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アドビ日本法人新社長の石井幹氏に聞く――PDF、アクセリオ製品を武器にエンタープライズ部門を強化

2002年08月12日 15時30分更新

文● インタビュー/文:千葉英寿、写真:編集部 桑本美鈴

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石井社長2
石井新社長
[Q] ここまでのお話でエンタープライズへ注力されることが明確になっていますが、コンシューマーに向けた施策はどうお考えでしょうか?
[石井社長] 大きな変化はありませんが、まずお役に立てる部分からやっていこうと考えています。これまでは専門性の高い分野をターゲットとしてきましたが、ようやくこうした製品をコンシューマーが必要とする時代がきているように感じています。

とは言っても、無理にコンシューマー市場を開拓しようということではありません。手前味噌ではありますが、われわれは技術的にはいいものを持っていると自負していますので、プロフェッショナル向けに培った技術や製品の形を多少整えることでコンシューマーにも対応できると考えています。もちろん、それには適切な価格で出す必要があるとは考えています。
[Q] コンシューマー製品の中では、日本仕様、日本独自の製品を出される可能性はありますか?
[石井社長] 日本仕様を中心とした製品はすでにあります。『Adobe Photoshop Elements』は、もちろんワールドワイドの製品ですが、日本向けの製品として意識されています。デジタルカメラユーザーをPhotoshop Elementsをお使いいただけるユーザーのひとつとして想定していますが、ご存じのようにデジタルカメラ市場の成長は日本がいちばん進んでいます。これは米本社でも十分認識していることです。日本市場において何を提供したらいいかを考えることで、時間差はあっても北米や欧州でも同じような状況になると考えています。また、『Adobe Premire LE』は日本だけの製品です。アドビはこれほど日本市場を意識しているのです。
[Q] 他のカテゴリでも今後、コンシューマー向けバージョンは増えるのでしょうか? 例えば、Adobe PageMakerはビジネスユーザーを意識されたレイアウトソフトですが、コンシューマーをより強く意識した製品を出す可能性はありますか?
[石井社長] レイアウトソフトのコンシューマー向け製品の計画は今のところありません。この分野に関しては、顧客ニーズはあまり進んでいないと考えています。当面はハイエンドのユーザーが満足するものを出すことに注力していくことになります。
[Q] コンシューマー、エンタープライズと、PDFならびにAcrobatの領域がさらに広くなると思いますが、フォーム機能などを加えた新しいAcrobat Readerはいつでるのでしょうか?
[石井社長] 紙の電子化が進み、PDFのフォーム機能が加わることで、プリントイメージがスタティックなものからアクティブなものに変わっていきます。こうなることで、業務フローやグループ内でのコラボレーションが変化し、新しいAcrobat ReaderがePaperを推進する上で重要な役割を果たすと考えています。製品が出る時期は明確にできませんが、米本社CEOがさまざま講演などでも語っておりますように、年内には出ることになるでしょう。
[Q] それでは、新たに力を入れていくエンタープライズ、これまでの主流だったプロフェッショナルグラフィックス、そしてコンシューマー、といった3つの柱で何にどれだけの力点が置かれ、それはどのような割合になるでしょうか?
[石井社長] どれがどういう割合になる、ということはありません。エンタープライズが加わった分だけ増える、ということになりますでしょうか。

最近、社内で話をするときにホンダ(本田技研工業)を例にとることが多いのですが、オートバイをメインとしてきたホンダが四輪車を作ることになったとき、オートバイではすでに一流だった同社が、さらに四輪車をも成立させ、見事に成功を収めました。同社には素晴らしいエンジン技術があって、だからこそオートバイができ、芝刈機ができ、四輪車も生み出した。そういうことだと思います。

これはわれわれアドビも同じだと考えています。プロフェッショナルグラフィックスのアドビが、ドキュメントソリューションも増やしていく、ということだと思います。
[Q] ということは、さしずめアドビの“エンジン”は、PostScriptであり、それをベースとしたPDFだ、ということになりますね
[石井社長] おっしゃるとおりです。

権限委譲で日本独自のマーケティング戦略を実現

[Q] 石井さんのお話を伺っていると、日本独自に判断し、実行できる領域を増やしているように感じます。これはかなりの部分で権限委譲が行なわれている、ということになりますか?
[石井社長] 権限委譲という点では、独自に判断できる部分としかるべき承認をとって行なう部分があります。これまでも極めて合理的な範囲で設定されていましたが、今後はエンタープライズのお客様への対応では、カスタムでのお話がたくさん出てくるでしょうし、そのためにも日本で決定できる範囲を明らかにすることで広げていくということがあります。
[Q] マーケティング分野においては、米国企業の日本における現地法人が国内でマーケティングを進める上で、思うようにいかないことが多いと耳にします。今回の新体制によってマーケティングのあり方も変わりますか?
[石井社長] 確かにわれわれも本社が米国にある企業ですが、日本のアドビは恵まれているほうだと思います。なぜかといいますと、アドビは日本に縁の深い会社だからであり、同じような状況にある他の企業よりは日本に近い企業と言えると思います。アドビはかなり早い時期から日本市場に入っていますが、これはわれわれアドビの重要な技術にPostScriptがあるからです。日本にはプリンターメーカーが多く存在し、その点でアドビは早くから日本市場に関わってきたわけです。

もちろん、売り上げ(アドビ社の世界シェアでは日本は米国に次いで第2位)から来る日本に対する期待もあります。そうした中で日本のアドビは最前を尽くしてきましたし、今後はさらによりよい状況が生まれていくと考えています。私はこの恵まれている体制から、ますます顧客にお返して行かなければならないと痛感しています。

これは社内の話になりますが、そのひとつの動きとして、マーケティング部門において、日本が主体的にマーケティングを行なうために統括責任者を新たに採用しました。この人間が日本側の顧客とのコミュニケーションをまとめます。と同時に米本社において日本側の声を代表することに専心し、本社の役員クラスに直接コミュニケーションをとることができるマーケティング担当者を置き、米本社ときわめて直接的に仕事を進める体制を作りました。
[Q] 今回、制作過程でAdobe Illustratorを使ったアニメーション作品『TAMALA 2002』に対して協賛という形をとっていますが、今後のブランド戦略の一環として、今回の映画への協賛やイベントへの冠スポンサーといった展開を行なう可能性はあるのですか?
[石井社長] 以前に弊社CEOが申し上げておりますように、出資云々といったことはありません。われわれの関わりかたはあくまで制作者のかたのツールを提供するということで、そこから軸足をずらすことはあり得ませんが、今後多少なり、もう一方の足を実験的に動かすことはあるかもしれません。ただし、そういうことがあったとしても基本は変わりません。
[Q] 協賛のこともそうですが、日本のアドビとして一般ユーザーから見てわかるようなイメージ戦略、ブランディングに変更はあるのでしょうか?
[石井社長] ブランドは今まで以上に大事にしていきたいとは考えていますが、まずは日本における企業として、アドビを認識していただけるように、きちんとお客様に接し、イメージをコミュニケーションしていくことが大事だと考えています。ePaperのイメージとこれまでのグラフィックス系のイメージではちょっと違う部分がありますので、その辺を意識して行きたいと考えています。

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