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「スーパークリエイター=ハッカー」の世界 -『ITX 2002 Summer』レポート

2002年06月29日 00時00分更新

文● 阿蘇直樹

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ITX 2002 Summer受け付け

情報処理振興事業協会(以下、IPA)が経済産業省(以下、経産省)などの支援を受けて行なっている、『未踏ソフトウェア創造事業』の成果発表会『ITX 2002 Summer』が6月28日から29日の日程で行なわれた。

開会式では、最初にIPA理事長である村岡茂生氏が、IPAの概要や『未踏ソフトウェア事業』について紹介した。



IPA理事長 村岡茂生氏
情報処理振興事業協会 理事長 村岡茂生氏

IPAは、ソフトウェア開発や情報セキュリティ技術に関する情報提供や技術開発、研究、人材育成などを行なう機関。『未踏ソフトウェア創造事業』は、「全国に埋もれているスーパークリエイター、天才クリエイターを発掘する」事業で、5年で100人のスーパークリエイター発掘を目指すとした。

同事業がこれまで行なわれてきた国家による支援事業と異なる特徴として、個人を対象にし資金援助を行なうこと、自由な開発環境を提供している点を挙げている。これまで行なわれてきた事業の多くは、企業や研究機関を対象に資金援助を行ない、資金の使い道や開発方法などについてさまざまな制約が設けられていたが、『未踏ソフトウェア開発事業』ではプロジェクトマネージャ(以下、PM)を設け、プロジェクトの選定や指導、助言を一任するシステムとすることで、開発者が個性を発揮することが可能だという。

これまでの成果として、2年間で126件のプロジェクトを扱い、17人のスーパークリエイターを輩出、74人が学術、ビジネスの分野で活躍するようになり、25件の起業が行なわれたという。今年の公募はすでに締め切られているが、11人のPMに新たにAlan Key氏が加わっていることなどが報告された。

また、今年から新たに始められた事業として『未踏ユース』を開始することが発表された。このプロジェクトは学生など若手のエンジニアやプログラマの発掘を目指すもので、1件あたりの予算には300万円の上限が設けられるものとなるという。

村岡氏は、『ITX 2002 Summer』は「未踏ソフトウェア創造事業の成果を世に問うもの」であるとし、今後の『未踏ソフトウェア創造事業』にも多くの応募を期待していると語った。

引き続き、経産省商務情報政策局審議官である吉海正憲氏が挨拶した。

経産省商務情報政策局審議官 吉海正憲氏
経済産業省 商務情報政策局 審議官 吉海正憲氏

吉海氏によると、「情報通信の世界はステージの変化の時」であり、技術革新によって情報通信技術が“Ubiquitous”(どこにでもあるもの)になってきているという。それに伴い、ソフトウェアは社会を構成する一要素であるという認識が広まっており、社会的な重要度が増しているという認識を示した。

その上で、政府が先頃発表した『e-Japan政策』の重点項目にソフトウェア振興策が盛り込まれたことを挙げ、『ITX 2002 Summer』は政策目標達成のために重要であると位置づけた。また、ソフトウェア産業は10兆円規模の産業にまで成長しているが、クリエイティブなものがこれまでに生み出されているわけではないということを指摘し、「ソフトウェアの価値を社会に知らしめてほしい」と語った。そして『未踏ソフトウェア創造事業』のモデルがソフトウェアの価値を国民で共有するというモデルであると語り、そのためにIPAが産学官を結びつけることを期待していると挨拶した。

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