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NMRC、着メロサイトでの歌手名の使用とパブリシティー権について見解を発表――着メロサイトでの歌手名使用はパブリシティー権の侵害ではない

2002年09月25日 22時22分更新

文● 編集部 矢島詩子

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ネットワーク音楽著作権連絡協議会(NMRC)は25日、着信メロディーの配信サイトにおける、歌手名の使用とパブリシティー権についての見解を発表した。

NMRCは、着信メロディーの配信サイトにおける歌手名の使用とパブリシティー権については、パブリシティー権の侵害ではなく、顧客吸引力の利用に当たらないもので、「パブリシティー権の名の下に、これらを拒絶、統制することは、不当なものとして許されない」と考えているという。

今回の発表は、(社)日本音楽事業者協会と(社)音楽製作者連盟が、着信メロディーの配信事業者に対し、“アーティストの氏名表示権”を理由に「着信メロディー提供サイトにおける歌手名の使用は、日本音楽事業者協会と音楽製作者連盟の両団体の許諾を要する」として、交渉を要請していたことによる。

NMRCでは、この両団体の要請が新聞紙上などで取り上げられたことで「着メロサイトが社会からいわれのない誤解を受けるようなこととなれば、ユーザーの支持により芽吹き始めた新しい産業の成長を萎縮させ、ひいては着メロサイトによる情報発信や、着信メロディーという新ジャンルの音楽表現、およびそれに伴う楽曲の流通を阻害するおそれをきたすこととなる」と考えたため、見解を発表するに至ったという。

日本音楽事業者協会と音楽製作者連盟は、平成3年(1991年)に「芸能人にはパブリシティー価値があり、名前などの不当な使用を排除できる」という判決が出された(※1)“おニャン子クラブ事件判決”(東京高等裁判所による)を引き合いにして主張している。しかし、両団体からはこの主張の内容や根拠について、明確かつ具体的な説明がないという。

※1 おニャン子クラブ事件判決 ……“おニャン子クラブ”に属するタレントの肖像、氏名を無断でカレンダーに使用し・販売した業者に対して、氏名・肖像使用権の侵害を理由にカレンダーの製造販売の差し止めと損害賠償請求を行なった事件。

着信メロディーの配信サイトについては、「着信メロディを求めて着メロサイトにアクセスしたユーザーに対し、その求める情報(着信メロディ)の検索を支援する索引情報として着信メロディのデータベースに組み込み、または当該着メロデータベースにより入手可能なコンテンツを告知するためのニュース情報として、当該コンテンツと合理的な関連性を有する範囲内で、時宜に応じてサイトのページ上に表示するというものにすぎない」とし、着メロサイトや着メロデータベースにおける歌手名の使用については、「その使用目的、方法、およびその態様を全体的かつ客観的に考察しても、到底『専ら』歌手の氏名の有するパブリシティ価値ないしは顧客吸引力の利用を目的として行なわれているとは言え」ないと判断。

また、NMRCでは、過去にパブリシティー権の侵害として訴えの起きた、(※2)“キング・クリムゾン事件”や(※3)“詩人土井晩翠事件”などをもとに、見解の裏付けとしている。

※2 キング・クリムゾン事件 …… “キング・クリムゾン”の名を題号とし、グループおよびグループに関係する音楽家の肖像写真やレコード等のジャケット写真を多数掲載した書籍を出版したラジオ局に対して、パブリシティー権を侵害する不法行為であることを理由に、当該書籍の販売の差止等及び損害賠償の請求をした事件。
平成11年(1999年)2月の東京高等裁判所の判決は、「著名人自身が紹介等の対象となる場合に著名人の氏名、肖像等がその個人識別情報として使用されることは当然に考えられることであり、著名人はそのような氏名、肖像等の利用についてはこれを原則的に甘受すべきものであると解される」とした。

※3 詩人土井晩翠事件 ……詩人・土井晩翠の相続人が、街の標識に“晩翠通”など、晩翠の名前を使用した仙台市を相手取り、相続人および土井晩翠のパブリシティー権を侵害するとして、訴えた裁判。平成4年(1992年)、横浜地方裁判所での判決は「名称使用によって無断使用者の側に不当な利益が生じる反面、本来の権利者に損害が生じるという問題も発生しないものである」とされた。

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