三洋電機の「DSC-MZ3」は、“動画デジカメ”の愛称で知られる同社のDSC-MZシリーズの最新モデルである(9月30日に発表された400万画素機「DSC-AZ3」は、動画撮影が320×240ドットで静止画記録が主用途の別シリーズ)。光学3倍ズーム+有効195万画素CCDというスペックは従来から変更ないが、動画撮影機能がさらに進歩している。
新型ボディで
さらに強力なコンパクト機に
写真1 レンズは2段階に伸張する。背面の上部が斜めにカットされているおかげで背面のズームレバーの真上にあるにも関わらず回しやすく、ズームレバーからほとんど指を動かさずに操作できる。 |
元祖動画デジカメ「DSC-MZ1」(写真をクリックするとレビュー記事に移動します)。 |
後継の「DSC-MZ2」。 |
DSC-MZ3は、従来の「DSC-MZ1」(写真A)、「DSC-MZ2」(写真B)を継承するコンパクトデジタルカメラだ。有効195万画素CCDと光学3倍ズーム、CF TypeII対応カードスロットといったスペックや動画機能に特化した製品である点は従来機と同様だ。MZ2がMZ1とほとんど同一のボディを採用し、細部のチューンに留まっていたのに対し、MZ3はボディデザインや操作性にも大きな変更が施されている。そのひとつが、レンズが従来機の光学2.8倍ズームから光学3倍ズームに変更されたことである(写真1)。
写真2 横長ボディの左側にレンズを配置するコンパクトデジタルカメラには一般的なデザインを採用する。グリップ側のSTILL&MOTIONのロゴ部分は盛り上がっていて指をかけやすくなっているが若干滑りやすい。 |
横長の箱型ボディの左側に沈胴式レンズを持つ点はMZ1/MZ2と同様だが、本体前面右側のグリップ部の膨らみがなくなり、本体前面が平坦になった(写真2)。これは従来機が単3電池×2本だったのに対し、MZ3は専用リチウムイオン充電池を採用するためだ。電池寿命は静止画撮影で約310枚(液晶ONでの公称値)で、MZ2を付属の単3ニッケル水素充電池で使用した場合(公称値約190枚)と比べても大幅に向上している(写真3)。また、レンズはMZ1/MZ2のf=35~98mmから37~111mmと、若干望遠寄りになったほか、従来機では本体前面に電動でスライドするレンズカバーが内蔵されていたのに対し、レンズ前端の小さなレンズカバー(2枚構成/自動開閉)に変更されており、本体の厚みを抑えるのに貢献しているようだ。
写真3 電源スイッチは押し込み式のボタンで、その下にあるスライドスイッチで「撮影(液晶モニタON/OFF)」「再生」を切り替える。カーソルキーの左上に同心円上に並ぶMENU/SETボタンはカーソルキーに当てた親指をちょっと伸ばすだけで操作できるので使いやすい。 |
写真C 静止画撮影志向の「DSC-AZ1」の背面。左下のカーソルキーの周囲を囲むダイヤルを回すと、ぐるりと回転するメニューが表示される。 |
背面のデザインおよび操作系はまったく別モノとなっており、特にMZ2や「DSC-AZ1」(写真C)の特徴であったダイヤルボタンと、それに連動して回転するメニューは廃止され、一般的なMENUボタンとカーソルキーに変更された。メニューはMZ1と同様にメインメニューが縦長、サブメニューがその横にアイコンで表示されるというものだが、ツールチップ(バルーンヘルプ)のようなアイコンで機能の解説が表示されるなど、初心者にも分かりやすい工夫が施されている(写真3)。
写真4 CFカードは下面から、バッテリは左側面から挿入する。後ろにあるのは付属する専用充電器。 |
従来機と同様に、画素補間による2000×1496ドットの記録モード「ピクトライズ300」を持つほか、露出を適性値から上下に振った2枚の撮影データを合成することで高い階調表現を持つ画像を生成する「ワイドレンジショット」、撮影画像のカラーバランスを変更できる「リアルカラーイコライザ」を搭載する。ワイドレンジショットではガンマカーブを細かく設定することにより白とび/黒つぶれを防止でき、リアルカラーイコライザでは従来の色相と彩度に加えて明度も変更できるなど、機能アップが図られている。
撮影サンプル1 640×480ドット、15fpsで連写(右は虫を中心にトリミングして並べたところ)。連写モードでも最高1/10000秒という高速シャッターが切れるのだが、よほどの好天下ではないと飛んでいる虫の羽根を止めて撮るのは難しい。 |
動画記録も強力になった。従来機では書き込み速度の速いCFカードを使った場合でも、最大5分という制約があった(ちなみに、書き込みの遅いCFでは書き込み速度が間に合わずバッファフルになって途中で終了する、詳細は「デジタルカメラ基本のホ」を参照)。最大5分というのは、連続撮影によりCCDが熱を持ち過ぎて画質が劣化することを防ぐためなのだが、新型CCDによってこの制約がなくなり、メモリカードがフルになるまで連続撮影できるようになった。IBMのMicrodrive(CF TypeIIのHDD)を使えば、最大約191分(160×120ドット、15fps)というDVカムコーダにも勝る超長時間の撮影が可能となる。
連写機能も従来同様に強力で、1600×1200ドットで15fp(最大15コマ)、640×480ドットであれば30fpsで最大50コマの記録が可能なほか、補間画像である2000×1496ドットでも15fpsの連写(最大15枚)が可能となった。従来機同様に、シャッターボタンを半押しにしてからメモリに書き込んで、シャッターボタンを離したときにメモリ内にあるデータを画像として記録する「プリキャプチャー機能」(富士写真フイルムの“サイクル連写”やリコーの“M連写”、カシオの“過去モード”などに相当する)、4枚を連写して一覧表示から記録する画像を選択する「ベストショットセレクト」、露出を振って最大13枚を撮影する「オートブラケット」(-1.8~+1.8EV、0.3EVステップ)も装備する。
撮影サンプル2 2000×1496ドットと1600×1200ドットで撮影した画像の比較(左は全体をリサイズ、右は同じ位置でトリミングしたもの)。ピクトライズ300(左)による補間画像は、インクジェットプリンタなどで印刷した場合などでは有効だが、PC上で画像データを拡大してみるとやはりリサイズ(補間)によりエッジが甘くなっているのが見て取れる。 |