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米パームソースが独立企業に──スティーブ・サコマンCPOが来日

2002年11月22日 15時17分更新

文● 編集部 阿蘇直樹

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米パームソース社は21日、同社チーフ・プロダクト・オフィサー(CPO)であるスティーブ・サコマン(Steve Sakoman)氏の来日にあわせてメディア向けに事業戦略を説明した。

パームソースはPDAなどのハンドヘルドコンピューター向けOS『Palm OS』を開発している企業。米パーム社の100%子会社として昨年設立されたが、10月7日に、ソニー(株)から2000万ドル(約2億6000万円)の出資を受けたことを発表している。これによりソニーはパームソースの株式約6%を取得し、パームソースはパームの100%子会社ではなくなった。

最初に、サコマン氏がモバイル機器市場の現状を紹介。現在、最も大きなマーケットとなっているハンドヘルドコンピューター市場は今後減速し、2006年頃までにスマートフォンなどのコミュニケーションツール市場が「第2の波になるだろう」と、今後の成長を予測した。

米パームソース社チーフ・プロダクト・オフィサーであるスティーブ・サコマン(Steve Sakoman)氏米パームソース社チーフ・プロダクト・オフィサーであるスティーブ・サコマン(Steve Sakoman)氏。元米Be社の出身だ。手にしているのはソニーの『Palm OS 5.0』搭載PDA“Clie”『PEG-NX70V』

パームソースが開発している『Palm OS』の戦略については、Windows CEでは米マイクロソフト社によって定められた仕様に従わなければならず、ハードウェアベンダーは似通った製品で価格競争を強いられること、また、携帯電話などに多い独自OSでは、多様な選択が可能だが、標準プラットフォームがないため、ソフトウェアベンダーが個別に対応しなければならないというデメリットを挙げ、『Palm OS』は「両方のもっともよいところを両立させる」製品であるとした。具体的には、パームソースが標準的なプラットフォームとなるOSのみを提供することで、ハードウェアベンダーは各社の製品にあわせたカスタマイズが可能になる。一方ソフトウェアベンダーは『Palm OS』の標準プラットフォームに準拠したアプリケーションを開発することで、多様なハードウェアに対応した製品を開発することが可能であるということだ。サコマン氏はこれを「マイクロソフトの戦略は“計画経済”のようなものだが、我々はハードウェア、ソフトウェアベンダーと協調した“Cooperative Developments(協調開発)”を可能にしている。そのため、パートナーはそれぞれの製品に、革新的な技術を自由に導入することができる」と紹介した。

パームソースの戦略
パームソースの戦略。大量生産と独自開発の長所を取り入れた“Mass Customization”を可能にするという

製品ロードマップについては、今年6月にリリースされた『Palm OS 5.0』で、これまでの『Palm OS 4』に加えて、ARMプロセッサーのサポートやオーディオ機能の追加、VPNアクセスへの対応などといった変更がなされていることを改めて紹介した。

『Palm OS』のロードマップ
『Palm OS』のロードマップ。『Palm OS 5.0』搭載製品が出荷開始されたばかりということもあり、次期バージョンには言及しなかった

なお、パームソースが独立企業になるかということについては、ソニーから出資を受けたことなどを紹介し、来年には完全に独立することを明らかにした。

引き続き、パームソースのマーケティング・マネージャーであるアンダース・ベックランド(Anders Baecklund)氏が、デモを交えながら『Palm OS』を搭載したデバイスを紹介した。

、米パームソースのマーケティング・マネージャーであるアンダース・ベックランド氏米パームソースのマーケティング・マネージャーであるアンダース・ベックランド氏。手にしているのは米Alphasmart社が教育市場向けにリリースしている『Dana』。『Palm OS 4.1』を搭載し、子供たちがキーボードになじめるようにすることを目的に開発されている。非常に頑丈にできているそうだ

『Palm OS』搭載デバイスは、教育市場向け、産業向け、エンターテイメント市場、情報端末市場、コミュニケーション端末市場などに多様な製品がリリースされている。例えば『Palm OS』の画面サイズも、現在米国で行なわれている“COMDEX Fall 2002”に出展されている、米Fossil社の“Wrist PDA”のような小さいものや、米Alphasmart社が教育市場向けにリリースしている『Dana』のようなものまで自由にカスタマイズすることが可能だ。

『Palm OS』搭載製品
『Palm OS』搭載製品ラインナップ。PDAだけでなく、携帯電話や産業向けバーコードリーダーなどにも採用されている

デモでは、米国の医師の35%が使用しているという『ePocrates』が披露された。『ePocrates』は『Palm OS』用の薬剤データベースアプリケーションで、薬品名を選ぶと年齢にあわせた処方量などが表示される。また、複数の薬品を組み合わせて処方する場合の、副作用や注意事項などを調べることもできる。

『ePocrates』
“Palm OS”用の薬剤データベースアプリケーション『ePocrates』。薬品名を選びタップすると、詳細な情報を参照することができる

ベックランド氏は『ePocrates』について「このソフトは『Palm OS』以外では動作していません」と、『Palm OS』独自のアプリケーションであることを強調し、デモを終えた。

説明会終了後、米Be社の出身ということから、サコマン氏にオープンソースで開発が行なわれている“OpenBeOS”についてどう思うかたずねた。「今はパームソースの仕事が忙しくて、『BeOS』の動向は把握できていない。しかし『Palm OS』には『BeOS』の“哲学”が反映されていくことになる」との回答を得ることができた。

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