このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 次へ

ThinkPad T40(2373-72J)

ThinkPad T40(2373-72J)

2003年10月20日 03時51分更新

文● 月刊アスキー編集部・中西

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

狭い筐体での基板設計

上面のメモリスロット
写真9 上面のメモリスロット。従来はすべて底面にあったのが、T40ではスペースの関係で上面に。
[編集部] 回路・基板設計のポイントは?
[松島氏] 薄さへの貢献という点ですが、1インチでマシンを作るというとき、基板のほうは面積と高さの値が与えられます。まず、そこから始まります。こちらからこれだけいりますというのではなく、最初からこれに入れてくれ、という感じになります。
[編集部] ではここを出っ張らせたいとかは?
[松島氏] そこは話し合いです。その中で苦労した点としては、まず高速な信号を扱うコンポーネントがかなり多くなったということですね。CPUとチップセット間はもちろん、AGPはAGP×4、メモリもDDR266、またUSB 2.0など。限られたスペースで信号の品質を保ちながら配線するのは大変でした。
[小川氏] ハイスピードの信号に関しては、基板の層を挟んで並行した配線が走ると、ノイズが入ったりして信号のクオリティが下がってしまいます。また、信号の長さを一定の範囲内に収めなければならなかったり、当然インピーダンスもあります。そういうのを検討、シミュレーションをしたうえで、実際の配線を決めていきます。
[編集部] 丸いくぼみの付いた基板はこれまで拝見したことがないんですが、この基板のかたちは相当……。
[松島氏] 痛いですね(笑)。
[編集部] これも最初から決まっていた?
[松島氏] いや、最初は四角だったんですよ。でも、コンポーネントを載せるスペースが足りないということで、丸くしました。ギリギリまで面積をかせぐためにですね。
[編集部] これはもう載らないだろう、ということは?
[松島氏] 最初は必ず、この面積では載りませんというのがあるんですよ(笑)。でも、何とか置きましたね。基板の裏には、大きなコンポーネントが載っていませんし。
[編集部] これは、載せるなという要望があったのですか?
[中村氏] 通常は効率的に配線するために、裏と表の両方にパーツを並べます。ですが、背の高いパーツと低いパーツが並ぶと、基板は筐体内でその高いパーツに合わせた位置に配置されます。今回はできるだけ低い位置に置きたかったので、裏側には低いコンポーネントだけを持ってくるようリクエストしました。
[松島氏] 今までのTシリーズだと、メモリを2枚挿せるように底面に開口部を大きく開けて、またMiniPCIも底面からアクセスできるようにしていました。しかし、T40では底面にスロット類をほとんど置けなかったので、キーボードを開けなければなりませんが、メモリを1スロット、上面に置いています。MiniPCIは、パームレストも外さなければなりませんが、これも上面に置きました。
[小川氏] 基板設計から言うと、本当に一番大変なのは電源の種類の多さです。この基板だけで、電圧を9種類供給しているんですね。それにバッテリチャージャの電源があって、全部で10種類。スタンバイのときに切る電源だとスイッチが必要になりますので、結局20~25種類の電源の種類があります。そういったものをいかに引き回すのか、高速の信号を引くのより、ある意味大変でしたね。


次は1cmになる!?

MiniPCIスロット
写真10 MiniPCIスロット。これもスペースの関係でパームレストの直下に実装している。
[編集部] 最初は1インチに収めることなんて無理だと思われていたのが、実際にできたときはいかがでしたか?
[中村氏] それはうれしかったです。「これでクビがつながった」って(笑)。毎日毎日、会社に来るのが楽しかったですよ(笑)。
[編集部] 今度は1cmにしろと言われたらどうしますか?
[中村氏] それは、ぜひやってみたいですね。
[編集部] 1インチのときは無理だとおっしゃったのにですか?
[中村氏] 開発というのはやりがいのある仕事です。自分のできないと思っていたこと、1インチの厚みということが、チームで努力するとできますから。チームワークで、きっとそれも達成できると思います。
 スペックを犠牲にして、ただ薄ければいいというのであれば、今でも1cmは可能です。ですが、我々は自己満足でやっているわけではありません。1cmで喜んでもしかたがありません。それによって、お客様の仕事がどれだけはかどるのか、仕事の能率が上がるのかということを念頭に置いて、設計をしてますからね。もっとも、1cmというのは、どこから手をつけていいのか分かりませんが。厚さ1cmのThinkPad、どれくらいのお値段なら買っていただけますか(笑)?
[編集部] それは難しいご質問ですね(笑)。

ThinkPad T40(2373-72J)の主なスペック
製品名 ThinkPad T40(2373-72J)
CPU Pentium M-1.50GHz
チップセット Intel 855PM
メモリ(最大) DDR SDRAM(PC2100) 256MB(最大2GB)
液晶/解像度 14.1V型/1024×768ドット
グラフィックス MOBILITY RADEON 7500(32MB)
HDD 40GB
FDD なし(オプション、USB外付け)
光メディアドライブ CD-RW&DVD-ROMコンボドライブ(CD-R16倍速、CD-RW10倍速、CD24倍速、DVD8倍速)
スロット PCカード(TypeIII×1またはTypeII/I×2)
通信 10/100/1000BASE-T、IEEE802.11b、56kbpsモデム
I/O USB 2.0×2、外部ディスプレイ端子、ビデオ出力(S端子)、パラレル、IrDA 1.1
バッテリ駆動時間 4.9時間
サイズ(W×D×H) 311×255×26.6~31.4mm
重量 2.25kg
OS Windows XP Professional

前へ 1 2 3 4 次へ

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン