期にはデータ転送速度が400Mbpsとなる“Mobile Video Interface Rev.2.0”を発表する予定であることなどを説明。質疑応答では、現状では携帯電話機をターゲットにしているが、PDA(携帯情報端末)などの情報機器にも適用できるポテンシャルを持っていることを強調した。

デモの様子
会場の入り口近くではデモを実施。携帯電話機の高機能化や表示の高解像度化などにより、ひと昔前のノートパソコンの液晶パネルと本体基板を結ぶ配線と同じことが起こりつつあるという

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