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富士通がLinux事業を本格開始 -「3年後のエンタープライズLinux実現を目指す」

2002年10月24日 15時29分更新

文● 編集部

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富士通(株)は、Linuxを次世代情報システムの基盤OSとして位置づけ、2006年までに大規模基幹系システムをLinuxで構築することを目指すと発表した。

富士通はこれまで、同社Linux Centerを中心に、IAサーバ『PRIMERGY』やミドルウェア『Interstage』、『Systemwalker』などのLinux対応推進やISVとの連携、LKSTやLKCDの開発、クラスタやGridシステムの構築やサポートといったLinux関連事業を行なっている。今回新たに発表されたのは、

  • Linux対応ミドルウェアの提供開始時期
  • 米Red Hatとの協業
  • サポート体制の強化
  • Linux製品のロードマップ

といったことだ。

記者発表会では、まず富士通(株)代表取締役副社長の杉田忠靖氏が、エンタープライズLinuxへの取り組みの背景と戦略、ロードマップなどを紹介した。

杉田忠靖氏富士通(株)代表取締役副社長 杉田忠靖氏。「基幹システム領域でのLinuxでNo.1を目指す」という。

杉田氏は、現代の情報システムに求められる要素として、

  • 24時間365日の無停止連続運転に対応する、システム全体の高い信頼性
  • 大規模な負荷変動に対応できる拡張性、負荷分散への対応
  • 業務、データベース統合による、企業間、業務間連携の高速化
  • 新しい業務の開発を短期化し、既存業務との連携を可能にするシステム全体の連続的な拡張性

といったものを挙げ、システム全体を連続的に拡張できるOSとしてLinuxが最適であり、今後の情報システムの基盤としてLinuxシステムに取り組むとした。

富士通はLinuxソリューションを通じて、メインフレームやUNIX向け開発ノウハウなどの基幹システム技術の適用や、各種ISVとの提携によるアプリケーションの提供、ワンストップサポートの強化を行ない、次世代の情報システム向け基幹OSとしてLinuxを戦略的に位置づけてゆくという。Linuxカーネルに対する取り組みとしては、日立やNEC、IBMと共同で開発しているエンタープライズ向け機能拡張『LKST』、『LKCD』の開発や、コミュニティへの提案、自社のメインフレーム技術やUNIX技術の適用などが挙げられた。

Linuxの戦略的位置づけ
既存のエンタープライズ技術を適用し、Linuxをベースにした基幹システムを展開するという。

第1段階として、富士通の業務システム向けミドルウェア製品や、通信キャリア向けソリューションパッケージをLinuxに対応させて提供する。Linux対応が発表されたのは以下の9製品となる。

業務システム向けミドルウェア製品群(10月より順次提供開始)
Webアプリケーションサーバ、開発環境『Interstage』エンタープライズ版
運用管理ソフトウェア『Systemwalker』エンタープライズ版
データベース、フロントエンドアプリケーション『Symfoware』
クラスタソフトウェア『PRIMECLUSTER』
データ転送、連携ソフトウェア『Linkexpress』
VoIP向け高可用ミドルウェア『GeoServer HA』
COBOL開発、運用環境『NetCOBOL』
通信キャリア/プロバイダ向けソリューションパッケージ(2003年3月より順次提供開始)
VoIP交換機機能を実現するパッケージ『GeoServe SCS』
簡易メッセージングサービスパッケージ『GeoServer IMS』

また、安定したソリューションを提供するために、米Red Hatと協業し、『Red Hat Linux Advanced Server』のエンタープライズ向け機能の開発を共同で行なうという。次期バージョンの『Red Hat Linux Advanced Server』にはこの成果が反映され、『LKST』『LKCD』の機能が搭載されるほか、IPv6への対応も進められるそうだ。富士通では次期『Red Hat Linux Advanced Server』と、IAサーバ『PRIMERGY』を組み合わせた『Linux サービスバンドルモデル』を12月より発売するとしている。

富士通は今後、製品開発に1000人規模、システムエンジニアを1万人規模動員し、「サービス、サポートも含めて、基幹システム領域でのLinuxでNo.1を目指す」(杉田氏)としており、将来はハードウェアで1000億円、ソフトウェアで2500億円程度の売り上げを見込んでいる。

また、富士通(株)ソフトウェア事業本部Linux統括部長の北岡正治氏は、具体的なLinuxシステムの導入事例として、富士通(株)系のISP『@nifty』などを挙げた。

北岡正治氏富士通(株)ソフトウェア事業本部Linux統括部長 北岡正治氏

@niftyでは、現在Webサーバ、Webホスティングサーバ、ftpサーバなど、全体の3割程度にLinuxサーバが導入されているといい、今後すべてのサーバをLinuxに置き換える予定だという。そのほか、2003年より稼働予定のLinuxを採用した銀行の営業店システムや、通信キャリア向けシステム構成例などが紹介された。

@niftyのシステム
@niftyは、リファレンスユーザーとして、現在Webサーバ、Webホスティング用の「ホームページサーバ」、ftpサーバなどにLinuxを採用している。今後はすべてのシステムをLinuxベースのものに置換するという。

今後のロードマップについては、来年から再来年にかけて業務基幹系ミドルウェアのLinux対応促進やサポート体制の強化を行ない、2005年にはPostgreSQLなどのオープンソースミドルウェアの活用強化に取り組むという。3年後の2006年には、「先行するエンタープライズLinuxの事例が登場するようになる」(北岡氏)といい、Linuxによる大規模基幹系システム構築が本格化するようだ。

ロードマップ
富士通のエンタープライズLinuxロードマップ。カーネル 2.5でエンタープライズ向け機能が追加されていることなどもあり、2006年には先駆的な事例が登場し、基幹システムのLinux採用が促進されると考えられている。

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