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インテル前社長ジョン・アントン氏に聞く――“COMPUTEX TAIPEI 2003”で

2003年09月30日 23時31分更新

文● 遠竹智寿子

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“COMPUTEX TAIPEI 2003”の期間中(22日~26日)に開催された米インテル社主催のエグゼクティブ・パーティーに姿を見せたジョン・アントン(John Antone)氏にお話をうかがった。インテル(株)の前社長を務めたアントン氏は、6月1日の日本社長の交代に併せ、米インテルのセールス&マーケティング事業本部副社長兼アジア太平洋地域オペレーション統括本部長に就任している。(聞き手:遠竹智寿子)

Q&Aセッションに登場
インテル(株)前社長のジョン・アントン(John Antone)氏。プレス向けのQ&Aセッションに登場
[遠竹] 日本法人社長の立場から、一転、アジア・パシフィック全体の市場を見ることになりましたが、6月以降はお忙しかったですか? 新しいポジションは、日本の社長職と比べていかがですか?
[アントン氏] 実のところ、ついこの前まで日本と香港を行ったり来たりしていてやっと少し落ち着いたところで、最近ようやく、アジア地域担当の立場での業務を本格的に開始したばかりです。ですから、職務を変わってどうのとお話できるほどのことはしていないんですよ(笑)
[遠竹] あなたが、かなりの日本ビイキだということは、有名ですよね。日本には家をお持ちだとか・・・。日本のメーカ企業のエグザクティブの方々とも深い信頼関係をお持ちで、あなたが日本を去ることについて彼らが非常に残念がっていたというような話も聞いています。そんな中で、日本を離れることに対してはいかがでしたか?
[アントン氏] 持ち家のことをよくご存知ですね(笑)。僕の妻は日本人ですし、日本には多くの友人もいます。日本には愛着がありますので、離れることは残念には違いありません。しかし、日本での5年間(副社長時期を含めて)を認められ与えられた今回の任務ですから、大変喜ばしくもあり、新しい環境ということでもエキサイティングしています
[遠竹] 日本の新社長についてはどうですか?
[アントン氏] 経験と実績のある2人ですから、信頼を置いています
[遠竹] アジア・パシフィックというとかなり広範囲な地域を見なければなりませんが、特に注目されている国はありますか?
[アントン氏] ここ台湾もですが、中国、香港、韓国といった北アジアに注目しています。インド、シンガポール、マレーシアなどもですね(※1)
※1 余談だが、プレス向けに行なわれたQ&Aセッションで氏は、「アメリカ、日本など既存のマーケットでは、過去3年間の低迷期を抜け出しパソコン需要回復の兆しが見えてきた。しかし、今後はさらに、新しい経済力を持つ諸国の力が業界を推し進めていくことだろう。中国を始めとする発展途上国でのパソコン需要は、それらの国のGDP成長を上向きにさせる力も持っている」と語っている

[遠竹] 今回は、COMPUTEX 2003への参加ということでこちらに来られたわけですが、台湾と日本、あるいは米国との違いなど何か感じられましたか?
[アントン氏] 日本の技術はすでに誰もが認めるものですが、自分たちの技術を防御しすぎる傾向があります。アメリカもそうです。それに比べ、台湾企業は、自分たちの技術を表に出すことをまったく恐れていないといった感じです
[遠竹] アメリカは、オープンなイメージがありますが、そうでもないですか?
[アントン氏] 新しい技術を競合企業とシェアするという考えは決してありません。ビジネスパートナーとしてであれば別ですが、自分たちの技術を頑なに守ろうとします。しかし、台湾企業は、技術を隠さず、どんどん他と競い合っていくことで成長を果たしているように感じます
[遠竹] なるほど、では、台湾の技術力をどう見ていますか?
[アントン氏] 数年前は、確かにまだ未熟だった部分が多かったかも知れませんが、最近は技術の面でも積極的に動いているのが分かりますね。それは、市場でも認められてきています。もともと価格が安いうえに、技術もしっかりしているとなれば顧客は傾きますからね。かつて、もうだいぶ古い話ですが、日本の技術がアメリカでは見向きもされなかった時代があり、見くびっていたら、あっという間に日本企業にその市場を食われていたという例もありますよね
[遠竹] 日本もアメリカも積極的に自分たちの技術を見せていく必要があるということですか?
[アントン氏] 技術そのものを全部見せてしまうことを真似しろとはいいませんが、台湾、あるいは韓国がそうなって(日本、アメリカの技術を追い越して)いく可能性があるということを日本もアメリカも認識しておくべきです
[遠竹] インテルとしてもその辺で台湾に注力しているということですね
[アントン氏] はい。もちろん他のメーカー(※2)のブースを見れば、台湾に期待しているのはうちだけではないこと分かりますが……(笑)。とにかく、今日もすでに台湾メーカーの方々からアグレッシブなご意見をたくさんいただいていますので、今後の参考にしていきます
※2 今回、米Advanced Micro Devices(AMD)社、米テキサス・インスツルメンツ社など大手外資各社が大規模に出展している

[遠竹] そのほかにアジア諸国のことで何か考えることはありますか?
[アントン氏] IT分野での取り決めや規格などについて、中国、台湾、日本の3ヵ国がもっと強く結びつく必要があり、それには政府レベルでの話し合いが必要だと思います
[遠竹] 日本国内でも政府が関わる話は、時間ばかりがかかってなかなか先に進みません。難しいのではないでしょうか?
[アントン氏] たぶん、そうでしょう。でも、このままではいけない。技術の進歩はそれとして、アジア圏でのITや関連ビジネスが本当の意味で伸びていくには、其々の国の力を統合しなければならず、そのために各国政府がこの分野においてもっと親密になっていくことが必要不可欠ではないでしょうか
パーティー出席者の話に耳を傾けるアントン氏
パーティー出席者の話に耳を傾けるアントン氏(右端)、パーティーには台湾のエイサー社、台湾ABIT社、米デルコンピュータ社、台湾ギガバイト社、台湾Tatung(大同)社といったメーカーの業界エグゼクティブたちが招待された

オフィシャルなインタビューではなかったため、そのほかにもプライベートな話などをざっくばらんに話してくれたアントン氏。最後に「政府の問題に口を出したとは書かないでくれよ」と冗談まじりに微笑えんで、話を終えた。

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