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ソニー(株)副社長 高篠静雄氏/月刊アスキー編集主幹 遠藤諭 特別対談

ソニー(株)副社長 高篠静雄氏/月刊アスキー編集主幹 遠藤諭 特別対談

2003年11月27日 01時38分更新

文● 月刊アスキー編集部・遠藤

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QUALIA 015

Q015-KX36/トリニトロンカラーモニタ
Q015-KX36/トリニトロンカラーモニタ/130万円

36型のスーパーファインピッチFDトリニトロン管を搭載するモニタ。新開発のブラウン管に、液晶ベガなどに搭載されるデジタル画像処理システムを組み合わせ、漆黒や深紅といった従来難しかった色も美しく再現する。専用スピーカとフロアスタンドが付属。

カムコーダを水に漬けて隙間をチェック?

[遠藤] その後はどの辺を?
[高篠氏] ラジカセもやりましたし、あとはウォークマンですね。私が携わった中で、ソニーとして1番の成功はウォークマンですね。
[遠藤] ウォークマンの初号機をやられたのですか。ではテープレコーダというソニーの基幹事業をやられてきたわけですね。
[高篠氏] そう。ウォークマンの時はもう自分が直接設計していたわけじゃないですけど。私はどちらかというとポータブルのほうをずっとやってきまして、ウォークマンやディスクマン(後のCDウォークマン)の担当。そしてMDの立ち上げと。

それを活かして、'94年だったかな? カムコーダとオーディオが一緒になった部門ができましてそこに。ちょうどあの頃は、カムコーダはシャープの「液晶ビューカム」にやられちゃってまして、非常に苦しい時でした。あれは'89年かな「CCD-TR55」。
[遠藤] パスポートサイズのカムコーダ?
[高篠氏] あれはうまくいったのですが、その後にシャープの液晶ビューカムが出てきて、ソニーの商品はちょっと特徴がなくなってた。'90年くらいに全世界でものすごくカムコーダが売れまくったのですが、操作がだんだん難しくなったり価格が高かったりで、マーケットがだんだんシュリンクしていって、'92~93年には生産調整やらなにやらとどん底がきた。そのときに「お前カムコーダをやってくれ」と言われて、「嫌だ、ああいう覗くような物は」と。
[遠藤] 「いやだ」が通用する会社なんですか。
[高篠氏] 通用するんですよ、うちは。でも最後まで断り切れないってのもまたうちで。それでカムコーダへと。

 あの頃ウォークマンってのはカセットケースサイズで、ものすごい勢いで小さくなっていた。小型にするマネージメントとか、やり方やらせ方とか、いろんなノウハウがありまして、それでカムコーダに行ったんです。でもその頃には、パスポートの方が一回り小さくなっていたんですね。僕が「なんだこれは。パスポートサイズじゃないじゃないか」と言うと、「いや部品が大きくて隙間がない」とか言うわけです。

 カムコーダには超優秀な人たちが集まっていますから理論ではかないそうもないんで、「パスポートサイズにできないと言っている奴と物を俺のとこに持ってこい」と。もう1つは「バケツに水を入れて持ってこい」と。僕が「隙間がないんだな?」と聞くと、「まったくありません」と言うので、「じゃあこれを水の中に入れるから。あぶくが出たら隙間があるのかないのか?」と。
[遠藤] (笑)
高篠氏
[高篠氏] 「あぶくは出るのか?」「出るでしょう」「あぶくが出るってことは空気が入っている。ということは隙間があるんだろう」なんてこともやりました。実際には水には入れなかったんですけどね。
[遠藤] もったいないしね(笑)。
[高篠氏] それで彼らも言い訳を諦めまして。僕はオーディオ屋ですから、カムコーダの中身なんてわからない。僕が無茶苦茶なことを言っているうちに、人間ってのは追い込まれたり、覚悟を決める。人間のすごさってのは、追い込まれたり決意したときにでる。
[遠藤] 全然違う突破口を見つけるような。
[高篠氏] そう。それでカムコーダもなんとかなった。業績もずいぶん回復してきて、利益頭になった。
[遠藤] やはり小さくなったから売れたんですか? ソニーさんが物を小さくするのは、ある種の経験則があるんでしょうか。
[高篠氏] ありますね。それと小さいにこしたことはないけれど、ただ小さいだけじゃ使い勝手が悪いですよね。ですから使い方の問題、デザインとか。でも昔は小さい物を出すとお客さんも驚いてくれたんだけど、最近はそれほど驚かなくなってきましたね。
[遠藤] 若い人はわりと普通に「あ、ちっちゃいじゃん」と、そのくらいの感動しかない。
[高篠氏] その頃は小さくすることでものすごい感動ってのがあったと思うのですが、今はそれがすこし薄れてきた。今の価値観では小さくするだけでは十分ではない。時代も変わってきたと。


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