N1が遂に正式にアナウンスされた。以前から情報が小出しになっていたので、キーワードとしての“N1”は周知のものとなっていたが、その具体的なロードマップ等が、9月に開催されたSunNetwork Conference 2002、そしてその後に開催された日本国内での説明会等で明らかになってきた。
N1は、以前から語られているとおり、主としてシステム管理の省力化を実現するためのアーキテクチャであり、具体的な製品でもある。現時点で公表されているロードマップでは、フェーズ1~3の3段階に分けて段階的に製品実装が進められる。
- フェーズ1:バーチャライゼーション (2002年~)
- フェーズ2:サービス・プロビジョニング (2003年~)
- フェーズ3:ポリシー・オートメーション (2004年~)
N1のロードマップ、“CY”はCalendar Yearで、要は右から2002、2003、2004、2005の各暦年を指す。現在はVirtualizationが実装されつつある段階で、構想が一通り完成を見せるのは2005年になる予定だ。 |
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9月に開催されたSunNetwork Conference 2002でもN1は大きく取り上げられ、デモンストレーションも行なわれた。このデモではフェーズ1のバーチャライゼーションの機能が実装されているだけに留まっていたため、見た目には「ちょっと便利なサービスレベルの管理ツール」という感じで、あまりインパクトのあるものではなかったというのが正直なところである。では、各段階の詳細を紹介していこう。
フェーズ1のバーチャライゼーション(Virtualization)は、すでにおおまかには実現されている。具体的な製品は、2003年の早い時期に発表される予定だ。この段階では、Tier 1とTier 2、つまり3階層モデルでのWebサーバの層とアプリケーションサーバの層を主たるターゲットとし、この部分のリソースを仮想化して一元的な管理を実現する。この部分にある利用可能なリソース(主としてCPUパワー)の総量を把握し、各サービスごとに適量を割り当てていく、という処理を自動化してくれるわけだ。
フェーズ2のサービス・プロビジョニング(Services Provisioning)では、サービスやアプリケーションを適切に供給する、という機能が中心となる。ターゲット領域はTier 3、つまりデータベース層やSANのようなストレージ層まで拡大される。この段階では、あるサービスを実際にシステムに配備しようとした際には、N1の側で必要となるアプリケーション/ミドルウェア/OSコンポーネントなどを把握し、不足しているものがあれば自動的にインストールを行なう、といった作業まで自動化される。たとえば、あるサーバの空きCPUリソースをアプリケーション実行に割り当てる際には、まずそこにアプリケーションサーバをインストールしてくれるという感じだ。また、この段階でプラットフォーム拡大への取り組みが行なわれ、他社製品をN1の枠内に組み込んで統合管理できるようになるはずだ。
フェーズ3のポリシー・オートメーション(Policy Automation)は、こうして構成されたサービスプラットフォームの管理を、あらかじめ定義されたビジネスポリシーに従って自動管理できるようにすることだ。たとえば、データベースサービスはミッションクリティカルでダウンが許されない、という情報をあらかじめ与えておけば、N1が自動的に2重化やクラスタリングなどの高可用性対策を行なってくれたり、インタラクティブな処理についてはレスポンスタイムを低下させないようにリソース配分を最適化してくれたりする、といった機能が実現されるだろう。
最終的な目標は、システム管理者は「ビジネスに必要なサービスの種類と、それぞれの運用ポリシー」を策定するだけでよく、このポリシーを具体的に実現するための細かな設定作業はN1がすべて自動的に行なってくれる、という環境の実現だろう。OSのコマンドやパラメータチューニングについて一切知識を持たないデータセンター管理者、というものが出現することになるのかもしれない。
※1 資料はサン・マイクロシ ステムズ提供※2 資料はサン・マイクロシ ステムズ提供