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『Linuxカーネルシンポジウム 2002 in Yokohama』レポート

2002年08月03日 17時23分更新

文● 編集部

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[新部氏] 大学生がソフトウェアをやっていても、それが認められない雰囲気があると思います。質の高いバグレポートはそれだけで論文1本分の価値があるように思うのですが、そういう風には大学では理解されていないでしょう。
[参加者] 日本のソフトウェアでも、Rubyのような国際競争力があるものもあるのではないでしょうか。
[参加者] 競争力のあるソフトウェアは、日本だと京都のものが多いように思われるのですが、何か理由があるのでしょうか。
[参加者] 京都だと、オムロンなどいくつかの企業が若い人向けに自由に使える環境を提供していたというのがありました。
[吉岡氏] OSDLのラボを若い人に自由に使ってもらうようにしましょうか。
[新部氏] 企業だと、非専門家がアサインされるという問題もあります。文系出身の何もわからない人がエンジニアを任されて、何もわかっていない人が来ることがあります。プログラマの価値が低いわけです。これは大型計算機時代から、ソフトウェアを部品化してきたことによる問題ではないかと思います。そういう文化的な背景をどうにかしないといけないのではないでしょうか。
[吉岡氏] プログラマの専門性が評価されていないんですよね。それだと新しい人もプログラマになりたいとは思わないわけです。職業としてのプログラマが成立しないわけです。
[参加者] 名刺の肩書きに「プログラマ」とは書けないですからね(笑)。「ソフトウェア開発者」と書いています。
[吉岡氏] 日本で2年後にエンジニアを増やすにはどうすればいいでしょうか?
[新部氏] 相撲の巡業のように、全国を回って新しいハッカーを発掘する「相撲モデル」は、実際にやってみてかなり有効な気がします。
[吉岡氏] 日本だと、大学でいくらソフトを書いても評価されないというのがあって、若いプログラマを育てる上で大学が1つの障壁になってしまっているのではないでしょうか。
[新部氏] そうですね。いいソフトを書く人が大学にいるのは、たまたまその人が大学にいるからというだけですから。
[参加者] みなさんにお伺いしたいのですが、ソフトウェアに関する書籍が色々出ていますけれど、そういった本が多く出るソフトは安定しているという風に言う人がいます。果たしてそれは本当なのでしょうか。そういった本が出ることで新しい開発者が増えることがあるのでしょうか。
[新部氏] 学生時代にこの本を読んで感動した、というのが、Lispの解説書だったりする世代が私たちだったりします(笑)。そういう意味で、本が出ることでプログラミングについて体系的に学ぶことができるというのはあると思います。また、デスクトップを使う人が少ないというのは、そういった本が出ていないからかも知れません。技術的な活動に入るための誘導のフェーズが必要でしょう。
[参加者] 簡単なサンプルプログラムがあるとうれしいですね。デバイスドライバ開発でも、必要な関数や、スクリプトが用意されているとうれしいです。
[参加者] 小中学校ですと、先生方が説明できるからという理由でWindowsが多く使われていて、Linuxは先生方が説明できないから、生徒達に触れる機会を与えられないというのが現状のようです。子供達は与えられたものを使うことしかできないわけで、かわいそうな気がします。
[参加者] 大学でも、プログラムを書けない学生が増えていることに危機感を持つ先生方が多くいます。今だと、Windowsを買ってくればプログラムが動くので、何かをしないといけないという環境が失われています。
[参加者] 私が以前住んでいた地域では、地域ぐるみでLinuxにさわることができる環境作りをしたり、催し物をしたりといったオープンソースに関わる取り組みを行なっていました。
[参加者] 書籍の話ですが、初心者向けの書籍というのは、学校の先生など教える人たちが導入するために重要なものだと思います。しかし、初心者向けの書籍が色々と出てはいますが、どれがいい本なのかわからないですよね。
[参加者] ステップバイステップで学ぶことができる書籍があればいいのではないでしょうか。
[新部氏] プログラミングをするときに、すべてを理解してからやっているわけではないですよね。すべてが計画的に行なわれるのはハックではないでしょう。本を通じて体系的に学ぶのと同時に、コードを前にした体系的でない学びも重要なことだと思います。
[参加者] 私は今横浜に住んでいるのですが、横浜に住むことにした理由は単純に、YLUGのカーネル読書会に参加したかったからなんです(笑)。こういった読書会のように、開発に参加するためのきっかけがあるのは大切なことだと思っています。
[参加者] 今はPCを買ってくれば何でもできる環境がそろっているので、自分で開発するきっかけがないですね。無理矢理にインセンティブを与えるにはそれを仕事にするしかない。
[宮原氏] ではみなさんも会社作りましょう(笑)。自分で自由に事業を行なうのはすごく面白いですよ。
[新部氏] 確かに、FSIJなどで実際に自分で業務をやって見る機会がありますが、非常に面白いですね。業務開発は別の「穴」です。私にとっての「未踏」ですね(笑)。

ここで、懇親会のためのビールとピザが到着し、ディスカッションは一度お開きとなった。全体として、特にまとまった結論があったわけではないが、フリーソフトウェアやオープンソース開発の現状や課題を明らかにする有意義なものであったといえよう。

OSDLジャパンラボでは、2カ月に1度くらいのペースでこのようなイベントを継続的に行なっていきたいとしている。フリーソフトウェア、オープンソース開発者達が直接顔を合わせて行なわれる議論の場として、密度の高い議論が期待できる。今後の動向にも注目したい。

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