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ザイリンクス、国内PLD市場での売り上げが初のトップに──CEO来日記者会見で

2002年07月24日 01時23分更新

文● 編集部 佐々木千之

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ザイリンクス(株)は23日、米ザイリンクス社のウィム・ロレンツ(Willem Roelandts)社長兼CEOの来日に合わせて記者会見を開催した。席上、川上誠代表取締役社長は第1四半期の国内PLD(※1)市場での売り上げが初めてトップになったと報告した。

※1 PLD(Programmable Logic Device):ASIC(特定用途向けIC)の一種で、ユーザーが設計した回路を電気的に書き込んで(プログラミング)、任意の機能を持ったICを作成できるデバイス。一度書き込んだ後で再プログラミングも可能。FPGA(Field Programmable Gate Array)ともいう。一般的に、FPGAでは回路情報を保持するメモリーにはSRAMが使われることが多く、CPLD(Complex PLD)ではFlashROMやEEPROMなど不揮発性メモリーが使われることが多い。

川上誠代表取締役社長川上誠代表取締役社長

記者会見ではロレンツ氏に先立ち、川上氏が日本時間23日付で発表した米ザイリンクスの2003会計年度第1四半期(2002年4~6月期)の会計報告に関連して日本市場の状況についてコメントした。

業績発表資料をもとにした、四半期ごとのザイリンクスとA社の売り上げ推移グラフ
業績発表資料をもとにした、四半期ごとのザイリンクスとA社の売り上げ推移グラフ

川上氏によると、2003会計年度第1四半期の日本市場での売り上げは3800万ドル(約44億6000万円)で、2002会計年度第4四半期(2002年1~3月期)の3000万ドル(約35億2000万円)から大きく伸びた。米ザイリンクス(世界市場)の売り上げに占める日本の割合は13%で、こちらも前四半期の11%からおよそ30%の伸びとなった。この背景には、一部顧客において3G携帯電話の基地局向けとして大きな需要があったためだという。

次に川上氏はザイリンクスと、PLD競業メーカーA社(※2)の売り上げを比較するグラフを示して、「今日のA社の発表によると、我々は初めてA社を抜いて日本でナンバー1のPLDサプライヤーになった」と述べた。川上氏は4月に行なった同様の記者会見で、「2003年度は年間売り上げを30%増やして国内ナンバー1FPGA/PLDサプライヤーになる」と宣言しており、ひとまず第1四半期は目標をクリアしたことになった。

※2 日本アルテラ(株)と推測される。

米ザイリンクス社のウィム・ロレンツ社長兼CEO
米ザイリンクス社のウィム・ロレンツ社長兼CEO。手に持っているのは150nmプロセスの300mmウエハーと130nmプロセスの200mmウエハー

続いて登壇したロレンツ氏は、まず半導体産業の現在の状況について触れ「半導体業界の顧客企業において設備投資が抑制されており、まだまだ厳しい状況が続いている。年初には、今年後半に回復基調になるという見方もあったが、現状では第2四半期(4~6月期)の回復状況は予想を下回っている。明るい兆候として、在庫が減り、半導体業界の設備稼働率も上がっているが、この回復基調が続くにはユーザー市場での回復が求められる」として、エンドマーケットの需要拡大が半導体産業回復の鍵という見方を示した。

ロレンツ氏が示した、半導体企業の売り上げとエンドマーケットの売り上げの推移グラフ
ロレンツ氏が示した、半導体企業の売り上げ(赤)とエンドマーケットの売り上げ(茶)の推移グラフ

次に米ザイリンクスのプロセス技術の進展状況について語った。「PLDはその性質上トランジスター数が多くコアが大きいため、ザイリンクスにとって新しい半導体プロセスの導入は非常に重要」という。ザイリンクスは現在、150nmプロセスを200mmおよび300mmウエハーによってフル生産しているほか、数ヵ月前に出荷開始したPLDとマイクロプロセッサーの混載製品である『Virtex-II Pro』では、米IBMマイクロエレクトロニクス社の130nmの9層low-k(低誘電体)プロセスを使っているという。9月には台湾UMCの130nmプロセスによるFPGAを出荷予定だとしている。さらに90nmプロセスについて、米IBMマイクロエレクトロニクスと台湾UMCの両社と開発中で、2003年前期には最初の製品が登場する見込みとしている。

200mmから300mmウエハーへの移行については「300mmにすることで2.7倍のチップが取れるが、コストは1.8倍に留まるため30~40%のコスト低減になる」として、2003年3月末までにチップ生産量の50%を300mmウエハーベースにし「業界で最も300mmウエハー依存度の高い企業になる」と述べた。300mmウエハーへの移行はすでに進めているが、まず150nmプロセス製品から始め、2003年には130nmプロセスのVirtex-II Proなども移行するとしている。

ASIC/PLDの地域別市場における、シェアランキング
ASIC/PLDの地域別市場における、シェアランキング

ロレンツ氏はまた、6月に発表した、米IBMマイクロエレクトロニクスのASIC/ASSP(Application Specific Standard Product)向けにPLDコアをライセンスすることを取り上げ、「これまでASICにPLDコアを搭載するという発表はいくつかあったが実現しなかった。ASICのリーダーであるIBMと、FPGA/PLDのリーダーであるザイリンクスが手を組んだことが重要だ。ASIC中でPLDを使うことは両テクノロジーのメリットを効果的に強化できる」と述べた。米IBMマイクロエレクトロニクスでは、“IBM Cu-08”と呼ぶ90nmプロセスで、1万~4万ゲートのPLDを搭載したチップを2003年後半に製品化する予定という。

2003会計年度第1四半期と、2002会計年度第4四半期の会計報告
2003会計年度第1四半期と、2002会計年度第4四半期の会計報告

ロレンツ氏は最後に業績について言及した。2000年から2001年にかけてザイリンクスはPLD市場において唯一シェアを拡大した企業で、最も最近の調査会社のデータによるとザイリンクス1社のシェアが50%を超えたことを紹介した。米ザイリンクスの業績は2002会計年度第4四半期から2003会計年度第1四半期にかけて6%伸びているが、全体に占める日本およびアジアパシフィック地域の売り上げの割合が1年前の15%から25%と急速に拡大したという。これは日本および東アジアの顧客でコンシューマー用デジタル機器や産業機器向けなどの需要が大きく伸びたためという。製品では数年前にこうした機器向けのPLD製品として発表した低コストPLD『Spartan』が売り上げを伸ばし、日本およびアジアパシフィック地域が、Spartanの世界全体の売り上げの40%を占めるまでになったとしている。

2002年6月期の地域別、エンドマーケット別の内訳
2002年6月期の地域別、エンドマーケット別の内訳。通信が61%となっているが、これは1年前の70~80%から大きく減少したのだという

今後期待する分野としては日本時間22日に発表した、自動車テレマティクス市場向け製品を挙げ「PLDを使うことで自動車メーカーは新しい技術をすぐに利用できるほか、機能をアップグレードすることも可能になる。こういったトレンドはこれからも続く」と述べて、PLD/FPGA製品の用途をますます広げると共に、業界のリーダーシップを取っていくという考えを示した。

最も伸びている市場は、“そのほか”と分類されるコンシューマー用デジタル機器や車載用製品だという
最も伸びている市場は、“そのほか”と分類されるコンシューマー用デジタル機器や車載用製品だという

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