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ついにLinuxに踏み込んだSunの思惑

2002年08月25日 22時51分更新

文● 渡邉 利和(toshi-w@tt.rim.or.jp)

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Linuxを取り巻く社会情勢

 さて、前段で見てきたとおり、実は製品に注目してLX50を見た場合、正直に言ってしまえば「わざわざ出す必要もないのではないか」と感じてしまう。実際、マイナス要素はほとんどないのは間違いないが、プラス要素もそう大きなものではないと思われる。従来「SPARC/Solarisのシングルアーキテクチャで全領域をカバーする」という強いメッセージを出していたことを考えれば、エッジシステム限定とは言えこのメッセージを自ら否定するようなシステムをわざわざ製品化する必要はない、という見方も可能だろう。

 この点について数人のSun関係者に尋ねてみたところ、「オープンソースというライフスタイルを支持する顧客に対応するため」という答えが返ってきた。これをもっとビジネスよりの生々しい表現にしてしまうと、「教育機関や官公庁などの入札の際に条件として“オープンソース”であることが求められる例が増えてきた」ということになるようだ。

 従来SunはMicrosoftに対して「独占的」「閉鎖的」という批判を行なってきた。筆者も個人的にMicrosoftよりもSunの方がよりオープンであると感じているのだが、所詮は比較の問題であり、程度の問題である。よりオープンなLinuxとSunのシステムを比較すれば、Sunのシステムは所詮は1社独占の閉じた環境である、と批判を受ける例が増えているという。歴史を振り返れば、SunはSunOSやSolarisのソースライセンスを他社に提供したり、SPARCチップの仕様をオープンにして互換マシンの製造が可能となるようにしたりといった具合に何度となく「業界標準」確立のための方策を実施してはいるが、結果として現状ではSun互換機が広く存在しているわけではなく、まぁ1社独占と言われても否定しがたい状況である。この状態で、Linuxを基準とした「オープンさ」を求められ、結果として門前払いを喰ってしまうのは困る、というのは理解できる。

 Linuxは既に“ブーム”は終焉し、やや地味だが現実的なレベルで他の既存システムと競合する存在になった。先日発表されたターボリナックス ジャパンの買収にも見られるとおり、Linux関連企業も本気で収益向上に取り組まないと厳しい状況にある。ハードウェアメーカーがLinux対応で話題を集めたのはおおよそ2年ほど前の話だろう。主要コンピュータメーカーが一通りLinux対応を終えた今、「SunがLinuxをサポート」と言っても、「いまさらか?」という反応が返るのは容易に想像できる。少なくとも、それだけで大ニュースとなる、という程の大反響は期待できないだろう。しかも、顧客層も微妙に異なり、かつSunがトータルでサポートするという点に魅力があるとしても、実態としては単なるPCサーバであるLX50は、やはり既存PCサーバメーカーとの競合は避けられず、そう大幅な利益が見込めるわけではないだろう。にも関わらずLX50を投入するに至ったのは、やはり「プロプラエタリシステムを排除したい」という顧客の要望が無視できない規模に拡大し、従来のような「MSよりはオープン」と言っても済まない場面が出てきたことの影響が大きいのだろう。

 オープンソースが話題になってから数年が経過している。もともと「オープンなスタンダードに準拠し、実装技術の優劣で競争する」ことを旨としてきたSunにとって、業界を代表する「オープンな企業」から「Linuxと比べれば所詮は1社独占」とまで言われてしまうような大変化がこの間に起こったわけだが、その変化を認識し、手を打つまでにずいぶん時間を要した感がある。多分、LX50投入の意味は、単にIntel/LinuxマシンをSunも手掛けた、という表面的な話に留まらず、「オープンソースという“思想”が存在する世界において、Sunはどういうポジションを占め、どう振る舞うべきか」という問題に対してSunがようやくメッセージを発する準備ができつつあることの反映として見るべきなのだろう。このメッセージは、残念ながら現時点ではまだ曖昧な点があり、確固たる内容を形にしているとは言えないと思うが、今後のSunの製品展開やさまざま活動を通じて少しずつ明らかになっていくと思われる。

 そもそも「ソースコードをオープンにすることと企業利益は相反しない」という主張は、GNU関係者の発言にも見られるし、オープンソースを推進するコミュニティからも聞かれる。しかし、多くのLinux関連企業が苦況に立たされ、現実世界ではオープンソースと企業利益をうまく両立させている例はほとんど見つからないように思う。だからといって、オープンソースと企業利益は両立し得ないのだと言うつもりはないが、具体的な成功例が多数出てこないと説得力を持ち得ないことにもなろう。Sunは、「オープンソースに取り組みつつも企業利益を確保できる」存在になれるかどうか? 同じ課題に取り組んでいると見えるIBMの動向と合わせ、今後の展開が興味深い。

LX50の基本的なスペック

CPU Intel Pentium III 1.4GHz
CPU数 1 2
L2キャッシュ(1CPUあたり) 512KB
メモリ(標準) 512MB(256MB×2) 1GB(512MB×2) 2GB(512MB×2)
メモリ(最大) 6GB(1GB×6)
メモリスロット Registered ECC PC133 SDRAM×6
HDD(標準) 36GB 72GB 36GB
HDD(最大) Ultra 160 SCSI 10000rpm 72GB×3
リムーバブルストレージ FDD/24倍速CD-ROMドライブ
PCIスロット 64bit 66MHz×2(フルサイズ×1、ハーフサイズロープロファイル×1)
消費電力 250W
サイズ 430(W)×609(D)×43(H)mm
重量 11.8kg
価格 41万9000円 64万4000円 79万4000円

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