日本アイ・ビー・エム(株)は9日、自律型コンピューティングシステム“オートノミック・コンピュータ”に関する記者説明会を都内で開催した。
オートノミック・コンピュータは、2001年5月に発表された“Project eLiza”に端をなす、“生命体のように自律できるシステムの開発を目指す”プロジェクトで、単なる1アプリケーションを差すのではなく、サーバー/ワークステーションなどのハードウェアと、OS/サーバーアプリケーション群/データベースなどのソフトウェア、トータルソリューションで構築されるオープンアーキテクチャー・システム。
米IBMのバイス・プレジデント オートノミック担当のアラン・G・ガネック氏 |
記者説明会には、日本アイ・ビー・エムのビジネスコンサルティングサービス技術理事の高安啓至(たかやすひろし)氏と米IBMのバイス・プレジデント オートノミック担当のアラン・G・ガネック(Alan G.Ganek)氏から、全体のビジョンと現在の進捗状況について報告された。
オートノミック・コンピューティングを構成する4つの要素 | オートノミック・コンピューティングの構成モデル |
その中で、ガネック氏は「企業や団体からさまざまなサービスが異なる形態で提供される現在、多種多様なシステムがサーバーがネットワーク内に存在し、それぞれに個別の管理者が必要とされている。システムの高速性/コストパフォーマンスは上がったものの、複雑さが拡大したためにメリットが相殺されているのが実情だ」
「オートノミック・コンピューティングのビジョンは、サーバー負荷の一時的な増大など環境の変化に適応する“自己構成”、障害を発見/診断/回復する“自己修復”、ITリソースの追加なしにロードバランシングなどによって最大限の活用を図る“自己最適化”、DoS攻撃など考えうる攻撃を予測/探知/防御する“自己防御”の4つが柱となる。アクセス管理の“Tivoli”、ウェブサーバー群“WebSphere”、データベースおよび情報共有ソフト“DB2”、リストアソフトやセキュリティシステムを組み込んだクライアントパソコン“ThinkPad/NetVistaシリーズ”、ストレージシステム“TotalStrage”など、すでにこれらのいくつかを実現するためのハード/ソフトウェアは提供している」と述べ、IBMが全社を挙げてオートノミックに取り組んでいることを強調した。
また、これらを一括して導入するのではなく、段階的に取り入れて最終的にオートノミック・コンピューティングの完成を目指すのが現実的とも述べている。具体的には、
- Level 1(基礎):
現在のシステムからオートノミック・システムの導入に必要なデータを生成/高いスキルを持つITスタッフが必要 - Level 2(管理):
データを統合し、管理ツールを用いて導入のためのアクションを起こす/ITスタッフによる正確な分析が必要/システムの認識度が上がり、生産性の向上が期待できる - Level 3(予測):
オートノミックシステムがモニターし、必要なアクションをアドバイスする/ITスタッフが承認した上でアクションを実行/高いスキルへの依存の減少や意思決定の迅速化が期待できる - Level 4(適応):
オートノミックシステムが必要なアクションを起こす/ITスタッフはパフォーマンス管理を行なう/人(ITスタッフ)とシステムの相互作用により、的確で迅速な対応が期待できる - Level 5(自律):
ビジネスルールやポリシーに基づき、システムが直接管理を行なう/ITスタッフは結果の精査やニーズの監視に注力/人手を介さずに敏捷で回復力のあるシステムを構築できる
という5段階を示し、現在IBMが提供しているのはLevel 3までで、Level 4に相当する製品を開発中、Level 5を研究中(いずれも数年中に製品化が可能)と説明した。
また、オートノミック・コンピューティングの概念を実際に体験できる場として、幕張に“オートノミック・コンピューティング 幕張 デザイン・センター”をオープンしたことも合わせて紹介した。