このページの本文へ

【特別企画】CGアーティストの仕事場拝見!ギガビット環境の実力は?

2003年09月30日 00時00分更新

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

■CGアーティストにとってなくてはならない絶対的な時間

「最近、街に出るとひと昔前のようにコストのかかった大物広告の数が減ってきています。その反面、街頭チラシ系の小さな広告媒体でもかなり手の込んだものが多くなってきていると感じることが多いですね。一般的に街を歩くと、一日のうちに数万とも、数十万ともいわれている広告を目にするとされていますが、これらのほとんどは、制作から印刷に至る過程において必ずといってよいほどコンピューターテクノロジーの恩恵に授かっているでしょう。これまで最終的な出力行程などはやはり職人による手作業といった感が非常に強かったのですが、今となってはもはやメディアの世界において、コンピューターによるなんらかの表現手法を使っていないものを探すほうが難しくなってしまったと言えるでしょう。このデザイナー総コンピューティング化の影響によって広告の世界における、“コストから来る表現の格差”が埋まってきていると考える事が出来るのではないでしょうか(富田氏談)」

 富田氏が広告の世界で仕事を始めたのは10年程前からのことだが、その頃はまだ、データー納品を行うことの方が困難だった。一つの仕事をこなすのに常にアートディレクターやクライアントとのやりとりを密に行い、校正を繰り返すことではじめて最終的な広告が完成するといった流れであった。ところが、前述のようにコンピューターによる広告制作が当たり前になってしまった今日は、打ち合わせはメールベース。校正から納品までもがPDFと生データーのやりとりで完了してしまう。勿論、今まであったはずのFACE TO FACEのミーティングなどを一度も行わずに校了してしまうことすらある。つまり、一回も会ったことがなく声もわからない人と知らない間に仕事が終わってしまう世界なのだ。

 このことによって当然であるが、一回の仕事にかかる時間とバジェットは大幅に減少する。さらに、これも当然のことだが、仕事依頼から納品までの時間は圧倒的に短くなる。これによってクライアントは広告案の段階での選定にじっくりと時間をかけることができ、広告代理店も最悪は作り直しという必殺の切り札を使うことも可能となる。が、しかし、CGアーティストにとってなくてはならない絶対的な時間が存在する。

「モデリング済みの3Dデーターをコンピューターパワーによって仮想的に光源シュミレートさせて「絵」を作るために必要な時間、つまりはレンダリングに要する時間が割かれてしまう。今まであれば初回の打ち合わせ時点であらましを把握して作り始め、ようやく本決まりといった際には、すでにかなりの部分が完成していることもあったんあですが、現在ではそうも言っていられない。純粋なアーティストではなく職業的なCGアーティストにとってはとにも角にもスピードが命なんですよ」(富田氏)

その富田氏の命題である仕事依頼から納品までのスピードを強烈にアクセラレートすることができるシステムというのが、ギガビット環境だったようだ。



■貸し出しレンダリングサーバーのシステムと同じ環境を構築可能

 普段、富田氏が使用しているのマシン構成は、メインマシンがXeon-3.06GHzのDual。足回りは万が一を考えて72G/15000rpmのRAID5で構築済みだ。比較的最強に近いマシン構成だが、今回取材した環境がこれを超えるトータル性能を見せてくれるかは非常に興味深い部分だ。通常であればレンダリングを行うマシン構成は別のセグメントとしてレンダリング専用のマシン構成を行いネットワークレンダリングを行うことが多い。

「雑誌表紙の仕事をこなしていた頃などはレンダリングサーバー専用機をぶんぶん回して、同時にいくつもの仕上がりを作り出し、最終的に気に入ったものを納品物にしていました。私の場合、基本的に作風が偏っていると言うこともあって、アートディレクターやクライアントの意見を反映した作品を作ると言うことはあまりないんですが、それでも稀に納得出来る意見を頂戴した際には、素直にそのアイデアを作品に反映させる事なども過去には行ってきました。その時には勿論、再度、モデリング並びにレンダリングのやり直しという行程を踏むことになるんですが、作品によってはそれが一大事になる事などもありました」



これは、たとえば作品の中に透明な質感を持ったオブジェクトが複雑に入り組んでいる場合や富田氏独特の超絶的に複雑怪奇なフォルムを持った作品のレンダリングなどが挙げられるという。それをクライアントは、どうにかこうにか変えてくれと言うわけである。もし、まかり間違ってそうなってしまったとすると、もはや今まで使っていたPentium4の中堅マシンの2台や3台では到底追いつくこともなく、最終的にはレンダリングサーバー貸し出しサービスセンターにお願いする羽目に陥ってしまう。このレンダリングサーバー貸し出しサービスに一回お願いすると普通は15万円から、時には100万円程度の出費となってしまう。このようなパターンを繰り返してしまうと、当り前だがコスト的には完全に赤字になってしまう。ただでさえ高価なマシンや1本数十万もする3Dソフトを必要とするようなCGアーティストが本当にこだわりを持って作品作りが出来る環境は、高速型低予算制作スタイルの中では極めて実現しがたいと言うことが出来るだろう。

「Xeonにギガビットイーサネットとくれば、今まで高価な対価を支払って利用していた貸し出しレンダリングサーバーのシステムと同じ。それが本当に“なんちゃってギガビットイーサ”ではなく、本物の「使える現場環境」として個人レベルで構築出来るのか。当初今の環境を構築しながらセッティングを行う間も、正直な意見としては半信半疑でした」と富田氏は話す。

今までの制作環境はかなりの投資額を費やしてきたベスト環境であるといった自負が、その気持ちを生み出していたというが、過去のシステム構築の経験に鑑みて、本物のギガビット性能を持った環境が簡単に構築できるはずはないと、これまでは考えていたという。



カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

ASCII.jpメール アキバマガジン

クルマ情報byASCII

ピックアップ