マイクロソフト(株)は5日、企業ユーザー向けに同社製品/サービスの最新情報を紹介するビジネスコンファレンス“the Microsoft Conference 2002/fall”を開催した。開催期間は、東京が5日から7日まで、大阪が19日から20日まで。
“the Microsoft Conference 2002/fall”で基調講演を行なう阿多社長 |
コンファレンス初日となる5日の基調講演では、同社代表取締役社長の阿多親市氏が、“新たなシステム価値を創造する“.NET””と題し、「すでに成長段階に入っている」(同氏)という“.NET”を活用したエンタープライズシステムの事例紹介や、Tablet PC(タブレットPC)、Windows Media 9 Series、Content Management Server 2000といった最新製品/テクノロジーの紹介、WindowsとUNIXとの連携やMicrosoft Systems Architectureによるシステム構築支援の紹介、およびWindows .NET Server 2003の新機能説明などを行なった。
まず、阿多社長自ら、8月から使っているというタブレットPCでデモを行ない、「タブレットPCにより、まず会議のスタイルが変わる。会議でメモしたことを会議後に出席者全員へメール送信することで議事録をすぐに全員でシェアできる。またレビューも変わる。例えばExcelの表を手書きユーティリティー宛に送信することで、Excel表に手書きのコメントを自由に書き込め、さらにこれをメール送信して作成者にフィードバックできる。FAXやメールも変わる。XPEDITEなどのメッセージングサービスと組み合わせてFAX文書の送受信も可能だ」と説明した。タブレットPCは7日発売で、ハードウェアメーカー各社より提供される。
8月から使っているというタブレットPCを使って自らデモを行なう阿多社長 |
続いて次世代デジタルメディアプラットフォーム『Windows Media 9 Series』が紹介された。どちらかというとコンシューマー向けテクノロジーという感のあるWindows Media 9 Seriesだが、同氏は「Windows Media 9 Seriesにより、動画でしか伝えられない要素をビジネスシーンで活用できる」としている。例えば各種設定方法やソフトの操作方法などをビデオキャプチャーしてWindows Media 9 Seriesを利用して配信/再生することで、エンドユーザーに操作手順を分かりやすく説明できるとしている。なおWindows Media 9 Seriesは今冬リリース予定という。
WM9を利用して、設定操作手順をビデオキャプチャーした様子を再生するデモ |
また同社は、ウェブコンテンツ管理ツール『Microsoft Content Management Server 2002 Enterprise Edition』を25日に発売すると発表した。同製品は、中規模/大規模ウェブサイトを構築するためのツールで、.NET Frameworkをベースにアーキテクチャーを採用する。ASP .NETベースのページテンプレート開発環境を提供し、HTMLデザインとビジネスロジックを分離することで、デザイナーと開発者がそれぞれ平行して開発でき生産性が向上、運用コストも削減できるという。
Content Management Server 2002のサイト編集画面 |
『Windows Services for UNIX Version 3.0』は、既存のUNIX環境にWindowsを統合するためのもの。Windows NTカーネル上に直接実装されたUNIX互換環境“Interix”を搭載しており、UNIXアプリケーションのソースコードをWindows側にコピーしコンパイルすることで、UNIXアプリケーションをWindows上のInterixアプリケーションとして実行できるようになる。Windows Services for UNIX Version 3.0は12月6日発売。
『Windows Services for UNIX Version 3.0』のデモ。UNIXアプリケーションをWindows環境にコピーして起動するというもの。こちらはUNIX画面 |
UNIXアプリケーションをWindows環境にコピーして起動した画面 |
なお、UNIXからWindowsへの移行事例として、ミノルタ(株)の事例が紹介された。ミノルタはワールドワイドでUNIX環境からWindows環境への移行を計画しており、日本法人はハードウェア:IBM RS6000、OS:AIX、データベース:Oracle、業務システム:SAP R/3 3.0FというUNIX環境から、今回ハードウェア:Unisys ES7000、OS:Windows 2000 Datacenter Server、データベース:SQL Server 2000、業務システム:SAP R/3 4.6CというWindows環境に移行したという。このサーバーシステム移行により、従来のUNIX×10台構成からES7000×2台構成に集約され管理負担が軽減し、コストを50%削減できたという。さらに処理速度は2倍に向上したため、投資削減と処理の高速化により従来のUNIXと比較して4倍の費用対効果を得られたとしている。
また同社は、セキュリティー対策強化の一環として、『Microsoft Systems Management Server 2.0 Software Update Services Feature Pack』を今冬に無償ダウンロード提供するという。このSMS 2.0 Software Update Services Feature Packを導入すると、セキュリティーアップデート適用状況の収集/分析が行なえるほか、Microsoft Officeアップデート更新状況の収集/分析も可能となる。ウェブレポーティングツールも用意されている。さらに同社は、10月30日付けで発表したWindows 2000のISO 15408“セキュリティ評価共通基準認定”取得について紹介。阿多社長は「一般商用OSとしては初めてのこと。プラットフォームが高い位置付けを達成できた」と語った。なお、Windows XPおよびWindows .NET Serverも検証作業中という。
基調講演の最後には、Windows .NET Server 2003の製品概要、および今後の製品ロードマップが紹介された。Windows .NET Serverは、“ITインフラストラクチャー”、“アプリケーションプラットフォーム”、“Information Worker インフラストラクチャー”という3つの役割を持っており、それぞれの役割に沿って機能説明が行なわれた。まずActive Directoryの展開/管理の簡素化を行なうと共に、Active Directoryのフォレスト間の信頼を実現したという。ストレージ機能も強化され、“ボリュームシャドウコピーサービス(VSS)”と“仮想ディスクサービス(VDS)”により、ストレージシステムや管理/バックアップツールの選択が柔軟になり、バックアップも容易になったとしている。
また、コンピューティングリソース管理機能として“Windows System Resource Manager”が提供される。WSRMは、大規模サーバーのコンピューティングリソースを複数のアプリケーションで有効利用でき、複数の負荷の混在環境を制御することが可能。アプリケーション、アプリケーショングループ単位で、CPU/メモリー/ページファイルサイズの制限を指定できるほか、スケジュールに基づいて複数の管理ポリシーを自動的に適用する。またリソース利用状況の監査レポートを自動生成できる。IIS 6.0は、カーネルモードキャッシュにより高度な応答が可能で、アプリケーションの稼動状況を常に監視できる。また、セキュリティー対策強化の一環として製品の攻撃され得るポイントを削減するべく、既定セットアップではIIS 6.0はインストールされないようになっているという。
Windows .NET Server 2003のエディションラインナップは、『Windows .NET Server 2003 Datacenter Edition』、『Windows .NET Server 2003 Enterprise Edition』、『Windows .NET Server 2003 Standard Edition』、『Windows .NET Server 2003 Web Edition』となっており、これらに『Small Business Server 2003』を加えて製品展開するという。また、64bit版 Windows .NET Server 2003として、64bit版『Windows .NET Server 2003 Datacenter Edition』、64bit版『Windows .NET Server 2003 Enterprise Edition』もリリースするとしている。64bit版Windows .NET Serverは、大容量メモリーを利用でき高速な浮動小数点処理が可能。また、32bit版Windowsとシームレスに共存し、32bitアプリケーションも容易に移殖できるという。
64bit版Windows .NET Server 2003のデモに使用された日本電気(株)のItanium搭載サーバー『TX7/i9510』。Intel Itanium 2×32個と64GBのメモリーを搭載する。デモでは、パーティショニング機能を利用して4CPU/8GBメモリーを搭載するセル単位でシステムを分割、4CPU/8GBメモリーと、28CPU/56GBメモリーに分けた |
64bit版Windows .NET Server 2003のデモでは、Itanium搭載サーバー『TX7/i9510』と、64bit版 Windows .NET Server 2003、64bit版 SQL Server 2000を使用したOLAP分析が行なわれた。まず32bit 4wayサーバー(Xeon×4CPU/4GBメモリー)対TX7/i9510(Itanium 2×4CPU/8GBメモリー)では、64bit側が24秒で終了したのに対し、32bit側は1分程度かかった。続いて行なわれた64bit4CPU(Itanium 2×4CPU/8GBメモリー)対64bit28CPU(Itanium 2×28CPU/56GBメモリー)では、64bit28CPU側は9秒で終了、64bit4CPUは55秒で終了した。
今後の製品ロードマップについては、“現在の波”“Yukonの波”“Longhornの波”という3つの波ごとに製品名およびコードネームが紹介された。まず現在の波として、Windows .NET Server 2003ファミリー、Exchange次期バージョン(コードネーム:Titanium)、Visual Studio .NETのアップグレード版(コードネーム:Everett)、Windows Media 9、Tablet PC、Office 11が挙げられた。続いて、Yukonの波として、SQL Server次期バージョン(コードネーム:Yukon)、.NET Enterprise Servers、Visual Studio .NET新バージョン(コードネーム:Whidbey)。最後にLonghornの波として、Windows次期バージョン(コードネーム:Longhorn)、Exchange新バージョン(コードネーム:Kodiak)、Visual Studio .NET新バージョン(コードネーム:Orcas)、Office 12が紹介された。Longhornの波は「ここ数年のうちにやってくる」(阿多社長)という。同氏は、「われわれが提供するソフトやサービス、さらにパートナーとのソリューションを、企業システムの中核部分に採用してもらいたい」と語った。
マイクロソフト製品ロードマップ |