技術コラム
現在主流のパネル技術
最もメジャーな方式は
コストで有利なTN方式
図1 TN方式は、電圧OFF時には液晶分子がねじれて光が屈折、透過する(ノーマリーホワイト)。ONにすると斜めに立ち上がって光を遮断する。斜めに立ち上がるため、見る角度によって画の色合いが異なってしまうのが最大の欠点である。 |
現在もっとも採用実績が多いのが、液晶分子の並びがねじれている様から「Twisted Nematic」と呼ばれているTN方式だ(図1)。歴史が長いためコストメリットに優れ、ノートPCの液晶や、低価格な液晶モニタのほとんどは、この方式のパネルである。液晶部分は図のように(上下で角度が異なる)2枚の偏光板に挟まれ、電圧OFF時のねじれている状態では、液晶を通過する光の偏光方向が変わり透過状態となる仕組みだ(図4)。電圧ONで液晶分子にねじれがなくなると、2枚の偏光板の偏光方向(角度)の違いから非透過状態となって、黒画面になる。
ただし、図1の右図のように液晶分子が垂直に立たないため、斜めから見た際の偏光角に違いが出る(=視野角が狭い)。これを視野角依存性と呼ぶ。視野角依存性が高いのがTN方式の最大の欠点だが、これを解消するため「高視野角化フィルタ」という部材が2000年頃から実用化され始めた。
このフィルタをパネル前面に挿入するだけで、従来のTN方式パネルを容易に高視野角化できるようになったのだ(ただし、光が拡散するため輝度は多少低下する)。当初は割高だったフィルタのコストもこなれてきたため、価格面も含めたトータルの競争力では、TN方式が今なおIPS、VA方式を上回る市場を獲得している。
高視野角を実現する
IPSとVA方式
図2 IPS方式は下側のガラス面のみに電極を持ち、液晶分子が水平に90度、スイッチのように回転する。電圧OFF時に黒を表示する(ノーマリーブラック)ため、液晶部分が動作不良を起こしても、黒点になる。従って、ドット抜けが生じても目立ちにくい。 |
図3 電圧OFF時に液晶分子が垂直に立ち上がるVA方式。この状態では液晶分子が光を乱さず、ストレートに偏向板に届くため、遮断時に光が漏れにくい(コントラスト比が高い)という特徴を持つ。電圧OFF時は黒を表示する。 |
この方式の問題点としては、半透過状態ではTN方式と同様に見る角度によって色合いが変化することが挙げられる。これを解消する技術が、視野角依存性を打ち消し合うよう、互いにそっぽを向く(花びらのような)格好に液晶分子を配置する「Multi domain VA方式」、いわゆる「MVA方式」である。
表面処理の工夫による
コントラストの向上策も
以上は基本的な液晶の動作原理だが、このほかにも、各メーカーが表面処理や素材の工夫などの技術によってしのぎを削っている。例えば、シャープ製品の一部に採用されている「低反射ブラックTFT」は、その代表例だ。表面処理を工夫するなどして、位相が1/2ズレた波長の光を反射させ、互いに打ち消し合わせる。これにより、従来のアンチグレアコート方式では約5%だった反射率を、約1.5%(いずれも同社比)にまで低減させ、外光の反射によるコントラストの低下を極限にまで抑えることに成功している。