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【SIGGRAPH 2003 Vol.6】最先端のグラフィックス技術を実用化した製品が披露された展示会場レポート

2003年08月09日 13時40分更新

文● (有)トライゼット 西川善司

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現実にあるオブジェクトをモデリングする際に利用されるデジタル3Dスキャナーは、今のところプロフェッショナル用途に限定されてはいるが、毎年確実な技術進歩を見せている。このページでは、展示会場で見かけた最先端のデジタル3Dスキャナー関連製品を紹介していこう。

犯罪シーンの保存にも活躍!?
3rdTech『DeltaSphere3000』

米サードテック(3rdTech)社ブースで展示され、注目を集めていたのが360度のフルシーンレーザースキャナー『DeltaSphere3000』だ。人体や特定の模型をレーザースキャンするものはこれまでにも存在したが、部屋丸ごと360度のデジタルスキャンが可能なシステムは珍しい。スペックは、スキャン範囲が上下-60度~+90度、左右は360度、距離は30cm~12mまで。精度はスキャン距離12m時で最小0.7cm。つまり、平均的な部屋であればほぼ丸ごとがスキャンができるわけだ。

3rdTechブース。実際にフルシーン3Dスキャナーを稼働し、ブースを3Dデータ化するデモを行なっていた

スキャンに使用するレーザーはレーザーポインタと同等のクラスIIIAで波長670nm、最大5mW。レーザースキャンでは取得できるイメージは白黒になってしまうが、『DeltaSphere3000』にはCCDカメラも併設されており、レーザースキャン後にCCDスキャンを実行することで完全カラーの環境を3Dデータとして取得できることになる。スキャン時間はシーンに依存するが大体20~40分。その間、ユーザーへのインタラクションは一切求めず、スキャン動作は全自動で行なわれる。

これが『DeltaSphere3000』

できあがったデータは完全な3Dジオメトリー構造を持ち、しかも対応するカラーのテクスチャーまでが付属する。このデータはVRML等にエクスポートが可能で別の3D-DCC(Digital Content Creation)ツールなどでエディットが可能。

一見すると、ただの写真のようだが……
実は完全な3Dデータ。DeltaSphere3000によってスキャンされたデータだ

様々な映像制作現場での使用はもちろん、現在、犯罪や事故現場の保存手段として注目されているのだそうだ。犯罪や事故現場では現場検証の際に写真を撮るわけだが、1枚1枚の写真ではその現場における空間的な相対位置関係が不明瞭となる。これに対し、フルシーン3Dデジタルスキャンならば、現場内の全ての物が三次元で記録されるため、物そのの形状情報はもちろん、現場における物ひとつひとつの所在までが一目瞭然となる。また、専用ビューアー上では、できあがった3Dシーン内の任意の2点間の距離を求めることもできるので、現場にいなくても基本的な現場検証ならばできてしまうのだ。

システムは顧客の用途に合わせたカスタムメイドとなるそうで、標準価格は定めていないとのこと。日本の顧客への導入実績もあり、これまでにNHK放送技術研究所、大阪大学などが導入しているという。

3rdTech社提供の映像より。こんな殺人現場があったとして。現場にDeltaSphere3000を設置してスキャンすれば……
このように殺人現場をあらゆる角度から見ることができる。もちろんズームインも可能。画面中の黒い部分(ノイズ)は、遮蔽と、上下-60度~+90度のレーザー照射制限によって生じたもの。このあたりの改善はまだ必要なのかもしれない

1秒以下で3Dスキャン、髪の毛も考慮
inSpeck『3D CapturorII』

レーザースキャンは精度が高いが、文字通り“走査”を行なうため時間がかかる。また、人体を取り込みたい場合、目にレーザーが照射されるのは望ましいことではない。そこで、人体に無害なハロゲンランプを光源に使い、投射レンズでメッシュ映像を瞬間的に対象物に投影し、この映像をCCDカメラで捉えて3Dモデル化する方法が開発された。

この方式では走査が不要なので取り込み時間は1秒未満が、走査がないかわりに取り込み範囲はその光学系の性能によって制限されてしまう。つまり、取り込み範囲がそれほど広くない場合には、取り込み時間が短いこの方式の方にアドバンテージがあるわけだ。

柱に取り付けられたスピーカーのようなものが『3D CaptureII』。片方が投射レンズ、そしてもう一方がイメージスキャナーレンズだ。簡単に言えばプロジェクタとデジカメを一体型にしたようなものだと言える

カナダのインスペック(inSpeck)社ブースではこの方式の最新3Dスキャナー『3D CapturorII』シリーズを展示、実際に来場者からボランティアを募り、取り込みの実演を行なっていた。

同社のシステムの採用先の筆頭は映画制作会社だそうで、このシステムが制作に用いられた最近の劇場映画作品としては『X-MEN』『EXIT WOUNDS/電撃』『スパイキッズ3』『Pirates of the Caribbean』などがある。他の同種システムに対し、『3D CapturorII』シリーズが優れている点として挙げられるのは髪の毛のキャプチャーに対応している点だという。

実際にボランティアを使って実演。ブルーバックの背景の前の椅子に座ってスキャン。スキャンは1秒で完了する。この1秒間の間にジオメトリースキャン、テクスチャーの撮影が行なわれてしまう取り込まれた映像からジオメトリー生成領域を指定。この輪郭取りは自動的に行なえるが、細部は手動で訂正可能
生成されたハイトマップ。地図でいうところの等高線的な凹凸情報。これを元にジオメトリーデータを作成する取得された頂点情報。これでもう3D化されたことになる

また、最近ではちょっと変わった応用例も出てきたそうで、米Crystal Capture社では、このシステムで取り込んだ3Dデータを元に、水晶へその形状をレーザー彫刻するサービスを開始したようだ。

製品は、取り込み解像度が640×480ドットの『3D CapturorII』、1280×1024ドットの『3D Mega CapturorII』があり、価格は6万~9万ドルとなっている。なお、このスキャナーを2機積み上げ設置し、一度のスキャンで上半身、下半身を同時キャプチャーするシステムも用意されているとのこと。

取得された3Dモデルデータに撮影されたテクスチャーを貼り付ければ、ご覧の通り。視点を変えることもできる。完全な人体モデルを作るには後面のスキャンも必要。また、一方向から撮影されたテクスチャーなので耳のあたりは伸びてしまっている。このあたりはアーティストによる修正が必要
『3D Capture II』を使って被写体の3Dデータを取得、これを元にレーザー彫刻を行なって被写体のリアルな彫像を作るサービスが開始された

その場で3Dスキャン可能な携帯型3Dスキャナー
EYETRONICS『ShapeWare』

米アイトロニクス(EYETRONICS)社の『ShapeWare』システムもinSpeckのシステム同様のメッシュスキャンタイプの3Dスキャニングシステムだ。原理的にはinSpeckのものと同様だが、こちらのシステムは3Dスキャナーを人間が両手で持って、あたかもカメラで被写体を撮影するかのようにスキャンできる。スキャン時の傾きや角度を考慮、複数回の取り込み結果をソフトウェア処理することによって人体の全身モデルを作成することも可能だという。据え置きではなく、モバイルなのがこのシステムの特徴。EYETRONICS担当者は「特別なスキャン用スタジオが不要なのが最大の特徴。最悪、映像制作現場に持ち込んでの取り込みも可能だ」は述べている。

『ShapeWare』システムのスキャナー装置。左がデジカメ部、右がメッシュ・プロジェクター部になる。よくみるとデジカメ部はキヤノンのEOS D60だったりする

このシステムは映画制作現場への導入が勢いづいているそうで、最近のタイトルでは『007 ダイ・アナザー・デイ』『スタートレック ネメシス』『TOMBRAIDER2 -THE CRADLE OF LIFE』『XXX』などで使用されたとのことだ。

実際の使用イメージはこんな感じ。残念ながら取材時のタイミングが悪く、実演を見せて頂くことはできなかった

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