このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

Zaurus SL-A300

Zaurus SL-A300

2002年09月18日 00時00分更新

文● アスキーPC Explorer編集部・小林 久

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

Zaurus SL-A300

シャープ

オープンプライス

この秋に10周年を向かえるシャープの「ザウルス」に、従来のコンセプトを一新する、薄型&コンパクトな1台が加わった。「世界ザウルス」を合言葉にして、この夏、日本から世界に向けてリリースされる「SL-A300」は、「Linux搭載」と「データビューアのコンセプト」という2つの新しさを備えた、新世代のザウルスだ。

これはザウルスではない

Zaurus MI-E1
写真1 ザウルスシリーズの新ラインナップとして登場した「SL-A300」。スライドキーボード搭載のMI-Eシリーズとは異なる、データビューアとしての性格が前面に押し出された1台だ。
 「SL-A300」(写真1)は、2000年12月の「MI-E1」(写真2)以来、ほぼ1年半ぶりに登場したザウルスシリーズの新ラインナップである。
 一見して「おやっ?」と思った。1台で完結した機能を提供する家電的な発想のためか、これまでのザウルスでも世代やモデル間の統一感は希薄で、ソフトのインターフェイスや外観などがガラリと変わってしまうことも珍しくなかった。しかし、SL-A300のシンプルな外観からこれまでのザウルスを思い起こすことは正直難しい。縦型の液晶に4つのボタンとカーソルを備えた本体デザインはむしろライバルのPalmシリーズを連想させるものだ。

 シャープは「MI-Eシリーズ」で、縦型スタイル&スライドキーボード搭載という新機軸を印象付けるとともに、高機能なWebブラウザとメーラ、MPEG-4やMP3の技術を利用した動画/音楽再生、キーボードやデジタルカメラの内蔵など、日本ならではニーズを汲み上げた「多機能」路線を進めてきた。
 しかし、SL-A300ではこれら「ザウルスの強み」をバッサリと切り捨てる冒険に出た。SL-A300が目指すのは、PIMやPCとの容易な連携をベースに考えた、シンプルな「データビューア」のコンセプトである。SL-A300は、MI-Eシリーズの象徴だったスライドキーボードを持たないばかりか、「通信」に必須のコンパクトフラッシュ(CF)スロットさえも外付けにしてしまった。



Zaurus MI-E1
写真2 スライド式キーボードとCFスロット内蔵(通信対応)で話題を集めた「MI-E1」。写真をクリックするとレビュー記事に移動します。
 シャープはSL-A300のコンセプトを“Sで始まる3つの英単語”で表現している。つまり、PC上の情報を簡潔な(Simple)方法で転送し、それを外出先でスムーズ(Smooth)に参照。身に着けて持ち歩く本体は極限まで軽く小さく(Small)する、ということだ。
 SL-A300は、後述する「ザウルスショット」「ザウルスドライブ」などPCとの連携機能を強化する一方で、それ以外の機能を思い切って省き、胸ポケットにもやすやすと入るコンパクトな本体を手に入れた。そのサイズはPalmよりも一回り、Pocket PCと比較した場合は二回り以上も小さい(写真3、4)。

Palm、Pocket PCとの比較 Palm、Pocket PCとの比較 Part.2
写真3、4 「SL-A300」(中央)と「CLIE PEG-T600C」(左)、「GENIO e550G」(右)。本体サイズの比較。Palm/Pocket PCで最小クラスの製品と比べても、SL-A300がかなりコンパクトなボディであることがわかる。

評価できるPCとの連携機能

スロット部 PCとの接続
写真5 本体の小型化を優先したため、標準で装備する拡張スロットはSDカードのみとなる。CFタイプの通信カードを接続する場合には、外付けのCF拡張ユニット「コミュニケーションアダプター CE-JC1」を別途購入する必要がある。写真6 PC本体とはUSBで接続可能。本体下部のシリアルコネクタに電源/USB接続用の分岐コネクタを介して接続する。また、オプションでクレードルも用意されている。

 SL-A300はPCのデータを持ち運ぶことを念頭に置いた「PC Companion」の一種である(写真5)。「ワイヤレス通信」や「マルチメディア」をさかんに強調する最近のPDAの傾向から、コンセプト的には一歩あと戻りした感があるが、それが改悪であるかというとそうではない。ザウルスのラインナップ全体から見れば、従来カバーし切れなかった分野をサポートするむしろ評価に値する1台である。

ザウルスショット
画面1 SL-A300の目玉ソフトである「ザウルスショット」は、ザウルスをPCに接続した状態で「PrintScrn」ボタンを押すだけで、簡単に表示している画面をザウルスに送れるというもの。
 特に注目したいのが、PC上の情報をザウルスに転送する「ザウルスショット」の機能である。ザウルスを接続した状態で、Webページや画像を表示して「PrintScrn」(テキストのみを転送する場合は、該当部分を選択して「F11」)を押すだけでいい。これはPCで表示させている画面をキャプチャして、SL-A300に転送するだけという極めて単純な仕組みなのだが、持ち歩きたい情報を見つけた際に「PrintScrn」ボタンを押す癖さえ付けておけば、あとは自然にザウルスに情報が蓄えられていくというのは、かなり快適だ。画面をキャプチャするだけなので、どんなファイル形式にも対応できるのもいい。
 さらに絶妙なのが、取り込んだ情報をSL-A300の予定表とリンクして保存できる「リンクカレンダー」の機能。転送したファイルは、あとから日付ごとに一覧表示できるので、仮にデータの整理を忘れても、いつごろ転送したかという記憶さえあれば、比較的容易に目的のファイルを見つけられる。

 SL-A300とPCとの接続はUSB経由(写真6)で行うが、データの転送にはTCP/IPを使用している。SL-A300ではSambaが動いており、PCからはファイルサーバとして見える。このLinuxザウルスならではの機能を利用したのが「ザウルスドライブ」である。ザウルスドライブの常駐アイコンをダブルクリックすると、フォルダが開き、SL-A300に保存されているフォルダやファイルの参照が可能で、PCからデータを移したいときはドラッグ&ドロップするだけでいい。



ザウルスカレンダー
画面2 いつファイルが送られたかは、ザウルスの「カレンダー」から日付ごとに表示できるので、ファイル整理が苦手なものぐさな人でも、保存した情報を見つけやすい。
 SL-A300には、JPEG/BMP/GIF/PNG形式に対応した画像ビューア「イメージノート」のほか、Word/Excelファイルの閲覧/編集が可能な「HancomMobileWord/Excel」が付属するので、これらの形式に対応したファイルは本体メモリやSDカードに直接コピーしてしまえばいい。
 さらに、PIM情報に関してもOutlookやPalm Desktopとスケジュール/アドレス情報を同期する「IntelliSync for Zaurus」が付属する。このIntelliSyncを利用すると、PalmデバイスやPocket PCともPIMデータの同期が可能になる。これは複数のPDAを使い分けているユーザーや乗り換えユーザーに便利な機能だろう。



前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン