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米IBM、1平方インチに1テラビットを記録するナノテクノロジー“Millipede”を発表

2002年06月11日 21時28分更新

文● 編集部

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日本アイ・ビー・エム(株)は11日、米IBMが現地時間の11日に、研究プロジェクト“Millipede(コードネーム:ミリピード、ヤスデの意)”において、6.45cm2(1平方インチ)あたり1兆bit(1Tbit/テラビット)のデータ記録密度が得られたと発表した。これは、高密度磁気記録技術を利用したものの約20倍の記録密度となり、約2500万ページぶんの書籍データを切手1枚ぶんのサイズに記録できる密度になるという。

“カンチレバー”
“カンチレバー”は、2次元配列された厚さ0.5μm、長さ70μmのU字型のシリコン製アーム。個々のカンチレバーの先端には長さ2μm未満の下向きの先端部(チップ)を持つ

“Millipede”は、ナノスケールの鋭利な先端部を持つ“カンチレバー”と呼ばれるアーム型の装置を何千個も並べ、薄いプラスチックフィルムに個々のビットを表わすマークとなる“微細な穴”を開ける手法を利用したもの。コンピューター草創期のデータ処理技術である“パンチ・カード”をナノテク化したものに相当するとしている。

カンチレバーは、マルチプレックス方式のドライバーを利用して個別にアクセスでき、並列動作が可能となっている。カンチレバーの下には、電磁作動で水平方向(x方向とy方向)に移動できるシリコン製の“テーブル”があり、カンチレバー先端に付けられたシリコンチップを利用して、テーブル表面に形成されている厚さ数nmのポリマーフィルムに対して書き込みと読み出しを行なう。個々のカンチレバーは100μm四方の記録領域を持つという。ビットの書き込みは、カンチレバー内の抵抗器を利用して約400度まで熱し、シリコンチップでポリマーにマークを付けることで行なう。読み出しは、抵抗器の温度をポリマーが軟化しない温度(約300度)に設定し、ポリマーフィルムに押しつける。ポリマーにビットが記録されている場合は、シリコンチップが刻み目の中に落ち込むため、熱がポリマーを通して逃げ、抵抗器が冷えることで変化する抵抗値を測定できる。データの上書きは、オフセットした位置にシリコンチップで一連の穴を作ることで行なう。穴が重なり合うために、穴の縁で古い穴がふさがれ、消去されることになる。書き換え可能回数は10万回を超えるとしている。

現時点では、カンチレバー先端でのデータ転送速度は、数kbps程度(配列全体で数Mbps程度)。レバーを高速で移動する方式を導入すれば1~2Mbpsのデータ転送速度を得ることが可能という。消費電力はデータ転送速度に依存し、数Mbpsで動作させた場合、約100mW程度になるという。

Millipedeチップ
Millipedeチップ。同社がデモに使ったのは、1024個のチップを3mm四方に集積したもの。アーム型装置の先端部を利用して、アーム型の装置の先端部は、直径10nm(100万分の1mm)の“微細な穴(マーク)”を開けることができる。Millipedeのサイズは7×14mm

同社では、7×7mmの範囲に対して同時に作動する4096本(64×64)のアームを備えたプロトタイプが2003年初めに完成する予定としており、これによりフラッシュメモリーと同じ大きさに10~15GBのデータを記録できるようになるとしている。

“Millipede”の概念
“Millipede”の概念。シリコンの“テーブル”に有機物の薄膜(黄色の部分)を形成し、テーブルをx方向、y方向に移動させ、縦横に並べられたカンチレバーの先のシリコンチップ(緑色の部分)で読み書きを行なう。個々のチップのアドレッシングにはマルチプレックスドライバー(赤色の部分)を利用する

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