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アリエル・ネットワーク、P2P技術を使った企業向け情報共有ツール『ArielAirOne』を開発

2002年06月21日 23時24分更新

文● 編集部 佐々木千之

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アリエル・ネットワーク(株)は20日、都内で記者発表会を開催し、ピア・ツー・ピア(P2P)技術を使った企業向けの情報共有ツール『ArielAirOne(アリエルエアワン)』を開発したと発表した。9月に1本1万円程度で発売の予定。クライアント/サーバー型のグループウェアと比べサーバーが不要で、ソフトウェア料金のみで利用できるという。

アリエル・ネットワーク代表取締役社長の栗村信一郎氏
アリエル・ネットワーク代表取締役社長の栗村信一郎氏。同社設立以前はロータス(株)で常務取締役開発本部長を務めていた

アリエル・ネットワークは2001年4月に、P2P技術に注目していた技術者5人が設立したベンチャー企業で、P2P技術を基にしたコラボレーションソフトウェア分野で世界のトップベンダーになることを目指しているという。

『ArielAirOne』

ArielAirOneは、アリエル・ネットワークが独自に開発したP2Pフレームワーク技術“SOMAnet(ソーマネット)”(後述)を基盤としたソフトウェア。ポータル、スケジュール管理、プロジェクト管理、文書管理の各機能を持つ4種類のアプリケーションコンポーネントからなる。ポータルがArielAirOneの中核でほかの3つのコンポーネントの管理、ユーザーからのリクエストをコンポーネントに対して割り振る働きを持つ。スケジュール管理、プロジェクト管理、文書管理の各アプリケーションはいわゆるグループウェアと同様の機能を提供する。

『ArielAirOne』のポータル画面
『ArielAirOne』のポータル画面

ArielAirOneでは、ユーザーがそれぞれのパソコンにインストールして、情報共有を行なうユーザーとして登録すると、ユーザー同士でのファイルやドキュメント共有が可能になる。サーバー/クライアント型の一般的なグループウェアと異なり、サーバーおよびサーバー管理者の作業が不要となる。このため、導入時のコストが低く抑えられるほか、ユーザーを増やす際も単にソフトウェアを購入してインストールするだけですむとしている。

なお、ArielAirOneのユーザーインターフェースはウェブ形式となっている。ArielAirOneをインストールすると各パソコンにウェブサーバーが立ち上がり、ユーザーはそのウェブサーバーに対してウェブブラウザーでアクセスする、という形になる。情報共有するグループは各ユーザーが自由に設定できる。オフラインでの作業にも対応しており、共有しているファイルに対してオフラインで変更を加えると、オンラインになった時点でほかのユーザーにも変更部分が反映されるといった動作も可能という。

今後のロードマップ
今後のロードマップ

ArielAirOneの対応OSはWindows Me/2000/XP、GNU/LinuxでInternet Explorer 5.0以降、Netscape Navigator 6.2以降、Mozilla 1.0以降のウェブブラウザーが必要。9月に同社のウェブサイトを通じてダウンロード販売を開始(1万円前後)するが、それに先だってベータ版を公開する予定という。また、システム管理者向けの管理ツールなどを含めた大規模システム対応版も予定しており、2003年1月にダウンロード販売を開始するとしている。

“SOMAnet”

SOMAnetは“Self Organization MAp net”を意味しており、“遊休資産である高性能パソコン、高速ネットワークの活用”、“(更新や移動がよく行なわれる)動的リソースの発見と交換(共有)の実現”を目指して開発したものという。同社の説明によるとP2Pシステムには、『Napster(ナップスター)』に代表されるような、リソースのインデックスを持つサーバーにまずアクセスし、その後はP2Pによる通信を行なう“ハイブリッドP2P”と、『Gnutella(グヌーテラ)』に代表される、中心となるサーバーが存在しない完全分散型の“ピュアP2P”がある。

SOMAnetとArielAirOneの位置づけ
SOMAnetとArielAirOneの位置づけ

SOMAnetはGnutellaと同様のピュアP2Pタイプで、各ノード(パソコン)にデータをキャッシュして検索時に高速に応答できるような工夫や、キャッシュの履歴による検索ルーティングの効率化といった工夫を行なっているという。このほか、HTTPしか通さないようなファイアーウォールを経由してのアクセスや、SSL、PKIによる通信の暗号化、LDAPによる階層型ユーザー管理にも対応しているという。

SOMAnetについて説明したアリエル・ネットワーク取締役開発本部長の井上誠一郎氏
SOMAnetについて説明したアリエル・ネットワーク取締役開発本部長の井上誠一郎氏

アリエル・ネットワークによると、今回はArielAirOneのみの発表だが、SOMAnetはさまざまなアプリケーションをSOMAnet上に構築するためのAPIを提供しており、今後はビデオチャットアプリケーションも提供予定としている。

P2P技術を使った企業向けコラボレーションソフトウェアとしては、『Lotus Notes』開発者が設立した米Groove Networks社が2001年に発表した『Groove』がある。アリエル・ネットワークでは、Grooveは米国産ソフトのため、日本企業のビジネススタイルに合わないとしている。同社では2003年3月末で1億円、2005年3月末で10億円、2006年3月末で18億円の売り上げを見込むとしており、これから立ち上がるであろうP2Pベースの企業向けソフト分野で先行してイニシアティブをとる考えだ。

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