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写真1 「NW-MS70D」。斜めにカットされた円筒状のクレードルは、USBでPC本体に接続。充電はバスパワーでPC本体から供給される。 |
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本製品はこちらから購入いただけます。画像をクリックすると“SONY Flash on ASCII”に移動します。 |
いかにも未来的な円筒形の操作部に「メモリースティック Duo」を収納する小さな箱状の本体がぶら下がっている。チタン外装を施されたその独創的なデザインが表現するのは都会的な軽やかさだが、操作部に張り巡らされた細い金属パイプや側面に細かく刻まれたスリットからは、もっと機械的な「装置」の重厚さも伝わってくる。こんな見ただけでクラクラしてしまいそうなシリコンオーディオがソニーから2月に発売される。
チタンで作られた2重の殻
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写真2 従来機のNW-MS9との比較。100円ライター程度の大きさだったMS9と比較してもさらに半分ほどのサイズだ。 |
約15カ月ぶりのリリースとなった新しいネットワークウォークマン「NW-MS70D」の魅力を知りたいのなら、何よりもまず店頭で実機に触れていただきたい。実機の圧倒的な存在感を前にしてはどんな言葉も無益だ。そんな気持ちにすらなってしまう。
実機を前にしてまず驚くのは、その小ささもさることながら、モノとしての質感が非常に高い点である。本機の外観上の特徴として金属ボディに付き物のネジ穴や継ぎ目がほとんど見当たらないことが挙げられるが、これは金属の展性を利用して、一枚の板を少しずつ立体に整形していく「深絞り」という技術が用いられているためだ。深絞り自体はアルミ缶やガム電池などでも用いられている一般的な工法だが、NW-MS70Dでは硬度が高く加工しにくいチタン素材で深絞り加工を実現している。携帯プレーヤのように小さく複雑な形をした製品でチタンの深絞りが用いられることはあまり例のないことだ。
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曲目選択時。 | グループ選択時。 | |
写真3、4 MDウォークマンでおなじみのシャトルリモコンのテイストを持った操作部。複数の曲をひとまとめで管理する機能を備えており、曲目単位での選択する際は青、グループ単位で選択する場合は緑色のバックライトが光る。 |
NW-MS70Dではこの深絞りの骨組みの上に「イオンプレーティング処理」と呼ばれる特殊な表面処理が行われている。これは、イオン化したチタンに真空中で10V程度の電圧を掛け本体に蒸着させる方法で、メッキや塗装よりも付着力が強く、緻密で平滑な成膜を実現できる。一般に金属外装は使用し続けるうちにすり傷などが目立つようになる。常に携帯する本機のような製品ではなおさらだ。NW-MS70Dの外装は「ポケットにカギと一緒に入れても傷つかない」ことを目標に、ダイヤモンドでなければ削れないほどの強度を実現したという。
手のひらに入るジュークボックス
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写真A アップルコンピュータ「iPod」レビュー。写真をクリックすると当該記事に移動します。 |
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写真B 東芝「GIGABEAT MEG50JS」レビュー。 |
一時は次世代の携帯音楽デバイスとしてもてはやされたシリコンオーディオプレーヤだが、このところ今ひとつ元気がなかった。
その理由のひとつには、Apple Computerの「iPod」や東芝の「GIGABEAT」に代表されるHDD内蔵型プレーヤの登場がある。5~20GBと高容量のストレージを内蔵したこれらのプレーヤを使えば、1台で1000~4000曲程度(128kbpsのMP3/1曲5分で計算)の音楽データを持ち運べる。一方のシリコンプレーヤでは、使用するメモリカードは多くて256MB程度。容量的には1/20程度でしかもメディアの単価も割高だ。
そんな現状に一石を投じる技術が本機には盛り込まれている。ビットレート48kbpsと一般的なMP3の1/3程度のファイルサイズでエンコードできる新開発のコーデックATRAC3 Plusである。48kbpsのビットレートでは本体内蔵の256MBに最大700分の音楽データを保存可能。さらに最大128MBのメモリースティック Duoを追加すると、最大で1050分(=約17時間30分、210曲程度)の録音が可能となる。これでもHDD内蔵プレーヤの1/5程度だが、容量面でのハンデを解消できれば、コンパクトで衝撃に強く、バッテリ駆動時間の長いシリコン系プレーヤに軍配があがるのではないか。
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写真5 従来のメモリースティック(左)とメモリースティック Duo(右)の大きさの比較。Duoは体積比で1/3程度小さい。価格的には64MBが7000円、128MBが1万1000円程度になる見込みだ。 | 写真6 メモリースティックは本体の底部から差し込む。側面のボタンを押してシャッタが開くギミックもなかなか心地よい。 |
ビットレートの少なさはそのまま単位時間当たりの音楽情報の少なさにつながるため低ビットレートでは音質の劣化が心配だが、視聴したサンプル(ポップス・ボーカル系)の範囲では低ビットレートのMP3ファイルなどで生じてしまう音の歪みなどは一切なかった。132kbpsでエンコードしたATRAC3のデータと比べると高音域の成分や空間の広がり感などが確かにカットされている印象はあったが、メインとなる声の部分がより際立って逆にクリアになった印象もあり外出先で聴くには十分だろう。ちなみに64kbpsのATRAC3と比較した場合の音質は48kbpsのほうが上回る。本機では従来のATRAC3とATRAC3 Plus両方のファイルの再生が可能だが、音質にこだわるならATRAC3の132kbps、持ち運ぶ量にこだわるならATRAC3 Plusの48kbpsを使い分けるといいだろう。
小さくてもスタミナ再生
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イヤホンジャックのプラグ形状。 | コードを利用した首掛けストラップ。 | |
写真7、8 NW-MS70Dは首からかけて携帯するが、一般的なネックストラップなどは使用せず、ヘッドホンコードを挟むように首掛け用のストラップを追加する面白い仕組みを採用している。また、強い力がかかってもイヤホンジャックが外れないようにプラグ部分が特殊な形状になっている。 |
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写真9 実際に首から掛けたところ。 |
収録できる音楽ファイルの数が多くても、電池が持たないのでは意味がない。特に本機のように、ATRAC3とATRAC3 Plusの2種類のコーデックに対応しないといけない場合は2重のDSPが必要で消費電力の点で不利になる。そこで採用されたのが“Virtual Mobile Engine”と呼ばれる新開発のLSIである。
これは機能ごとに専用回路を用意する一般的な方法ではなく、各機能を実現するのに必要な回路ユニットをバラバラに用意して、機能に合わせて利用する回路ユニットをソフトウェアで動的に選択していく手法を取り入れたLSIである。これにより汎用のDSPに比べ消費電力が1/4程度に抑えられた。内蔵するバッテリの容量自体は本体の小型化によりNW-MS9の40%程度だが、本機のバッテリ動作時間はメーカー公称値でATRAC3の場合33時間、ATRAC3 Plusの場合28時間と従来よりも長時間の音楽再生が可能となっている。ATRAC3 Plusの電池の持ちが悪いのは、まだデコーダ自体の消費電力が若干高いためだという。
NW-MS70Dの価格はオープンプライスで、予想実売価格は4万円を切るあたりに設定される見込みだ。コンパクトなボディにさまざま技術を凝縮した最高級のガジェットをぜひとも体験してほしい。
NW-MS70Dの主なスペック | |
製品名 | NW-MS70D |
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オーディオ形式 | ATRAC3、ATRAC3 Plus |
最大収録時間 | 約700分(ATRAC3 Plus:48kbps) |
連続再生時間 | 33時間(ATRAC3)、28時間(ATRAC3 Plus) |
インターフェイス | USB 1.1 |
電源 | ニッケル水素充電池(内蔵) |
動作時間 | 約33時間(ATRAC3)または約28時間(ATRAC3plus) |
サイズ | 36.4(W)×48.5(D)×18(H)mm |
重量 | 約54g |
