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米Mountain View Data、旧Turbolinuxの『PowerCockpit』資産を買収

2003年02月26日 00時00分更新

文● 編集部

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『PowerCockpit 2.0』
『PowerCockpit 2.0』

米Mountain View Data(以下、MVD)は、2002年8月にLinux関連資産や知的財産権などを(株)SRAに売却した旧Turbolinuxより、サーバ管理ソフト『PowerCockpit』に関するソースコードや商標権などの知的財産およびマーケティング資料などすべての資産を買収、新たに『PowerCockpit 2.0』として発売すると発表した。買収金額については明らかにされていない。

米Mountain View Dataは、ミラーリングソフト『MVD Sync』やバックアップソフト『MVD Snap』、NASアプライアンス『MVD Powered NAS』といった製品を開発、販売している企業。創業者はパシフィック・ハイテック(株)(のちの米Turbolinux)の創業者でもあるCliff Miller氏。Miller氏は2000年7月に米Turbolinuxを退社してMVDを設立、現在は米国、日本、中国を中心に事業を行なっている。

『PowerCockpit』は、Miller氏が米Turbolinux CEOであった2000年4月に、米国に設立したクラスタリングなどを研究する“Turbolabs”で開発された製品。2001年10月末に、Linuxシステムのイメージを複数のサーバに配布、管理する『Turbolinux PowerCockpit 1.0』として発売、2002年3月には、対応ファイルシステムなどを追加した『Turbolinux PowerCockpit 1.1』が発売されている。2002年8月にSRA(株)が米TurbolinuxのLinux関連資産を買収した際、『PowerCockpit』関連の資産は新会社に引き継がれると発表されていた。



『PowerCockpit 2.0』の概要

『PowerCockpit 2.0』は、配布対象となるシステムのイメージ(OSやアプリケーションをtgzでまとめたものと、固有の環境情報をXMLで記述したデータで構成されるもの)を収集、配布する機能を中心に、クラスタのノードをラック単位や機能単位、システム単位でまとめて管理する機能などを利用し、複数台のサーバを管理するというソフトウェア。『Turbolinux PowerCockpit 1.1』と比べて、以下のような新機能が追加されている。

  • Windows 2000/XPのシステムイメージ配布に対応した
  • IA-64をサポートした
  • 収集したシステムイメージを元に、リストアCDを作成する機能を追加した
  • 必要な時に必要なシステムを配布、稼働させる“Dynamic Privisioning”機能を搭載、スケジューリングすることで自動的にサーバの目的を変更可能になった
ワークスペースウィンドウ ディスクレイアウト表示 グローバルコマンドウィンドウ
『PowerCockpit 2.0』起動後に表示されるワークスペースウィンドウ。メニューなどはすでに日本語化されている。ディスクレイアウトの設定画面。ディスク容量の異なるシステムにイメージを転送する際などに設定が可能だ。グローバルコマンドウィンドウ。複数ノードで同じコマンドを実行できる。

価格はオープンプライス。実売価格は1ノードあたりおよそ3万円程度になるようだ。販売はMVDのWebサイトを通じた直販や、SIパートナーによる販売、ハードウェアベンダーによるバンドル提供などになる。店頭販売については現在のところ未定。3月1日より受注を開始し、3月20日より出荷開始する予定。

「『PowerCockpit』をコアに、ストレージだけでないサーバ事業を展開する」──マウンテンビュー・データ(株)取締役 五十嵐教司氏

記者発表会では、『PowerCockpit 2.0』の紹介と事業戦略、開発版を使用したデモなどが行なわれた。

『PowerCockpit 2.0』の概要を紹介したMiller氏は、「PowerCockpit 2.0は、ローレベルな部分から、システム管理などハイレベルな部分までを含むフレームワーク。あとからモジュールを追加することでシステムの拡張にも対応できる」と説明した。

MVD CEO Cliff Miller氏米Moutnain View Data CEOのCliff Miller氏。日本法人の代表取締役社長でもある。

Miller氏は特に、新たに追加した“Dynamic Provisioning”機能について、「たとえば、データセンターにあるWebサーバとデータベースサーバは、昼と夜で負荷が異なる。“Dynamic Provisioning”機能を利用し、スケジューリングしておくことで、自動的にサーバの機能切り替えができるようになる」と例を挙げて紹介した。

Miller氏はまた、『PowerCockpit 2.0』に機能を追加するモジュールを開発するための『PowerCockpit SDK』をパートナー企業向けに無償で提供する予定であることを発表。「旧TurbolinuxはこのSDKを19万5000ドルで販売しようとして、結局1本も売れなかった。我々は0円で19万5000本提供したい。SDKを活用して、パートナー各社にPowerCockpitフレームワークを利用したソリューションをどんどん開発してほしい」と語った。

マウンテンビュー・データ(株)取締役の五十嵐教司氏は、『PowerCockpit 2.0』の販売戦略やパートナー戦略について説明した。

マウンテンビュー・データ(株)取締役 五十嵐教司氏マウンテンビュー・データ(株)取締役の五十嵐教司氏

五十嵐氏によると、おもな販売ターゲットは、データセンターやHPCなど、大規模なクラスタシステムを運用している企業や研究機関になるという。そのほか、インターネットアプライアンスシステムなどに同一のソフトウェアを導入するといった用途や、学校のPCを管理するといった用途にも利用できることを紹介した。

パートナー戦略については、「SDKの提供に加えて、トレーニングやセミナーなどを開催し、ISVによるソリューション開発を支援するなど、4月を目処にパートナープログラムを用意する」と説明した。

米MVDのCTOである吉井一友氏は、開発版『PowerCockpit 2.0』を利用し、実際に複数のサーバにシステムイメージを転送、起動させるというデモを行なった。

MVD CTO 吉井一友氏米MVDのCTOである吉井一友氏。以前は米Turbolinuxに在籍し、『PowerCockpit』の開発やインストーラの開発に携わっていたそうだ。デモで使用していたのも『Turbolinux』だ。

吉井氏は旧Turbolinux時代から『PowerCockpit』の開発に携わって来たといい、Miller氏の説明に加えて、「レポジトリに登録するイメージは単純に配布が楽になるだけではなく、システムの設定情報といった資産を管理するという側面もある」ことを紹介。デモでは、実際に3台のマシンにRed Hat Linuxのイメージを転送し起動する作業や、3台のマシンに同時にコマンドを実行する、『PowerCockpot』内部で稼働しているモジュールの紹介などが行なわれた。

『PowerCockpit 2.0』で動作しているモジュールの一覧 イメージ配布確認ウィンドウ バックエンドのPerlスクリプト
『PowerCockpit 2.0』はさまざまなモジュールを組み合わせて動作しており、このように一覧で表示することもできる。クラスタのノードごとにIPなどを設定、配布するイメージを選択し、最後に表示される確認画面。なお、IPアドレスなど各ノードによって異なる情報は、管理者が自由にルールを作成し、そのルールに基づいて決定できる。『PowerCockpit 2.0』のバックエンドではPerlのスクリプトが動作しているという。

五十嵐氏に、MVDはこれまでストレージ関連のソフトを中心とする企業であったが、『PowerCockpit』資産をストレージ事業にどのように反映させるかを伺ったところ、「PowerCockpitをコアに、NASやSyncといったストレージ関連のソフトをプラグインモジュールとして提供することで、ストレージだけでなくより広い意味でのサーバ関連事業にシフトするだろう」と、『PowerCockpit』資産買収により集中する分野をシフトさせる可能性があることを示唆した。

なお、記者発表会終了後、Miller氏にディストリビュータからミドルウェアベンダーに転身した理由や、『PowerCockpit』資産買収の経緯、今後の事業などについてインタビューする機会を得ることができた。インタビューのもようはページを改めてご紹介する。

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