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【絵でわかるキーワード】3次元高密度実装技術(さんじげんこうみつどじっそうぎじゅつ)

【絵でわかるキーワード】3次元高密度実装技術(さんじげんこうみつどじっそうぎじゅつ)

2003年08月16日 10時12分更新

文● 浅野 純也

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さまざまに進化する基板技術

松下電器の「SIMPACT」 シャープのCSP技術の例
松下電器の「SIMPACT」。ICやLSIが基板に埋め込まれている。基板と基板で部品を挟み込む際、柔らかい樹脂で包み込むようにしてあとで焼き固める。シャープのCSP(Chip Scale Package)技術の例。3次元方向に積層する実装は親ガメ子ガメのようなイメージだ。

 チップを実装するプリント基板の進化も重要だ。PCのマザーボードでは4層基板がポピュラーだが、これはサイズに余裕があるためだ。ケータイやモバイル機器などではサイズ優先のため、より層数が多い基板が使われている。現在主流なのはビルドアップ基板といって基板内の層と層の間でも配線を行うものに、表面実装によって部品を実装している。ビルドアップ基板は1つの層を作ったら2層目を盛り上げ、必要な部分だけをエッチングで残してさらに層を積み重ねていく方法で作られている。上下の層と層をつなぐ穴をビアと呼ぶが、現在このサイズが150μmほど、配線と配線の間隔は50μm前後まで微少化されている。それでも高機能化と小型化に追いつけないということで、この層の中にコンデンサや抵抗などの受動部品を入れ込む技術を村田製作所などがすでに製品化している。1mm以下のこれらの部品を基板層を積層する段階で入れ込むことで、実装面積を稼ぎ、よりたくさんの部品を載せられるようにするわけだ。

 受動部品を基板に入れ込むためにインクジェットプリンタの技術を応用するアイデアもある。ピコリットルサイズのインク滴を射出できる性能を利用して、抵抗やコンデンサを実現する材料を吹き付けて回路を形成しようというもので、エプソンなどが着手済み。まるで印刷するように回路が形成されるわけだ。受動部品だけでなくICやLSIなどの半導体部品も入れ込めるようにしたのが松下電器の「SIMPACT」だ。基板と基板で挟み込む際、柔らかい樹脂で包み込むようにしてあとで焼き固める方式を採用したことで実現している。同じ規模の回路なら従来基板の4分の1程度のサイズに小型化できるという。

基板レスの実装も

 従来の基板を使わず、新しい発想で高集積化を実現する技術もある。三洋電機のISB(Integrated System Board)は、コアとなる基板を使わないユニークな技術だ。基板上に部品を並べる従来の手法とは異なり、銅配線パターンの上に半導体や受動部品を載せて樹脂でパッケージするもの。フルーツ入りゼリーのイメージだ。基板がないため軽量化できる。配線間隔も狭くでき、発生する熱も基板がないため放熱しやすいなどのメリットがある。

 かつてモバイル用にTCP(Tape Carrier Package)版のMMX Pentiumがあった。フィルム状のフレキシブル基板上にプロセッサを実装したものだ。これと同様にフレキシブル基板上にチップだけでなく多くの部品を載せる技術をシャープ(SOF:System On Film)やエプソン(TCM:Tape Carrier Module)が開発、ケータイのすき間に回路を詰め込む役割を担っている。シャープといえば先日CGS(Continuous Grain Silicon)技術によって液晶用のガラス基板上にZ80プロセッサを形成したと発表したが(ニュース記事)、同社が提唱する「シートコンピュータ」は、究極の実装技術の1つだろう。液晶パネルの周辺のわずかなスペースに必要な半導体を作り込んでしまえるわけで、着々と実用化に近づきつつあるようだ。

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