慶応義塾大学環境情報学部教授の村井純氏が中心となって開発を進めている、DV品質(720×480ドット毎秒29.97フレーム)の動画をインターネット(IPv4およびIPv6)を利用して配信するソフトウェア技術“DVTS(Digital Video Transport System)”の研究発表を行なう場として、“DVTSコンソーシアム 第1回ワークショップ”が慶應義塾大学三田キャンパスで開催された。
“DVTSコンソーシアム 第1回ワークショップ”の会場でデモされていた、DVTSサーバー。100BASE-TXの有線LANを構築しており、スイッチングハブもメルコ製のごく一般的に市販されているものという |
DVTSはWIDEプロジェクト(※1)が'98年より開発を開始、現在は産学共同での発展を目指しDVTSコンソーシアム(代表:村井純氏、担当:慶應義塾大学環境情報学部 助教授 中村修氏、2002年10月1日発足)として開発を進めている。ソースコードは会員向けに無料配布されており、現在サーバーとしてFreeBSD版、クライアントとしてFreeBSD/Windows XP版が開発されている。
※1 WIDEプロジェクト '88年に学術研究を目的として開始された日本のインターネット研究プロジェクトで、村井純氏が代表を務める。ワークショップは、技術編/商品紹介編/応用事例編の3部に分かれ、DVTSの最新動向や使い方の技術解説から、DVTSを利用した製品例、応用技術まで幅広く紹介された。
最初に慶應義塾大学の小川晃通氏から、DVTSの最新事情が報告された。それによると、現在FreeBSD版サーバーが先行して開発が進められており、最新の0.9bでは複数のあて先に送信を可能にしたという。ビットレートは最大約30Mbpsで、うち音声は約2Mbpsを占める(使用帯域を節約するためフレームレートを動的に変更する技術も組み込まれている)。この音声データにおいては冗長性を確保し、万一パケットロスが起きても音声の途切れやノイズの発生を抑えるよう工夫しているとのこと。また、現在開発中の技術として、1枚のフロッピーにLinuxの起動システムとDVTSサーバーや必要なデバイスドライバーを組み込み、FDDブート可能でIEEE1394ポートを持つパソコンがあれば、HDD内のOSやデータに一切変更を加えることなく、DVTSサーバーとして利用し、DVカムコーダーなどをIEEE1394ポートに接続することで映像配信が可能になる“Linux 1 Floppy Boot System”、Macintoshユーザーにコンソール画面からコマンドをキーボードで入力しなくても済むように、“MacOS X Aqua GUI版”などをデモンストレーションした。
商品紹介では、(株)富士通研究所がPCIスロットに接続する1ボードタイプのDVTS互換動画サーバーシステム“CometDVIP”を参考出展、(有)パワープレイはIEEE1394ポートを備え、CFメモリーカードで起動する小型パソコンにFreeBSD+DVTS(もしくはHDDを内蔵してWindows XP+DVTS)を組み込んだ“腰付けDVカメラ送信システム”のデモンストレーションを行なった。CometDVIPは、通信時にトリプルDESによる暗号化/復号化を行なっており、セキュリティーの確保が必要な病院などでの遠隔映像送受信システムなどへの導入も可能と説明している。
なお、DVTSコンソーシアムへの会員登録は、一般会員が年会費50万円、学校関係などで学術研究目的の場合は無料となっている。