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【COMDEX Fall 2002 Vol.3】新生HPのフィオリーナCEOが登場

2002年11月19日 23時36分更新

文● 塩田紳二

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さて、COMDEX初日のキーノートスピーチは、米ヒューレット・パッカード社会長のカーリー・フィオリーナ(Carly Fiorina)氏。IT系大企業初の女性CEOとしても有名な同氏だが、今回は、HPと米コンパックコンピュータ社の合併後、初めて大きな舞台でのスピーチを行なう。

フィオリーナ女史
米HP会長であるフィオリーナ女史。今回は黒一色の服装で登場

で、このスピーチなのだが、今年1月の“CES(Comsumer Electronics Show)”やニューヨークで開かれた“Linux World”で行なわれたスピーチに比べると、格段に洗練されたものになった。何が違うのかというと、この業界のCEOがよくやるようなプレゼンテーションスライドを見せながら行なうスピーチではなく、ステージの後ろにスクリーンを設置し、話題にあわせた映像を流しながらスピーチを行なうのである。会場に5枚設置されている大スクリーンはあくまでもイメージを伝えるビデオのみで、ちょうど、音楽系アーティストのコンサートのような感じ。たとえば、話がDNAの解析にHPのマシンが使われるという場面では、背景にDNAが解析されていくようなCGアニメーションが流れ、F1チームのサポートをHPが行なっているという話のところでは、実際のレース場面が登場する。テキストはほとんど使われず、あくまでも映像でイメージを伝えようとしている。また、自社の製品範囲を示すのに“Desktop to Printshop”(オフィスのデスクトップから印刷屋のシステムまで)とか“Palmtop to Nonstop”(Palmtopコンピューターから、フォールトトレラント機能を持つサーバーまで)といった韻を踏んだキーワードを使うなど、いかにイメージをうまく伝えようかと考えたものとなっていた。

CGアニメーションが使われる
医療関係でHPのマシンが使われるという部分では、映像としてこのようなCGアニメーションが表示される。小さい方のスクリーンの映像が違う点にご注意いただきたい
IT業界のプレゼンテーションとは一線を画す
画面に出るテキストはこんな程度。ごちゃごちゃと文章や図をならべるIT業界のプレゼンテーションとは一線を画す感じ

軽く音楽を流して、スピーチの最後に持っていくなど、今回かなり演出に凝ったものとなった。おそらく、映像系の演出家か監督を使ってスピーチを演出させたのではないかと思う。

スティーブ・バルマーCEOにメールを送るデモ
タブレットPCで米マイクロソフトのスティーブ・バルマー(Steve Ballmer)CEOにメールを送るところをデモ

ただ、会場の聴衆の頭上に“プロンプター”(スピーチ原稿を表示する装置)があり、それをみると、スピーチは、原稿と一字一句違わない。途中に“(Pause)”と書いてあれば、やはり話をちょっと休む。あまりに一緒なので、プロンプターを見ているというよりもセリフから作られたテレビのクローズドキャプションを見ているかのよう。つまり、スピーチそのものも映画のシナリオのようにあらかじめきちんと作られたもので、その意味では、話しているフィオリーナ氏は、キーノートスピーチという映像作品に登場する“役者”になってしまっているわけだ。

天井のプロンプター
会場の天井に設置されていたプロンプター。前の席に座って振り仰ぐとこれが見えてしまう。見ているとフィオリーナのスピーチは、このプロンプターとまったく同じ

製品として紹介されたのは、昨日発表した新しいPocket PCと11月7日に発表したタブレットPCのみ。話のほとんどは、HPの現状と、さまざまな分野に対するHPの取り組みを紹介しただけだった。けっきょく、できの良いHPの会社紹介ビデオを見たって感じである。

『iPAQ h5450』 『iPAQ h1910』
HPの『iPAQ h5450』。本体下部に指紋センサーを採用し、パスワードの代わりに指紋認証が利用できる。つまり、本人以外は利用できないPDAになるわけだ。Bluetoothや無線LANを内蔵HPの『iPAQ h1910』。こちらも299ドル(約3万6000円)と従来のiPAQシリーズよりも安い。ただし、iPAQシリーズが採用していたジャケットシステムには未対応のようである

これに比べると、午後の米サン・マイクロシステムズ社のスコット・マクニーリ(Scott McNealy)氏のスピーチは、いかにもIT業界的。デモは、9月にサンが主催した“SunNetwork Conference 2002”のものとほとんど同じ。毒舌も多少はあったが、フィオリーナのああゆうスピーチのあとでは、ちょっと見劣りがしてしまう。

スコット・マクニーリ氏
午後のキーノートスピーチに登場したスコット・マクニーリ氏

今回のCOMDEXは、製品的には、HPや米デルコンピュータ社のPocket PCが中心となってしまうぐらい、新製品という点では、タマ不足を感じるイベントとなった。まだ、会場を細かく回ってはいないのだが、あまり目を引く展示はなさそうな感じ。細かい製品などに光るものがあるかもしれないのだが、探すのが大変そう。

『Axim X5』 『Orange SPV』
デルコンピュータの『Axim X5』。199ドル(約2万4000円)とPocket PCにもかかわらず低価格。CPUにXscaleを採用し32MBのメモリーを搭載イギリスの携帯電話キャリアーのOrange社が発売予定の『Orange SPV』。Windows Powered Smartphoneを搭載し、170ポンド(おそらく契約込みの価格:約3万3000円)で販売される。GSMながら、1800MHzのシングルバンド機
キーノートスピーチが終わったのに展示会場が開いていないため、ホール内には人があふれる
キーノートスピーチが終わったのに展示会場が開いていないため、ホール内には人があふれる。ちょっと運営がまずい感じ。もっとも、最盛期には、展示会場が開いていてもこんな感じだったのだが

明日は、米Advanced Micro Devices(AMD)社の社長兼CEOヘクター・ルイズ(Hector de J.Ruiz)氏がキーノートスピーチに登場。いままで、こうした場に登場することが少なかったルイズがどんなスピーチをするのかに注目が集まる。

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