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【SIGGRAPH 2003 Vol.5】Pixar Animation Studios、3DCGアニメ映画 『Finding Nemo』の制作特別講演を開催

2003年08月04日 07時26分更新

文● (有)トライゼット 西川善司

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北米では5月末に公開され、日本では2003年末に公開予定となっている3DCGアニメーション映画『Finding Nemo』を制作した米Pixar Animation Studios社は現地時間31日、“SIGGRAPH 2003”においてスペシャルセッション“Finding Nemo:Story,Art,Technology,and Triage”を開催した。ここでは、制作チームの面々が壇上に立ち、制作時の苦労話や、グラフィックス関連のテクニック解説などを講演した。

講演会場となる大ホールの周りには入場を待つ長蛇の列。開始20分前の時点で列の最後尾まで到達するのに徒歩で5分以上
2000席以上の大ホールに聴講者はぎっしり。さすがはPixar、集客能力が違う

Pixar初の水中を舞台とした3DCG映画となった『Finding Nemo』

『Finding Nemo』はクラウンフィッシュ(赤い魚)が、迷子となった自分の子供“ネモ(Nemo)”をブルータング(青い魚)とともに探しに出かけるCGアニメーション映画。『Finding Nemo』の制作にあたり、彼らが最初に直面したのは、『Finding Nemo』がPixarにとって初めての“水中を舞台とした”3DCG映画制作だという問題だったという。具体的な問題としては、

  • 水中は視界が限られているため、カメラワークの表現が難しい
  • 水中ならではのライティングが必要になるため、特別なシェーダーが必要
  • 水中ならではの物理法則が働いているため、特別な物理シミュレーションが必要

といったことなどを挙げており、これらはすべて、それまで彼らが手がけてきた『トイストーリー』や『モンスターズ・インク』にはない要素だったとのことだ。

そこでPixarは、実際に水槽を購入して実験をしたり、世界中のさまざまな“魚類学(Ichthyology)ビデオ”や“ネイチャー番組ビデオ”などを見てそうした要素を研究したのだという。Pixarが苦労のすえ完成させた“特性シェーダー”や“特性ライティングシステム”の効果はぜひ劇場で確認してほしい。なお、こうしたシェーダーは、Pixar自前のシェーダー言語システム“RenderMan”を用いて開発されている。

『Finding Nemo』はクラウンフィッシュ(赤い魚)が、迷子となった自分の子供“ネモ(Nemo)”をブルータング(青い魚)とともに探しに出かけるCGアニメーション映画。日本では年末公開予定

手足のない魚でボディーランゲージを表現する方法

『Finding Nemo』の制作の際に心がけたのは“魚としての動きのリアリティーは捨てない”ことだったという。よく子供向けアニメに見受けられるような、魚が立ち上がってダンスを踊るような、ああしたウソは作りたくなかったのだそうだ。しかし、本作ではそういったリアルさを追求しつつも、デフォルメとの絶妙なブレンディングを見せている。

彼らがとったのは、魚のヒレの動きや泳ぎ方は基本的に“本物の魚”をベースとし、表情の作り込みとボディー全体の動き方(泳ぎ方)の組み合わせで演技を仕込んでいくアプローチだった。表情自体はこれまでのPixarの3DCGアニメの手法と変わらず、擬人化された多彩な表情と目の動きにより、感情表現豊かな演技を実現させた。

魚は首がなく、手足もないため、単純には顔だけの演技になる。しかし表情の変化だけでは非常に平坦な動きのない演技の連続になってしまう。そこで、彼らは人間でいうところの手足の動きによるボディーランゲージを泳ぎによる動きで表現する手法を編み出した。

もちろん“動きは本物の動きをベースに”というコンセプトがあるので、その泳ぎ自体は現実の魚の動きに則っており、実物の魚とアニメーションの魚の動きを並べた比較映像を見ると実によく表現されている。つまり動き(泳ぎ)自体は“リアルな魚”そのものなのだが、ここに顔面の表情を乗せることで、無機質な魚類の泳ぎに感情表現的な演技を浮き出させているのだ。このような“表情とリアルな動き”の組み合わせというアプローチで制作されたアニメ映画は『Finding Nemo』が最初ではなく、ディズニーの『わんわん物語』も同様だろうとPixarは分析しているという。

ところで、魚の泳法にはその種類ごとに違いがあるそうで、この永法の違いもその魚キャラクターの個性表現に一役買っているそうだ。主人公のクラウンフィッシュはいつも神経質そうにおどおどした感じでヒレをふわふわと漕ぐ感じで泳ぐが、これが迷子の我が子を心配する父親の挙動にぴったりはまるのだという。これに対し、脇役のブルータングはヒレを鳥のようにせわしなく羽ばたかせて泳ぐのだが、これはこのキャラクターの“せっかちでおっちょこちょい”という役どころにぴったりなのだそうだ。

講演最後に、キャラクターアニメーションを担当したスタッフは「魚を見るとその魚の心理状態が分かるようになった。私は世界で最初の魚類心理学者だ」と冗談を飛ばしていた。

SIGGRAPH展示会場での一コマ。『Finding Nemo』に登場する長寿の亀キャラクターの巨大ぬいぐるみを会場に運搬するPixarスタッフ
入場時にセキュリティースタッフに呼び止められ亀ごと検査を受けるPixarスタッフ。なんだかちょっとばつが悪そう。周囲は笑いの渦

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