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「やっぱり、自分の会社は自分の子供みたいなものなんです」─米Mountain View Data Cliff Miller氏

2003年03月14日 07時14分更新

文● 編集部 阿蘇直樹

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2月26日、米Turbolinuxが保有していたサーバ管理ソフト『PowerCockpit』関連の資産を買収し、新たに『PowerCockpit 2.0』として発売した米Mountain View Data。同社CEOであり、米Turbolinuxの前身となるパシフィック・ハイテックの創業者でもあるCliff Miller氏に、Mountain View Data設立の経緯や、『PowerCockpit』資産買収までのいきさつ、今後の事業などについてインタビューした。

米Mountain View Data CEOのCliff Miller氏
米Mountain View Data CEOのCliff Miller氏。

ユーザーのニーズを考えて製品を作るというのは変わっていない

[編集部] まず、Millerさんは以前パシフィック・ハイテックを創業されて、ディストリビューション事業を行なわれていたわけですが、2000年7月にMountain View Dataを創業され、ディストリビューション事業からミドルウェア事業にシフトされたといえるかと思います。パシフィック・ハイテック/旧Turbolinux時代と、今のビジネスの違いはありますでしょうか。
[Miller氏] Turbolinuxの時は、ディストリビューションもやっていまして、OSなどを幅広くパッケージ化して製品を作っていましたけれども、当時からクラスタリングの製品も作っていました。この『PowerCockpit』も、実は私がいたときに“Turbolabs”を、クラスタリングの研究および開発、R&D(Research & Development)のセンターとして作りまして、そこで開発していたものです。ですから、そのときからアプリケーションですとか、割とハイレベルなソフトウェアにシフトしつつありました。、『PowerCockpit』や『TurboCluster』といったソフトウェアは、フリーな部分もありましたけれども、クローズドな部分もあって、ソフトウェアのIPとしての価値が十分ありました。
ちょっとTurbolinuxの話になってしまうのですが、1997年に最初に製品を出したときから一緒にバンドルしていたソフトウェアもありました。当時Applixが作っていたワープロとか、Officeソフトウェアですね、それから、リョービの商用フォントとか、いくつかの商用プログラムをバンドルして製品を出していたので、フリーな部分とそれからプロプライエタリな部分が両方ありました。
Mountain View Dataでも、フリーな部分だけでなく、クローズドな部分もあります。『PowerCockpit』は、開発環境とコンソール部分のサーバはLinuxで動いていますけれども、管理ターゲットのサーバはWindowsでもLinuxでも対応しています。いずれにせよ、ユーザーのニーズを考えて製品を作っていかないといけないと思うんです。もちろん、Mountain View Dataの『MVD Powered NAS』も、Macユーザー、Windowsユーザー、Linux/UNIXユーザーが使える製品です。

アイディアはいくらでも出てくる

[編集部] ユーザーのニーズを考えて製品を作る、というお話がありましたが、『PowerCockpit』のターゲットとなるユーザー層、市場はどういったあたりになるのでしょうか。
[Miller氏] 今の『PowerCockpit』製品では、サーバー市場がメインになります。サーバの管理、大きく見て管理ですね。Deployment(配布)、つまり複数のコンピュータのインストールや管理がメインになりますので、個人ユーザーではなく、やはり法人向けのビジネスになります。Linuxのパッケージを店頭で買っている方はたいてい個人ユーザーで、コンピュータが好き、趣味でやっているとか、確かに仕事でプログラミングをやっている人もいるかも知れませんが、基本的には自宅で使うために買っていくわけです。しかし『PowerCockpit』は、多少そういう人もいるかも知れないですけど、メインはやはり法人向けのビジネスですね。
もう1つ、『PowerCockpit』の特徴としては、かなりレベルの高いソフトウェアといいますか、クラスタリング自体は、かなり技術の高い分野ですので、たとえばグラフィックレンダリングや医療関係など、ターゲットが割と上の方になります。中小企業というよりは、巨大なエンタープライズシステムや、技術的に優れているところ、たとえばCADやCAMをやっている会社のように、エンジニアがたくさんいるところ、あるいは特殊な業界、医療関係の製品を作っているところとかですね。ただ、こういう分野はですね、“Early Adopters”(初期の採用者)になります。クラスタリングはこれから広がっていくと思いますが、そのためにはやはり、ソフトウェアが使いやすくならないといけません。『PowerCockpit』は、そこの部分をかなりうまくやっていると思うんです。管理ソフトウェアがないと、クラスタの構築や管理がものすごく厄介なんですね。
[編集部] そうしますと、今のところターゲットとしていらっしゃるのはEarly Adopterの方々が多いわけですね。おっしゃるとおり、中小の事業者にはクラスタシステム自体が浸透していないでしょうし。
[Miller氏] そうですね。ただし、もう1つのマーケットがあるんですよ。この『PowerCockpit』をフレームワークに、企業システムで使われているインターネットアプライアンスを管理するということを考えているんです。
例を申しあげますと、ビデオ・オン・デマンドのシステムがありますね。たとえば、全国50個所にホテルがあるとして、東京に配信するビデオのライブラリを置いて、それぞれのホテルにキャッシュサーバをおきます。ビデオは必要に応じて、キャッシュサーバを通じて配信されますが、これもやはり、インターネットを通じた大きなクラスタシステムだという風に考えられます。こういったシステムの管理には『PowerCockpit』が向いているんですね。インストールの時やアップデート、それから管理自体にも使えるわけです。さらに、我々の『MVD Sync』を利用してデータの配信も可能です。また、バックエンドにはストレージが必要ですね。ビデオのライブラリには『MVD Powered NAS』を使えるわけです。ですから、『MVD Sync』と『MVD Powered NAS』を『PowerCockpit』のプラグインモジュールにすることによって、より充実したシステム構築が可能になるわけです。
もう1つの例は、全国にたくさんあるコンビニの店舗で、各店舗にアプライアンス+カメラがあって、インターネットを通じてそのデータを中央に集めるというようなシステムも考えられます。アプライアンスの管理は『PowerCockpit』で、それからデータのやりとりに『MVD Sync』を使って、バックエンドに集まってくるところに『MVD Powered NAS』を入れることが考えられます。こういうシステムは、アイディアを考えれば考えるほど、いっぱい出てくると思うんです。

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