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WIDEプロジェクト、“第54回IETF 横浜会議”の総括を発表

2002年07月20日 03時28分更新

文● 編集部 田口敏之

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WIDEプロジェクトは19日、報道関係者らを集め、14日から19日にかけて神奈川県・横浜市のパシフィコ横浜会議センターで開催された“第54回IETF 横浜会議(54th IETF Meeting)”の総括報告を行なった。

“IETF(Internet Engineering Task Force)”は、標準プロトコルの開発、選定を目的とするインターネット技術の標準化機関。非会員制で、自由参加でオープンな議論を行なっている。議論は主にメーリングリストで行なっており、年に3回フェイストゥフェイスの会議“IETF Meeting”を行なう。3回の会議のうち2回は米国で、1回は米国以外の国で開催する。IETF 横浜会議は、アジアで初めて行なわれたIETF会議となる。主催は、オペレーティングシステム技術と通信技術を基盤とした新しいコンピュータ環境の確立をめざす研究プロジェクト“WIDEプロジェクト(WIDE Project)”で、富士通(株)がスポンサーとなった。

村井氏
慶應義塾大学環境情報学部教授で、SFC研究会所長の村井純氏

報告は、慶應義塾大学環境情報学部教授で、SFC研究会所長の村井純氏が行なった。同氏は「IETF会議は今回で54回目になる。会議はずっと米国で開催していたが、ある時から3回のうち1回を米国以外でやろうということになった。しかし、技術だけを物差しに、集中した話し合いをするエンジニアの集団なので、社交性があまりなく、政治にも興味がない。というわけで、開催地の基準を作ることになり、インターネットドラフトなどをたくさん出しているエンジニアが多い国、標準化の開発や選定に貢献している国で開催することになった。日本にIETF会議を呼ぶなら、直接的な貢献がなければいけない、ということで努力してきた」

参加者数の割合
17日の時点での参加者数の割合。日本からの参加が最も多く約47%、次が米国から

「今回は、WG(ワーキンググループ)と、その予備軍である“BOF(Birds Of Feather)”、および全員参加のプレナリー、すべて合わせて102のセッションが行なわれた。参加者数は2002名。7月11日の時点で2001名だったので、実際にはもっと増えているはずだが、あえて2002名を公式な数字にした。17日の時点での国別の参加者の割合を見ると、日本からが最も多く、全体の約47%を占め、米国からが約28%となっている。そのほかアジアからの参加も多く、韓国からが約7%、中国からが約1%を占めている。韓国からの参加がこれだけ多いというのは、良い意味で驚き。日本でできるならうちもと、次のホストが韓国や中国になるかもしれない」

参加人数の推移
参加者数の推移。昨年の米国同時多発テロ事件以来、落ち込んでいた参加人数が今回で盛り返したという

「通例として、米国以外でのIETF会議は参加人数が減るものだが、今回は、昨年のテロ事件以降、がくんと人数を落としていたIETFが、リカバリーしたというのが1つの話題になっている。コミュニティーの長老たちは『パワフルIETFだ。充実感も出て、力が戻ってきている印象がある』と言っている。そういう印象は、私自身も受けた」

「内容は、主な話題として、特にIPv6の認識が高まった。そのステータスが再確認され、方向性と未来に対する期待が大きくなってきた。たくさんの項目が課題として出ていたが、その優先順位を決めた。またビジネスに直結している“Prefix Delegation”や“DNS server discovery”の重要性が認識された。“IPv6 MIB”は、IPv4と整合性が取れるように作り直すことになった。そして、やりかけの仕事を終わらせることに合意した」

「技術の方向性を参加者全員で議論する“IESG(Internet Engineering Streeting Group)”のプレナリーでは、IPv6のパネルディスカッションを行なった。そして、その出席者の5名のうち3名が日本人だった。IESGの顔役の方による『インターネットの次のプロトコルはIPv6ではない。IPv6は次ではなくて今のプロトコルだ』というアナウンスもあり、コミュニティーの中で、IPv6に対する先行きがはっきりしたと思う。また、ランチタイムを使って、WGの参加者に対して日本のIPv6を利用した事例の紹介を行なった。これが大変好評だった。プレナリーでの議論とプロダクトの認識、この2つで、全体の意志としてIPv6のステータスの認識が変化したのは大きかった」

「このほか、主なWGの活動として、“UDLR”のWGはマルチキャスト実験の報告を行なった。“IPsec”のWGは“IKE”を簡素化する“子供(Son of IKE)”が必要だということで合意し、選別スケジュールも定めた。“Mobileip”のWGは“Mobile IPv6”の認証方式にようやくめどがついた。“DHC”のWGは“Prefix Delegation Option”がおおまかな合意に至った」

「また“PKIX”のWGは日本からCA相互運用の実験報告を行なった。“Routing Protocol Secrity”のWGは何を対象にするかを確認した。“SEND”のWGは“Neighbor Discovery”に関する信用モデルの提案と、IPsecの問題に対する説明が行なわれた。また“VRRP”のWGは、認証がないとどういう危険があるか分析することから始めることに同意した。“FAX”のWGは“Content Negotiation (CONNEG)”のためのSMTPの拡張へは結論が出ず、一般のSMTPを含む広い範囲で、今後議論を行なうことになった」

「これまで、日本人のチェアマン(議長)が少ないという文句が出ていたが、UDLRとインターネットFAXのWGは日本人がチェアマンを務めている。このほかのWGも、日本人がチェアマンに内定しているところがある。これは日本にとって大変大きな意味がある」

「BOFの話題としては、インスタントメッセンジャーに関する標準化を提案している“Jabber”は議論が沸騰した。ネットワークを自動車やバスなどに導入してネットワークセグメントを丸ごと動かす“Network Mobility”は、技術の紹介と対象範囲の確認を行なった。NetWork MobilityはWGになる予定で、あるフランスの研究者がチェアマンになるのではないか、ということでリーダーシップを取っている。実は彼は日本に来ていて、Network Mobilityの研究をしている。日本にはNetWork Mobilityの研究の下地がある」

ワイヤレスLAN
今回の会議のために開発したという、ワイヤレスLANの利用状況をリアルタイムでモニタリングするツール。赤い丸の大きさが密集度を表わしている

「今回驚いたのは、参加者の約87%がワイヤレスLANのMACアドレスを持っていたこと。今回の会議のために開発したモニタリングツールを用いて会場内の状況を把握し、ステーションの再配分をダイナミックに行なったが、結果としてうまくいった。これだけの数が動く接続実験は世界中で誰もしたことがないのではないかと思う。今後これを利用して、人が集まるところは自動的に部屋の大きさを調節するといったようなことが可能になるかも知れない」

アンテナ
ホテルのVIPルームやスターバックスコーヒーの店内にインターネットコネクティビティーを提供したという指向性アンテナ

「またIETFに来た客は、インターネットがないと窒息するのだから、窒息しない環境を作らなければならなかった。ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテルや近所のホテルに願い出て、各フロアにワイヤレスLANの基地局を設置した。しかしVIPは、ホテル建物の端にあるスイートルームにいるので、基地局の信号が届かない。仕方ないので、指向性アンテナを利用したツールを開発し、会場からホテルに向かって、部屋を狙い打ちにしてコネクティビティーを提供した。またこれを利用して、スターバックスコーヒーの店内でもコネクティビティーを提供した。なお、この装置を台風の際にも維持したと紹介したところ、大変好評をいただいた」

「大変好評をいただいた」(村井氏)という、台風の中で指向性アンテナを守るスタッフの写真
「大変好評をいただいた」(村井氏)という、台風の中で指向性アンテナを守るスタッフの写真

「IETFはオープンだが、エンジニアによるストイックなコミュニティーなので、部外者は入っていきにくい。しかも公用語が英語となれば、日本人にとっては二重のハードルとなる。しかしそれでも立派に参加してくれたおかげで今回のIETFがある。日本でやるとなると気の使い方が違ってくる。アメリカ人もマイノリティーにならざるを得ない」

「アジアでというより、英語が通じないところでIETFを開催するのは初めて。言葉の問題というのは非常に大きい。日本のエンジニアにとっても参加しやすい環境を提供でき、日本人の発言者も多かった。いろいろな意見の調整ができるから、テーマトピックス的な流れとシンクロナイゼーションで相乗効果を上げたのではないかと思う。日本でIETFを行なった意義は十分にあった。これで日本のエンジニアが刺激されて、勇気と自信をもってここから先に行くきっかけになると思っている」と述べた。

参加賞
参加者用グッズであるTシャツとネックストラップと、記念品の扇子と手ぬぐい

なお、今回のIETF 横浜会議の参加者には、参加者用グッズとして、IETF 横浜会議のロゴが入ったTシャツとストラップが、Social Event(懇親会)の参加者には、扇子と手ぬぐいが記念品として配布された。

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