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【OracleWorld 2002 Vol.10】最終日午後のキーノート ~ Oracle Chairman & CEO・Larry Ellison氏

2002年11月15日 00時00分更新

文● 渡邉 利和(toshi-w@tt.rim.or.jp)

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OracleWorldの最後を締めくくったのは、OracleのChairman & CEOであるLarry Ellison氏である。氏は現在ヨットレース出場のためにニュージーランドに滞在中であり、キーノートスピーチは衛星中継で行なわれた。

OracleのChairman & CEO、Larry Ellison氏。ニュージーランドから衛星中継でキーノートスピーチを行なった

課題と解決策

 Ellison氏は、このところOracleが取り組んできた課題と、それをどのように解決したかということから話を始めた。まず氏が掲げた3つの課題が、

  • データの分散
  • アプリケーションの統合が困難
  • 不完全な自動化

ということである。まず、データの分散とは、企業が必要とするデータが複数のデータベースやアプリケーションに分散して格納されており、必要なときに必要な情報を引き出すことが容易でない上に、コストも増大しているということである。たとえば、氏が例としてあげたのはCRMシステムである。現在CRMシステムとして販売されているのは顧客の情報をさまざまな角度から分析するツールであるが、実際に顧客情報を完全に把握しようとするならその顧客との取引情報を財務会計システムから参照したりといった具合に複数のシステムがそれぞれ個別に持っている情報を統合した上で、必要な情報を引き出せるようにする必要がある。Oracle社自身も、かつては業務に必要なデータベースを全世界で400も運用していたため、必要な情報がどこにあるかを探すことさえ困難な状況だったという。こうした分散したデータベースを1つのグローバルなデータベースに統合すれば、多数のデータベースサーバを運用するコストを大幅に削減できる上、すべての情報に的確にアクセスできるようになる。このために、Oracleでは“Ultra Search”といった検索技術などを提供している。

 アプリケーションの統合の困難さは、さまざまな機能が独立に開発/提供され、顧客自身が必要な機能を集めて自分で統合する必要があったことに起因している。Ellison氏は数億ドルする業務システムと数千ドル程度のTVとを比較して、数億ドルの業務システムの信頼性がTVに劣るのはなぜか、と問う。数億ドル費やして構築した業務システムは、顧客が選択したさまざまな機能を任意に組み合わせたもので、顧客ごとに固有の構成になっている。組み合わせの数は膨大で、各ソフトウェアの提供者がすべての組み合わせについてあらかじめテストを行なうことは不可能である。実際に組み合わせて統合してシステムを組み上げ、テストするのは顧客の責任で行なわれていたのである。氏はこの状況を、IT業界は不完全な製品を販売し、不完全さを顧客に取り除かせていたのだと表現する。この問題の解決は、顧客が必要とする機能をあらかじめ統合しておき、十分なテストを行なった上で提供する、というアプローチで行なわれる。その例が、『Oracle9i Application Server』だというわけだ。必要な機能を1つのミドルウェア製品の形にあらかじめまとめ上げ、十分なテストとパフォーマンスチューニングを行なって提供することで、顧客が独自の組み合わせに取り組む必要をなくすのである。

 最後の不完全な自動化とは、顧客が必要とする機能を完全にカバーするビジネスアプリケーションがまずないということに起因する。そのため顧客は独自にカスタムアプリケーションを作成して不足する部分を補完することになる。これにはコストがかかる上、十分なテストができなかったり、組み合わせ問題が発生したりすることに繋がる。アプリケーションソフトウェアがあらかじめ必要な機能を備えているか、あるいは簡単に機能モジュールを追加できる構造になっており、既存の部分に影響を与えることなく機能追加が実現できるようになっていれば問題発生を避けることができる。このために、J2EEを基礎に据えたソフトウェア開発を推進しているという。

グローバルデータベースの実現

 データベースの分散は情報検索を困難にし、ビジネス遂行に必要とされる情報が入手できないという問題を生じる上に、多数のサーバを運用するコストの負担も膨大な額にのぼる。これを1つのグローバルデータベースに統合できれば問題は解決するが、このグローバルデータベースがダウンしたらその影響は致命的なものとなってしまうだろう。

 そのため、ダウンしないデータベースの実現に取り組んでいるOracleからのメッセージが“Unbreakable”であり、具体的には“RAC(Real Application Cluster)”によって信頼性が確保されているわけだ。さらに、セキュリティもきわめて重要となってくる。すべての情報がまとめて格納されているデータベースに不正アクセスを許してしまったら、深刻な情報漏洩に繋がるからだ。さらに、RACの利用によってプラットフォーム自体の信頼性に依存せずに高信頼性を確保することが可能になったため、安価なIAサーバ+Linuxというプラットフォームを利用でき、コスト削減に繋がっている。

 Ellison氏のキーノートスピーチは、Oracle発のさまざまなメッセージを1つのストーリーにまとめ上げ、明確化した分かりやすいものであった。

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