キヤノン(株)とキヤノン販売(株)は20日、港区品川の“CANON S TOWER”で記者会見を開催し、一眼レフデジタルカメラ入門者向けの新製品として『EOS Kiss Digital』を9月20日に発売すると発表した。価格はオープンプライスで、編集部による予想実売価格は、本体と電源キットを組み合わせた『EOS Kiss Digital ボディ』が12万円程度、さらにEOS Kiss Digital専用の新設計レンズをセットにした『EOS Kiss Digital レンズキット』が14万円前後。
キヤノンの代表取締役社長の御手洗 富士夫氏(右)とキヤノン販売の代表取締役社長の村瀬 治男氏。両氏が手に持っているのが『EOS Kiss Digital』 |
会見場には、キヤノン(株)の代表取締役社長の御手洗 富士夫氏、取締役 イメージコミュニケーション事業本部 副事業本部長の岩下 知徳氏、キヤノン販売(株)の代表取締役社長の村瀬 治男氏が出席し、開発の経緯や販売戦略について説明した。
最初に壇上に立った御手洗氏は、「EOS Kiss Digitalは、EOSシリーズで従来から継承している“高画質”“小型軽量で簡単操作”“基本機能の充実”をコンセプトに開発した、初心者とハイアマチュアの間の層を狙った製品。手ごろなデジタル一眼レフで撮影した高画質画像を家庭で手早く印刷する、というダイレクトプリント市場のさらなる拡大を目指す」と同社の戦略を説明した。
『EOS Kiss Digital』 | 『EOS 10D』では5枚構成だった基板を、EOS Kiss Digitalでは1枚に集約したという |
岩下氏は「チップサイズの縮小や機能の統合による部品点数の削減、高密度実装などの改良を加えることで、『EOS 10D』では5枚構成だったメイン基板を1枚に集約し、“EOS DIGITALシリーズ”で最小/最軽量(本体サイズは幅142×奥行き72.4×高さ99mm、重量560g)を実現した」と、EOS Kiss Digitalの小型軽量化の要因を紹介した。
50種類以上のEFレンズを利用可能
EOS Kiss Digitalの上面 | EOS Kiss Digitalの背面 |
EOS Kiss Digitalは、今年2月に発表した『EOS 10D キット』をベースにした、本格撮影入門者向けのレンズ交換式一眼レフカメラ。撮像素子はAPS-Cサイズ(22.7×15.1mm、約1インチサイズ)の総650万(有効630万)画素CMOSセンサー(単板)を採用。記録解像度は最大3072×2048ドット(アスペクト比3:2)で、記録フォーマットはRAW/JPEGをサポート。ノイズ除去と色合いの調整を行なう、キヤノン独自の画像処理プロセッサー“DIGIC”を搭載する。
EOS Kiss DigitalのCMOSセンサーと、『PowerShot G3』のCCDセンサーのサイズ比較 | デモ会場に展示された、CMOSセンサーの製造工程を示すパネル |
レンズマウントはEOS DIGITALシリーズ同様“キヤノンEFマウント”を採用し、50種類を超える既存の“EFレンズシリーズ”を利用可能(焦点距離は35mmフィルムカメラと比べて約1.6倍望遠寄りとなる)。レンズキットには広角寄りでの撮影を求めるユーザー向けに光学3倍ズームレンズ『EF-S18-55mm F3.5-5.6 USM』(35mmフィルムカメラ換算時:29~89mm相当)が同梱される。これはイメージサークル(結像する範囲)をEOS Kiss Digitalの撮像素子に合わせて小径化したEF-Sマウント用レンズで、従来のEFマウントレンズよりもバックフォーカス(レンズ最後部と撮像素子の距離)を短いため、EOS Kiss Digital以外のEOS/EOS Digitalシリーズには装着できないほか、単体では販売されない。
オートフォーカスは中央上下左右の5点と左右端の7点測距で、被写体の動きを予測してピントを合わせ続けるという“動体予測AIサーボAF”モードも搭載する。測光は35分割TTL方式で、ISO感度は100~1600相当、シャッター速度は1/4000~30秒。連写機能は毎秒2.5枚で連続4枚まで。
EOS Kiss Digitalを構成する各パーツ | EOS Kiss Digitalに各種オプションを組み合わせた“マクロ撮影キット”。これはキヤノンの社員が私物を持ち込んで展示したものだという。既存のEOSシリーズ用オプションが流用可能 |
撮影機能は、フルオート/プログラムAE(ポートレート、風景、スポーツなど7種類のプリセットを用意)/シャッター優先AE/絞り優先AE/マニュアル露出優先AE/自動深度優先AE/ストロボAEで、上部のダイヤルで切り替える。背面には1.8インチ(約11.8万画素)のカラーTFT液晶ディスプレーを装備、撮影結果をヒストグラム表示付きで確認できるほか、各種設定メニューの表示にも利用する。メニュー操作は液晶ディスプレー脇の十字ボタンで行なう。
インターフェースはUSB、ビデオ出力、リモコン端子を側面に搭載。対応プリンターとUSBケーブルで直接接続することで、パソコンなしに印刷できる統一規格“PictBridge(ピクトブリッジ)”をサポートする。本体上部にはGN13のストロボを内蔵し、外部ストロボを接続するためのホットシューを搭載する。
10Dとの比較(正面) | 10Dとの比較(背面) | |
10Dとの比較(側面) | 10Dとの比較(上面) |
両キットには、RAWデータの表示やファイル形式の変換を行なう画像ユーティリティーソフト『File Viewer Utility』、画像管理/検索ソフト『Zoom Browser EX』(Windows用)/『Image Browser』(Mac OS用)、画像印刷ソフト『PhotoRecord』(Windows用)、4枚までの画像を合成して1枚の大きな画像を生成するパノラマ写真作成ソフト『PhotoStitch』、USBケーブルで接続したパソコンから撮影/設定変更などの操作を行なうリモートコントロールソフト『RemoteCapture』が付属する。動作環境は、Windows 98 SE/Me/2000/XP、Mac OS 9.0~9.2、Mac OS X。
レンズキットに同梱される『EF-S18-55mm F3.5-5.6 USM』。これは単体では購入できない | 同時発売のオプションレンズ、『EF55-200mm F4.5-5.6 II USM』 |
なお、同時にデジタルカメラ向けにゴーストやフレアの発生を抑制する望遠ズームレンズ『EF55-200mm F4.5-5.6 II USM』も9月20日に発売すると発表した。価格は4万円。