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仕事に使えるグラフィックス入門

仕事に使えるグラフィックス入門

2003年02月01日 00時37分更新

文● 薮田 織也

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Illustratorを使えばここまでできる!

最新版のIllustrator10では、従来ならできなかった効果を簡単に実現できるのだ。

キャプション内のマークについて

『Ver.8』
Adobe Illustrator 8で使える機能
『Ver.9』
Adobe Illustrator 9で使える機能
『Ver.10』
Adobe Illustrator 10で使える機能

複雑な形も
効率よく簡単に描ける

パスファインダ 長方形グリッド・同心円グリッドツール
画面6【パスファインダ】 『Ver.8』『Ver.9』『Ver.10』 重なった複数のオブジェクトで別のオブジェクトを作る機能。合体や前面オブジェクトで型抜きなど、さまざまな合成方法がある。Ver.10では一部の機能が元の形状を記憶できるようになっている。画面7【長方形グリッド・同心円グリッドツール】 『Ver.10』 Ver.10では、描画ツールに直線、円弧、長方形グリッド、同心円グリッドツールなどが加わった。いずれもペンツールで描けるものばかりだが、こうしたツールのおかげで簡単に描けるようになる。

 Illustratorで線を描くのは難しいという人がいる。それはえてしてベジェ曲線のことをいっているのだが、はじめから無理してベジェに取り組む必要はない。長方形や楕円形ツールなら誰でも使えるし、こうしたツールで描いたオブジェクトを重ねてから、「パスファインダ」(画面6)で合成してやれば、複雑な形も簡単に描くことができる。Illustrator10からは、表や同心円といった難しくはないが描くのが面倒なオブジェクトを、1回の操作で描けるツールが加わった(画面7)。また、小さな新機能だが、直線や弧を描くツールも加わり、ますますビジネスグラフィックスを描きやすくなった。さらに注目したいのが「シンボル」機能(画面8)だ。従来、同じオブジェクトを繰り返し使うようなイラストを描く場合、そのオブジェクトをコピーしていたわけだが、数が増えるほどメモリを消費していた。こうすると動作も鈍くなるし、ファイル容量もいくらベクタデータでも大きくなってしまう。そこで便利なのがシンボル機能。描いたオブジェクトをシンボルとして登録しておくと、どれだけコピーしても元のデータは1つだけで、あまりメモリを圧迫せずにファイル容量も小さくすむ。ユニークなのは、Photoshopでよく使われるフレア効果(画面9)がIllustratorでも使えるようになったことだ。

シンボルと各種シンボルツール フレアツール
画面9【シンボルと各種シンボルツール】 『Ver.8』『Ver.9』『Ver.10』 繰り返しコピーして使うオブジェクトは、シンボルとして登録しておくと便利だ。シンボルスプレーツールを使うと、スプレーで吹き付けるようにしてシンボルを描画できる。シンボルは、個々に色や大きさ、向きを調整できる。画面9【フレアツール】 『Ver.8』『Ver.9』『Ver.10』 レンズに光が差し込んだときにおきるフレア効果を図形に加えるツール。Illustratorのフレアツールはパスで構成されているので、後で線の太さや色を変更できる。図形にちょっとした演出を加えたいときに使ってほしい機能だ。

グラフやペイント風の
イラストが描ける!

 ビジネスグラフィックスに特化した機能としては、グラフ機能(画面10)があげられる。使い方は「Microsoft Excel」でグラフを作るのとほぼ同じだ。もちろん、データシートを変更すればグラフも連動して変わる。Excelよりも自由で精細なグラフが描けるのと、描いた後で各デザインを自由に編集できるのが特長だ。画面10はIllustratorで描いた携帯電話のイラストで棒グラフのデータを作成したものだが、単純な棒グラフよりも視覚に訴えることができるだろう。

グラフツール グラデーションメッシュツール
画面10【グラフツール】 『Ver.10』 ビジネスグラフィックスに欠かせないグラフ機能。マーカーや棒グラフなどのグラフ要素に、あらかじめ作った図形をデザインとして適用できる。データの数値を編集すれば、グラフの内容も更新される。画面11【グラデーションメッシュツール】 『Ver.8』『Ver.9』『Ver.10』 ペイント風の着色ができるグラデーション機能。オブジェクトの中にメッシュを作成し、それぞれの交点に着色すると、和紙に絵の具を垂らしたようなグラデーションが描かれる。

 Illustratorはベクタデータでイラストを描くソフト。複雑な線を描くことは得意でも、絵画チックな微妙なニュアンスの色表現は不得意と思われがちだ。ところがVer.8から加わった「グラデーションメッシュ」を使うと、画面11のようなイラストも描ける。人の顔などを描くとき、以前のIllustratorでは色が変化する部分をパスで囲み、少しだけ違う色で塗りつぶすことで色の変化を表現していた。しかし、グラデーションメッシュを使うと、滑らかなグラデーションで表現できるので、まるでペイントソフトで描いたかのようなイラストになるのだ。また、Ver.9から追加されたベクタデータの「ぼかし」効果を使うと、画面11の服のように影や淡い感じの模様を描くこともできる。もちろん元のデータはベクタデータなので、いつでもパスを編集できるのである。また、これもVer.9から加わった「透明」設定を使えば、画面12のような内部構造が透けて見えるテクニカルイラストも描ける。

透明機能 パス上文字ツール
画面12【透明機能】 『Ver.9』『Ver.10』 オブジェクトの透明度を変えることで、下に重なったオブジェクトを透かして見せることができる。「グループの抜き」を指定すれば、一部だけをぼかして切り抜ける。画面13【パス上文字ツール】 『Ver.8』『Ver.9』『Ver.10』 縦横の一行文字列、ワープロのような段落文章に加え、オブジェクト形状の中に段落を作る機能やパスの上に文字列を配置する機能など、テキスト編集機能に優れている。

多彩な文字編集機能と
変形ツール群

 会社や製品ロゴマークなどを作るとき、文字のデザインも重要になってくる。そこで便利なのが、「パス上文字ツール」だ。画面13はパス上文字ツールを使って、曲線のパスに沿って文字を配置したものだ。円だけではなく、もっと複雑なパスにも文字を配置できる。

リキッドツール エンベロープ
画面14【リキッドツール】 『Ver.10』 従来の「パスの変形」では、オブジェクト全体が変形されてしまうが、オブジェクトをマウスでなぞると、その部分だけに変形効果が適用されるツール。画面15【エンベロープ】 『Ver.10』 エンベロープには、ワープ、メッシュ、最前面オブジェクトの3つの変形機能がある。メッシュは、グラデーションメッシュの感覚でオブジェクトを変形させる機能。パスオブジェクトだけではなく、写真も変形できる。

 描いた図形を変形させる機能も、Ver.10でかなり多彩になった。画面14はリキッドツールと呼ばれる、変形ツール群だ。ワープ、うねり、収縮、膨張、ひだ、クラウン、リンクルなど、マウスでオブジェクトをなぞっていくだけで変形処理ができる機能だ。また、文字や図形、写真などを自由に変形させる「エンベロープ」という機能も秀逸だ(画面15)。エンベロープには、あらかじめ登録されたスタイルに変形させる「ワープ」、網目のような枠を使って細かな変形を指定する「メッシュ」、そして一番上に置いたオブジェクトの形状にあわせて変形させる3つの変形機能がある。いずれも元のデータは維持されているので、いつでも元の状態に戻すことができる。

自動選択ツール スライスツール
画面16【自動選択ツール】 『Ver.10』 オブジェクトの色や線幅など、各種属性を指定しておき、任意のオブジェクトを「自動選択ツール」でクリックすると、その指定した属性を持つ他のオブジェクトを自動的に選択してくれる。画面17【スライスツール】 『Ver.10』 Web画像作成用のスライスツール。1枚の画像をスライスツールで区切り、名前やリンク先のURLを入力できる。スライスした後は、「Web用に保存」で区切った画像の圧縮比率を指定して、HTMLと一緒に吐き出せる。

 ここで紹介している機能は、Illustratorが持つ豊富な機能のほんの一部だ。ビジネスグラフィックスを作る上で役立つ機能やTips、そしてそのほかのグラフィックソフトとの連携機能など、次回から紹介していくつもりだ。ご期待あれ。

仕事に役立つグラフィックス用語

─その2─
■ ベジェ曲線
ピエール・E・ベジェというフランス人が考案した、複雑な曲線を描くための方法。始点から終点を結ぶ曲線の定義を、それぞれの制御点から伸びる方向線の角度や位置で数学的に決定する。制御点のことをIllustratorではアンカーポイントと呼ぶ。
■ オブジェクト
Illustrator上で扱える文字や図形、画像を指す。パスで描かれたオブジェクトはパスオブジェクトと呼ぶことがある。
■ パス
パス
すべてのアンカーポイント(制御点)を通過する線全体のことをパスと呼ぶ。
■ フレア
カメラのレンズで起こる不必要な光の散乱や反射をフレアと呼ぶ。レンズの端に太陽が入るような構図のとき、フレア現象が起きやすい。本来は補正しなければならない現象だが、演出に使われることが多い。
■ ぶら下がり
文字編集用語のひとつで、Illustratorでは「、」や「。」などの句読点の位置を制御する機能。句読点を指定した文章入力範囲に入れるか外に出すかが指定できる。ぶら下がりを指定すると、句読点が外に出される。
■ 割注
「わりちゅう」と発音する。選択した文字列を縮小して、2行に組み直す機能。注釈文字などに使う。
■ 禁則処理
文字列を改行する際、行頭や行末にきてはいけない句読点や記号などを強制的に移動する処理のこと。「。」や「、」が行頭にきた場合は行末に、「(」や「\」などの記号が行末にきた場合は、行頭に移動させる。Illustratorでは、禁則処理の度合いを強弱で指定できる。

記事制作協力

宮澤篤司氏 http://www.a2shi.tv/

SantaCroche http://www.santacroche.co.jp/
Adobe Illustrator 10 日本語版の主なスペック
製品名 Adobe Illustrator 10 日本語版
OS Windows 98/Me/2000/XP
CPU PentiumII以上
メモリ 128MB以上
HDD 180MB以上

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