7月19日に公開された、組み込みLinux向けGUI環境『式神 リリース 2.0』について、(株)アックス企画部部長である坂下秀氏と第2開発部部長である田中正善氏に、おもな特徴や用途、今後の方針などについて伺った。
『式神』の概要
『式神』は、陰陽師が用いる使い魔からとられた名称で、「使いやすい道具」であることを表わすという。GTK+ベースの組み込みLinux向けのウィンドウマネージャ、PIMアプリケーションなどの統合環境、開発環境などを提供する。キーボードやマウスではなく、タッチパネルでの入力に最適化されており、日本語入力には手書き認識ソフト『布目』を利用する。ちなみに『布目』という名称は、手書き文字認識が難しい文字である、「ぬ」、「の」、「め」にちなんだものだそうだ。『式神』の画面表示は直接フレームバッファを制御するわけではなく、Xウィンドウシステムを利用している。
「Xを使うことによるオーバーヘッドはそれほど大きなものではありませんでした。『Qtopia』などと比較しても、メモリ占有量は7~8MB程度でそれほど変わりません。ただ、GTK+の次期バージョンでフレームバッファの直接操作が可能になるようなので、今後Xを使わないものを検討することはあるかも知れません」(田中氏)。
「今のところ、Xを使うことによるデメリットよりも、Xを使わないことのデメリットの方が大きいのではないでしょうか。Xを使わないとすると、たとえばXlibを使っているKtermなどが動かなくなってしまったり、画面をとばしてリモートでデバッグするといったことができなくなってしまいます。性能と機能のトレードオフを考えて検討していきます」(坂下氏)。
現在のPDAは、CPUの計算能力、メモリ搭載量ともに昔のワークステーションよりも優れたものとなっている。今後のハードウェア性能の進化を考えると、ソフトウェアのオーバーヘッドはハードウェア的に解決されると考えることが十分に可能だといえよう。
「重要なのは、リソースを生かして十分な機能を持つシステムを組むことです」(坂下氏)。
現在『式神』が動作するプラットフォームは、MIPS、StrongARM、SH-3など。バイナリはCompaq『iPAQ』シリーズ向けのものが提供されている。ベースとなるディストリビューションはfamiliarだ。
「提供しているバイナリは、非PCのGUI環境があるということのデモ用に用意しているものです。ほかに(株)日立超LSIシステムズが販売しているSH用のものがあります。それ以外のプラットフォームについては、移植性が高いのでお話があってから十分に対応できます」(田中氏)。