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ベリタス、“ディザスタ・リカバリー”の実態など関するセミナーを開催

2002年07月02日 02時42分更新

文● 編集部 田口敏之

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ベリタスソフトウェア(株)は6月28日、東京都・千代田区にある同社のデモンストレーションルームで、地震や火災などの災害から重要な企業データを保護するための“ディザスタ・リカバリー(DR)”に対する欧米企業の取り組みの実態や、同社製品の導入事例、バックアップとリカバリー技術の動向などに関するセミナーを開催した。

米ベリタスソフトウェア社H&Aプロダクト・マーケティングディレクターのマーティン・ウォード(Martin Ward)氏
米ベリタスソフトウェア社H&Aプロダクト・マーケティングディレクターのマーティ・ウォード(Martin Ward)氏

最初に、米ベリタスソフトウェア社H&Aプロダクト・マーケティングディレクターのマーティン・ウォード(Martin Ward)氏が、米国とアジア、およびヨーロッパの企業の、DRに対する取り組みの実態について、調査結果を紹介した。同氏は「バックアップの頻度は、米国とアジアでは約65%の企業が1週間に1度と答えた。これは、1週間分ならばデータを失っても構わないということになる。バックアップのためのテープライブラリーを格納している施設とメインの施設との距離は、約79%の企業が20マイル(約32.2km)と答えている。これは災害や障害の種類によって良いとも悪いとも言える。例えば9月11日のテロ事件のような類の災害ならば、20マイルの圏内でも助かる。しかし地震や洪水などの被害の場合は、おそらくメインの施設もバックアップの施設も被害を被るだろう」

システムの中断の許容時間は数時間以内
災害や障害が起こった場合に、システムの中断はどの程度まで許容できるかについては、78%の企業が数時間以上と答えた

「また、災害や障害が起こった場合に、システムの中断はどの程度まで許容できるかについては、78%の企業が数時間以上と答えた。逆に言えば、32%しかシステム中断に対応するシステムを用意していない。一方、復旧側のサイトでどの程度業務を行なえるかについては、約61%の企業が数日間しか持たないと答えている。業務が行なえない間に、事業が壊滅的な被害を受ける可能性は十分ある。例えば飛行機のチケットの予約業務などに携わっている企業は、数時間分のデータが失われただけでも被害は甚大なものになる」

DRの計画を持っていない企業の多い国
全体の5分の1近い企業が、まったくDRのための計画を持っていない

「一方ヨーロッパでは、全体の5分の1近い企業が、まったくDRのための計画を持っていないことが分かった。残りの5分の4の企業も、約4割はDRの計画の見直しを行なっていないという。これは、計画を持っていないのに等しい。これにより、米国やアジアの企業に比べて、ヨーロッパの企業では、データに対する捉え方が違うのではないか。建物や資産のように大事なものとしてデータを扱っていないのではないかという予測が得られた」

ほとんどの企業が、深刻な被害を受けてから、DRの計画を作成したり見直したりしている
ほとんどの企業が、深刻な被害を受けてから、DRの計画を作成したり見直したりしている

「これらの調査で、企業におけるDRに対する期待と実際の努力の間には、非常に大きなギャップがあることが分かった。ほとんどの企業が、深刻な被害を受けてから、DRの計画を作成したり見直したりしている。私どもが顧客に勧めているのは、まずビジネス上における要件を定義し、現実に行なっている災害対策とのギャップを埋めること。我々はそのために、非常に幅広い方法を提供している。まずは四半期ごとに計画を見直すことをお勧めしている」と述べた。

データ・アベイラビリティ・プリンシパル・エンジニアのエバン・マーカス(Evan Marcus)氏
データ・アベイラビリティ・プリンシパル・エンジニアのエバン・マーカス(Evan Marcus)氏

次に、データ・アベイラビリティ・プリンシパル・エンジニアのエバン・マーカス(Evan Marcus)氏が、同社の製品を用いた米State Street Bank社の成功例の紹介を行なった。同氏は「State Street Bank社は機関投資家向けの銀行。銀行業務のほかに、情報もお金と同じぐらい重要な資産として取り扱っている。弊社の製品を導入する前は、ベンダー固有のハードウェアに基づいたシステムを用いていた。これは非常に高価でコストがかかり、スピードの遅さにも辟易していた。従って弊社のシステムを導入する際の課題は、ハードウェアに頼らず、高速で信頼性の高いレプリケーションを可能にすることだった」

「導入を行なう際には、5つの事項が求められた。パフォーマンス、コスト、既存ハードウェアとの互換性、システム全体の簡易性、そして質の高いサポート。弊社はこれに答え、従来バックアップを行なう際に、30~40%低下していたパフォーマンスを、8~9%に止めることに成功した。コストも、新しいハードウェアの購入の必要がないため、100万ドル(約1億2000万円)の削減となった。必要なトレーニングも1週間未満で済んだ」と語った。

プロダクトマーケティングマネージャーのマイク・アダムズ(Mike Adams)氏
プロダクトマーケティングマネージャーのマイク・アダムズ(Mike Adams)氏

そして最後に、プロダクトマーケティングマネージャーのマイク・アダムズ(Mike Adams)氏が、バックアップ技術とリカバリー技術の動向について説明した。同氏によれば「現時点での課題は、企業の規模が大きくなるにつれてバックアップしなければならないデータの量も増加するが、予算は多くならないし、そのための人的リソースも増えないということ。またシステムの複雑さや、複数の拠点にある異なるシステムのバックアップをいかにして行なうかという問題もある」

SAN
複数のサーバーでテープライブラリーを共有するSANの概念図

「現在主流となっているバックアップの手法には、NAS(Network Attached Storage)やSAN(Storage Area Network)などがある。NASは複数の方法でバックアップを行なえることや、比較的システムが分かりやすいことがメリットだが、NDMP(Network Data Management Protocol)の転送能力と拡張性の低さがデメリットとなっている。SANは複数のサーバーでテープライブラリーを共有し、異機種間接続の環境を構築できるというメリットがあるが、システムが複雑でわかりにくく、初期導入コストが高いというデメリットがある」

ポイント・イン・タイム・コピー
ポイント・イン・タイム・コピーのハードウェアを用いる手法。特定の時点のデータイメージを複製する

「今後の方向性としては、バックアップの実行中でも、ユーザーがデータベースにアクセスできることが望ましい。このためにはエージェントソフトウェアを利用する。またSANなどで、特定した時点のデータイメージを複製してバックアップする“ポイント・イン・タイム・コピー”という手法もある。ソフトウェアと用いる手法とハードウェアを用いる手法があり、どちらにもメリットとデメリットがある。ソフトウェアを用いる手法では、少量のデータをコピーするためスピーディーにバックアップを行なえるが、サーバーに負荷がかかってしまう。ハードウェアを用いる手法はサーバーに影響を与えないが、多量のディスクが必要になってしまう。そこでエージェントソフトウェアとポイント・イン・タイム・コピーを組み合わせれば、サーバーに負荷をかけず順調にバックアップを行なえる」

ポイント・イン・タイム・コピーとエージェントソフトウェアの併用
ポイント・イン・タイム・コピーとエージェントソフトウェアの併用

「データによっては、非常にクリティカルで迅速なリカバリーが必要なものもあれば、そうでないものもある。これに対応し、今後は自動的に最適な手法を選択できるツールが出てくるのではないかと思う」と締めくくった。

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