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「極限までCPUを使い回せる機械です」─CTCが販売する『BladeFrame』の実力はいかに?

2003年03月14日 22時33分更新

文● 編集部 阿蘇直樹

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『BladeFrame』
デモに使用した『BradeFrame』。稼働中のブレードは右側のライトが青く、待機中のブレードは赤く光る。

2月25日、伊藤忠テクノサイエンス(株)(以下、CTC)は米EgeneraのLinuxサーバ『BladeFrame』の国内代理店契約を締結し発売した。記者発表会では「他社より2年進んだ技術を提供する」製品で、「エンタープライズ向けのシステムとして顧客に勧められる製品」だと説明された。『BladeFrame』はこれまでのマシンとはどう違うのか、CTCの営業部門Linuxセールスチーム長である浦川隆氏と、同社営業部門Linuxセールスチームシステムエンジニアの西崎貴之氏にご協力頂き、実機デモを見ることができたのでご紹介しよう。



「システムの切り替えは5分で可能」

『BladeFrame』は、システム管理用ブレード“cBlade”と、スイッチブレード“sBlade”、およびサーバ機能を割り当てるための“pBlade”によって構成される。内蔵ハードディスクを持つのは“cBlade”のみで、“pBlade”は外部のストレージにシステムを用意して動作する形になる。ストレージをネットワーク上に設置する“SAN(Storage Area Network)”と同じように、計算資源をネットワークで利用するという“PAN(Processing Area Network)”という概念に基づき、管理ソフト“PAN Manager”を利用して必要なシステムに必要なリソースを割り当てられるマシンだ。

今回見せて頂いたデモでは、12台の“pBlade”を使用した。“pBlade”のうち3台はデータベース、7台はWebサーバ、2台は待機系という設定だ。

まず、稼働中の“pBlade”のうち1台に問題が発生したと想定し、待機系のブレードにフェイルオーバーするというデモが行なわれた。西崎氏は「たとえばひとつのブレードに問題があったとします。そうするとだいたい5分強くらいで待機系のシステムが起動して、同じシステムとして機能するようになります」と説明すると、「あまり好ましい方法ではありませんが……」と言いながら、動作中のブレードに手をかけ、引き抜いてしまった。

ログイン画面 ステータス画面
“PAN Manager”のログイン画面。ログインすると、最初に表示される画面。各ブレードの稼働状況が分かる。図中の『BladeFrame』にマウスカーソルを合わせると、そのブレードのシステム構成が表示される。
ガシャン! ブレードを抜いた直後のステータス画面
稼働中のブレードを引き抜いたところ。「問題がない場合にやるのはあまり好ましくありませんが、面倒ならこれでシステムを切り替えることも不可能ではありません」(西崎氏)という。ブレードを引き抜くと、“PAN Manager”にも状態が反映され、引き抜いたブレードの部分はステータスが表示されなくなる。

西崎氏によれば、「通常のブレードサーバの場合、システムディスクをブレード上に持っているので、稼働中のブレードをそのまま引き抜くと、ディスクが物理的に故障する可能性があります。『BladeFrame』の場合、システムも含めて外部のディスクアレイを使用するので、ディスクを止めるといった作業なしでブレードを交換してしまうことも可能です」とのこと。システムの切り替え完了を“PAN Manager”で確認するまでに、手元の時計でおよそ5分30秒程度の時間を要した。

pBlade本体 待機系に切り替わったようす
引き抜いた“pBlade”本体。引き抜かれたブレードで稼働していたシステムが待機系に切り替わったところ。“PAN Manager”の表示に反映されるのは、Webブラウザの画面更新にかかる時間だけ遅れる。

管理ソフト“PAN Manager”とは?

“PAN Manager”は、『BladeFrame』システム全体の設定や管理を行なうソフト。Java対応のWebブラウザからだけでなく、ターミナルからも利用できる。ここではおもな設定、管理項目をご紹介する。

ターミナル画面 仮想スイッチ設定画面
“PAN Manager”にターミナルから接続したところ。Webブラウザからアクセスしたのと同じ情報を得られる。仮想スイッチの設定。『BladeFrame』に2台搭載されるスイッチングブレード“sBlade”の設定を行なう。
ディスク割り当て画面 PAN設定画面
ディスクの割り当てを表示する画面。どのシステムで使用するかとどのブレードにマウントするかを指定できる。『Oracle9i RAC』などを使用する場合、単一のパーテーションを複数のブレードにマウントすることも可能。“PAN Manager”の設定画面。管理コンソールのIPアドレスなどを設定する。
Javaコンソール イベントログ画面
“PAN Manager”から起動する、Javaで実装されたターミナル。各“pBlade”で稼働するシステムをここからでも直接操作できる。イベントログ画面。各“pBlade”ごとに発生したイベントを表示する。

システムをすべてディスクアレイ上に持っているので、複数のシステムイメージをディスクアレイ上に用意し、特定のブレードに割り当てておけば、“PAN Manager”からの指示で簡単に機能を切り替えることもできる。既存のブレードサーバの場合、システムイメージを書き換えるか、必要なシステム台数だけのブレードを最初から用意しておく必要がある。つまり、システムイメージを書き換えるための時間(インストール時間)だけシステムを止めるか、最初から余分に設備投資する必要があるわけだ。『BladeFrame』の場合、リブートに要する時間だけで、必要な時に必要なシステムを用意することが可能になる。

「コモディティのCPUではほかにないシステム」

『BladeFrame』は、米国では2001年10月に1号機を出荷後、金融関係や行政機関、通信事業者、運輸業者などで導入が進んでいる。国内での販売ターゲットや競合製品との差別化要因について、浦川氏に伺った。

[編集部] まず、2月25日に『BladeFrame』の発売を発表されましたが、その後お客様からの問い合わせや、実際に契約に結びついた案件などはありますか。
[浦川氏] いくつかお問い合わせは頂いています。また、国際的な証券会社などのお客様では、米国本社で導入したシステムと同じものをご用意されるところも多いので、実は国内でも以前から運用されているお客様もすでにいらっしゃいますし、アジアパシフィック全体を見ても、同じ理由でいくつかの導入事例があります。我々はストレージシステムも取り扱っておりますので、お客様に『BladeFrame』とストレージを組み合わせたシステムとしてご提供することが可能です。
[編集部] 国内ではどういった方をターゲットにされているのでしょうか。
[浦川氏] 海外で導入されているのと同様に、金融系のお客様ももちろんですし、ほかにも、ホスティング事業者様にもお使いいただけると考えています。『BladeFrame』では、たとえばお客様ごとにシステムを切り分けることができますし、必要な時に容易にシステムのスケールアップが可能です。同じように、大手の企業で部門サーバを統合するといった使い方も考えられます。
[編集部] リソースの動的な割り当て機能は、既存のメインフレームやUNIXサーバの一部でも実現されています。記者発表では「他社より2年先をいく」といった説明もありましたが、競合する製品というのはないのでしょうか。
[浦川氏] メインフレームやハイエンドのUNIXサーバとは異なり、『BladeFrame』はコモディティのハードウェアを使用しています。「他社より2年進んでいる」というのは、コモディティのハードウェアを利用しながらこういった仮想化技術を実現した製品がほかにないということです。メインフレームやRISCシステムと比べて、処理能力あたりの価格が低いだけでなく、格段に速いペースでCPUの処理能力が向上しているので、システムのアップグレードはブレードを交換するだけで可能になります。
また、IA系のブレードサーバ製品はほかにも多くありますが、ほかの製品ではピーク時の処理能力にあわせてシステムを導入しなければならないため、通常の使用ではほとんどのCPU使用率が非常に少ない状態になるわけです。それに比べると『BladeFrame』は柔軟にリソースを割り当てることで、極限までCPUを使い回すことが可能です。
[編集部] 本日はどうもありがとうございました。
CTCスタッフの方と『BladeFrame』『BladeFrame』のデモを行なって頂いた、伊藤忠テクノサイエンス(株)営業部門Linuxセールスチーム長の浦川隆氏(右側)と、同社営業部門Linuxセールスチームシステムエンジニアの西崎貴之氏。

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