510万画素を普段からポケットに
サイバーショットシリーズには現在、ウルトラコンパクト機である「サイバーショット DSC-U40」があるわけだが、幅や高さを抑えた代わりにやや厚みのあるU40(26mm)に比べ、本体で17.3mm、レンズカバーを入れても21mmというT1は胸ポケットなどにすんなり収まりやすい。レンズカバーをスライドさせれば撮影可能になる操作性や、レンズ沈胴/伸張がない点もあって動作は素早く、普段から持ち歩いてポケットからさっと取り出して撮影という利用が気持ちいい。
レンズカバーを押し下げて電源を入れる操作方法はやや違和感があるが、実際に使ってみるとすぐに慣れるほか意外なメリットもある。カメラがぴったりと収まるバッグやカメラケースのほとんどはカメラにとって長辺である横方向に収めるようになっているが、横にスライドするレンズカバーを持つカメラでは差し込んだときにバッグの内壁に押され、収納時に電源が入ってしまうことがある。縦方向へのスライドならばこの種の操作ミスは防げるわけだ。
撮影サンプル
撮影サンプル1(a)。1944×2592ドットの元絵を480×640にリサイズした。 | 撮影サンプル1(b)。1944×2592ドットの元絵の部分をトリミングした。 | |
撮影サンプル1 元画像は1944×2592ドット。暗部がややざらついた印象があるが、強めのコントラストにもかかわらずハイライト部分がとんでおらず、エッジの着色もほとんどない。 |
大画面液晶は確かに見やすく、大きな文字のメニューやステータスアイコン表示は操作性も良好だ。表示画素数は21.1万画素とデジタルカメラの中では高精細の部類なのだが、それでも大きな液晶画面のために粗く見えてしまう。撮影時にはリアルタイム性を重視するためにさらに少ない画素数の映像を表示しているためフォーカスが合ったところがなかなか分かりにくいほか、再生時でもいまひとつシャープさに欠けるきらいがある。表示画素数に比べて大きな液晶サイズが逆に粗さを意識させるのは、最近のノートPCやPDAの小サイズ/高精細液晶と比べてしまうこともあるが、デジタルカメラとしては豪華なスペックにもかかわらず物足りなく感じてしまうのは非常に惜しい。
撮影サンプル2(a)。1944×2592ドットの元絵を480×640にリサイズした。 | 撮影サンプル2(b)。1944×2592ドットの元絵の部分をトリミングした。 | |
撮影サンプル2 元画像は1944×2592ドット。コンパクトな本体にもかかわらずレンズ描写はしっかりとしている。広角側38mm~ということもあって歪みも少ない。 |
撮影時に気になった点としては、日中でも日陰など光量が足りないシーンではシャッター速度が低下しやすいことだろう。これはF3.5~4.4とやや暗いレンズを採用しているためで、シャッター速度とズームの比率でよって手ぶれ警告が液晶画面上に表示される機能は付いているものの、しっかりグリップしにくい薄型ボディもあって日陰や屋内での撮影には十分注意したい。
撮影画像に関しては暗部でややざらついた印象があり、小サイズ高画素CCDの低ノイズ化の難しさをうかがわせる。サイバーショットシリーズでは輝度/色ノイズを平坦化する「クリアカラーNR」「クリアルミナンスNR」を搭載しているため、明るくて均一な部分ではノイズ感はかなり抑えられており、普段のスナップ撮影には十分と言えるだろう。なお、熱ノイズを低減する「NRスローシャッター」も搭載しているので、三脚穴を装備していないものの工夫次第で夜景撮影も可能だろう。
撮影サンプル3(a)。2592×1944ドットの元絵を640×480にリサイズした | 撮影サンプル3(b)。2592×1944ドットの元絵の部分をトリミングした | |
撮影サンプル3 元画像は2592×1944ドット。マクロは8cmまでAFが効くほか、シーンモードで「拡大鏡」を使えば1cmまで近接(固定焦点)できる。作例はマクロAFで撮影したもの |
コンパクトデジタルカメラにも500万画素化の波が押し寄せており、いわゆる“高級コンパクト機”というジャンルを築いている。“高級”ということでハイアマチュア向けにマニュアル露出といった機能を搭載する機種も多いが、スナップ撮影が中心であることを考えれば、軽快に使えることがなによりも求められる。T1はUシリーズのような単焦点レンズを備えるカメラと同クラスの軽快さを持ちつつも、光学3倍ズームレンズによって広い撮影範囲をカバーし、さらに510万画素ということでトリミングやリサイズしたときの情報量も高い。凝った撮影はより大柄な高機能カメラを使うとして、普段からの持ち歩いてのスナップ撮影を主用途と考えるならばもっともお勧めな製品と言えるだろう。
撮影サンプル4(a)。1944×2592ドットの元絵を640×480にリサイズした。 | 撮影サンプル4(b)。1944×2592ドットの元絵の部分をトリミングした。 | |
撮影サンプル4 元画像は1944×2592ドット。フラッシュを用いて撮影。赤目低減モードを使用しなかったため赤目現象が生じてしまった。画面下には強めの光源があったので、レンズから入射した光が内面反射によってフレアを生じている。 |
サイバーショット DSC-T1の主なスペック | |
製品名 | サイバーショット DSC-T1 |
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撮像素子 | 1/2.4インチ有効510万(総530万)画素 Super HAD CCD |
レンズ | 光学3倍ズーム、f=6.7~20.1mm(38~114mm)、F3.5~4.4 |
記録媒体 | メモリースティックDuo(32MB付属)(※1) |
記録画素数 | 2592×1728(3:2)/2560×1920/2048×1536/1280×960/640×480ドット |
液晶モニタ | 2.5インチTFT(21万1000画素) |
インターフェイス | AV出力&USB 2.0&クレードル(マルチ端子)/DC入力/ |
電源 | 専用充電池(インフォリチウムTタイプ) |
本体サイズ | 約91(W)×17.3~21(D)×60(H)mm |
重量 | 約155g(本体のみ)/約180g(装備重量) |