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ソニー(株)副社長 高篠静雄氏/月刊アスキー編集主幹 遠藤諭 特別対談

ソニー(株)副社長 高篠静雄氏/月刊アスキー編集主幹 遠藤諭 特別対談

2003年11月27日 01時38分更新

文● 月刊アスキー編集部・遠藤

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QUALIA 004

Q004-SXRD/HDプロジェクタ
Q004-SXRD/HDプロジェクタ/240万円

映画館の感動を家庭で味わうをコンセプトに作られたホームシアター向けプロジェクタ。200万画素のディスプレイパネル「SXRD」を3枚使用し、業界初のHDフォーマット(1920×1080ドット)に対応。映画館の映写機に使用されるピュア・キセノンランプの採用により、一般的なプロジェクタに比べて色再現性を大幅に強化している。

感動という点では、ウォークマンこそ典型的なクオリア

[高篠氏] 高額商品とよく書かれていますけれど、高額の商品=QUALIAだというわけではないんですよ。あくまで目的は感動を与える商品。僕はよく言うのですが、例えばウォークマンがそうです。
[遠藤] 3万いくらでしたっけ。当時としては高かったですが。
[高篠氏] 高かったけど、かけ離れた値段じゃないですね。あれなんかは人にものすごい感動を与えた、文化を創った。あれはまさにQUALIAだと僕は思っている。しかもビジネスも非常に大きくなった。
[遠藤] 感動させればよいのだから、もうちょっと安いQUALIAもあり得ると。しかしそうなると、ソニーの歴史上QUALIAと呼べる物は5~6個ですかね。
[高篠氏] どのくらいだろう。トランジスタラジオだって。テープレコーダもあるし、8ミリカムコーダもあるでしょう。量産の時代に移ってくると、だんだん数が減ってきますね。
[遠藤] なるほどね。だんだんそうした物が少なくなってくる。アイボみたいなものも。
[高篠氏] アイボもQUALIAじゃないですか。特に最初の製品は。二足歩行の奴も。ホンダのASIMOもQUALIAじゃないかな。
[遠藤] ああいうロボットがQUALIAで出てくる可能性はあるんですか。
[高篠氏] 今のところはないです。感動する商品って、ウォークマンなんかがそうですが、買ってそれを楽しむ姿をお客さんが自分で想像できるんだと思うのです。町の中や飛行機の中で使ってみたら、変わるだろうなって。ただ人によって感動するポイントがずいぶん違うのでね。

 しかしあまり大勢の人が集まって調整していくと、たぶんQUALIAじゃなくなっちゃうと思う。音質なんかがそうなんですが。
[遠藤] みんなに気持ちのいい音はない。
[高篠氏] 特に尖っている音はね。QUALIAも人によっては、「こんなの大嫌い」という意見もあるかもしれない。だけど尖っている商品だから、その分すごく感動もされる。
[遠藤] 作る側は少人数で、聞く側、受け取る側はマスになる可能性を秘めていると思うのです、尖った商品でも。
[高篠氏] そうですね。
[遠藤] イタリア人の家にいくと、貧しい家でもしゃれた三角形のテーブルがあったりしてびっくりする、なんて話があってね(笑)。それはイタリア人の遺伝子の中に、貧しくても不便でも、三角形のおしゃれなテーブルを買おうよというものが、遺伝子というか脳の中にあるからじゃないかと。
[高篠氏] あるかもしれませんね。
[遠藤] そういうものを受け入れる気持ちが消費者の中に出てくると、それがちゃんとマーケットになる。それが定着するのがQUALIAの目指すところですか。
[高篠氏] そうですね。人間誰でもいいものを安く買うに越したことはない。でも今は安く安くが先行していて、とかく我々の業界もいかに安く作るかを重視してきた。要は本物と言える物をはたしてどれほど得られるのかということを、我々はとことんもう一度追求するんだと。ソニーはそういうことをもう一回やって、全体のボトムを上げようと。

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