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アップル、アドビら4社が新世代DTPを推進する“TNG(The New Generation)プロジェクト”を発足

2003年05月21日 20時49分更新

文● 千葉英寿

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アップルコンピュータ(株)、アドビシステムズ(株)、大日本スクリーン製造(株)、(株)モリサワの4社は21日、共同でデザイン、広告、出版、印刷業界のユーザーに向け、Mac OS Xをベースとした新しい世代のデジタルパブリッシング・ワークフローの普及およびスムーズな移行を推進することを目的に“TNG(The New Generation)プロジェクト”を発足した。この発表にあたって、東京オペラシティ(東京・初台)において4社のプロジェクト責任者による共同記者会見が行なわれた。

プロジェクトロゴを掲げる各社の責任者4名
プロジェクトロゴを掲げる各社の責任者。左からアップルコンピュータ(株)マーケティング本部本部長の大宮哲夫氏、アドビシステムズ(株)マーケティング本部本部長の沢昭彦氏、大日本スクリーン製造(株)メディアテクノロジーカンパニー企画統轄部長の廣島望介氏、(株)モリサワ取締役営業本部本部長の森澤彰彦氏

●次世代ではなく、新世代として

TNGプロジェクトは、アップルの『Mac OS X』(OS)、アドビの『Adobe InDesign』(アプリケーション)、大日本スクリーンの『Trueflow』(※1)(ワークフロー)、モリサワの『モリサワOpenTypeフォント』(※2)(文字)を新世代のDTPプラットフォームと位置づけ、4社がTNGプロジェクト事務局を開設、運営する。プロジェクトでは、ウェブやセミナーを通じて、デジタルパブリッシングの技術情報や先進事例を積極的に公開するとともに、ユーザーが新しい制作環境を確認することができる場としてショールーム“TNG Square”を東京・九段と飯田橋に展開する。

※1 TrueFlow 大日本スクリーン製造が長年のノウハウを投入して開発したネットワーク型のインテリジェントRIPシステム。PDFワークフローやCTPワークフローを提供し、高効率な出力環境を実現する。Windows 2000 Serverで動作する。また、大日本スクリーン製造では、Mac OS Xに標準搭載しているヒラギノ書体を提供している。

※2 モリサワOpenTypeフォント DTPにおけるスタンダードなフォントである、モリサワ書体をOpenTypeとしたもの。OpenTypeは、スクリーンフォントと出力用のプリンターフォントの2つのフォントを必 要としたこれまでのDTP環境を一変させるフォントフォーマット。モリサワでは、2003年末までにすべてのNew CIDフォントをOpenTypeに移行する予定。

デザイン、出版、印刷の、いわゆるデジタル・パブリッシングの分野において、以前からMac OSは高いアドバンテージを保ち続けているが、Mac OS Xへの移行が始まって2年余り、この分野においては特に移行が進んでいない。また、Mac OS Xの登場にあわせて市場に投入されたアドビシステムズのデザインソフトであるAdobe InDesginの業界へのさらなる浸透を進めることも背景にあるものと見て取れる。プロジェクト内容の説明を行なったアップルのプロダクトマーケティング櫻場浩氏によれば、「TNGのNをNextとせずにNewとし、次世代と言わずに“新世代”としているのは、このMac OS Xをベースとするデジタル・パブリッシング環境がすでに未来のものではなく現実のものだからだ」と説明しており、スタンダードであることを強調している。

●ウェブ、ショールーム、セミナーと、多面展開でプロジェクトを運営

TNGプロジェクトのその中身だが、まず、TNGプロジェクト事務局のウェブサイトが同日付けで開設される。ここでは、TNGプロジェクトの紹介をはじめ、製品情報や技術情報、新世代ワークフローの検証結果の公開、ユーザー事
例の紹介、さらにセミナーの開催情報の提供やショールームの申し込み受付などを行なう。

ショールームのイメージ
ショールーム“TNG Square飯田橋”の設置想定図。TNG Squareはこの他に九段にも開設される

ショールーム“TNG Square”は、26日に大日本スクリーン製造の関連会社で同社のグラフィック部門を担っている(株)メディアテクノロジージャパン(東京・九段)に“TNG Square九段”として、モリサワ(東京・飯田橋)の“TNG Square飯田橋”として、それぞれの社内に開設され、9月30日にクローズするまで同プロジェクトの活動拠点として展開する。ショールームTNG Squareについては、この2ヵ所2社のみで展開し、他のプロジェクト参加企業であるアップル(初台)とアドビ(大崎)については、「スペースに余裕がない」(櫻場氏)ことを理由に開設を予定していない。また、この2ヵ所以外の地方での展開もいまのところ予定されていない。ショールームの利用に際しては、前述のとおりTNGプロジェクトのウェブサイトより予約できる。各ショールームで1日あたり36名まで受講可能で、9月30日までの期間におよそ3000名強の受講者を受け入れる。期間中は土・日・祝祭日をのぞく毎日、10時から17時にオープンする。

セミナーは27日/28日にメディアテクノロジージャパンにおいてキックオフセミナーを、6月19日/20日にモリサワにおいてセカンドセミナーが開催され、その後、数回のセミナーを予定している。こちらについてもTNGプロジェクトのウェブサイトより申し込みが行なえる。

●TNGプロジェクトが旧Mac OSからの移行のキーとなるか?

TNGプロジェクトの参加企業については、当面はこの4社で運営するが、4社以外の企業の参加の可能性もある。本プロジェクトを通じて、導入を支援し、事例構築を進めることで、Mac OS Xベースのデジタル・パブリッシング環境を業界内のスタンダードとするのが4社の狙いと言える。

これまでこの4社はMac OS Xベースのデジタル・パブリッシング環境の普及に努めてきているが、根強い旧Mac OS+QuarkXPressという事実上のスタンダードとなっているDTP環境からの移行が思いの外、進んでいない。その影響のひとつとして、アップルが旧Mac OS搭載機の販売を打ち切ると発表したところ、ユーザーからの反発を買い、結局、旧Mac OS搭載マシンを改めて用意することになったこともあったほどだ。そして、アドビとしては、最後の大物ソフトとして、Mac OS X版が待たれるQuarkXPressが登場する前にAdobe InDesignをここでもうワンプッシュしておきたい、ということもあるだろう。

業界を代表する4社が肝いりで進めるTNGプロジェクトが、現状打破にどれほどの効果を示すことができるか、興味深いところと言える。

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