マイクロソフト(株)は11日、Xboxの最新情報を関係者向けに紹介するイベント“Xbox Conference 2002 Summer”を都内で開催、5月に米国で行なわれたイベント“Electronic Entertainment Expo(E3)”で発表したXbox用オンラインゲーミングサービス“Xbox Live”の日本における展開について説明した。
Xbox Conferenceで挨拶を行なうマイクロソフト常務取締役Xbox事業本部長の大浦博久氏。Xboxの販売台数については、相変わらずワールドワイドの数字(6月末までで350万~400万台)を公表するのみ |
Xbox Liveは、北米、日本、欧州で今秋にスタートするXbox向けオンラインゲーミングサービス。ブロードバンドによる常時接続環境に特化したサービスで、ISPに依存せず、ユーザーは既存のブロードバンド接続環境をそのまま利用できるのが特徴。Xbox本体とブロードバンド環境、および今秋発売の『Xbox Liveスタータキット』(後述)があれば、すぐにXboxでオンラインゲームを楽しめるという。
Xbox Liveでは、ユーザーはすべてのゲームを通じて共通の自分専用ID(ゲーマータグ)を利用できる。また、オンライン上で友人にゲームへ参加するよう招待できる“フレンドリスト”、Xbox Liveに接続中のユーザーの中から遊び相手を探し出す“プレイヤーサーチ”といった機能も用意されている。さらに、最新のゲームシナリオやキャラクター、ミッション、データなどのコンテンツをXbox内蔵のハードディスクへダウンロードできる“コンテンツダウンロードサービス”も提供される。
ゲーム開発者側のメリットとしては、Xbox Liveにおけるデータセンター運営やゲームサーバーのホスティング、カスタマーサポートや課金サービス、認証サービスなどをすべてマイクロソフト側が行なうため、開発者はゲームコンテンツの制作に専念できるという。「他社のオンラインサービス計画は、日本と他国では内容が異なっている。われわれのビジネスモデルは日本も北米も欧州も同じ。単一アプリケーションでこれらの3地域をカバーできる」(マイクロソフトXbox事業本部オンラインサービス統括部統括部長の小出雅弘氏)。
また、Xbox Liveでのプレイヤー間のコミュニケーションは、主にマイク付きヘッドセット『Xboxボイスコミュニケータ』を通じてのボイスチャットで行なわれる。Xbox Liveのゲームはすべてボイスチャットに対応しており、仲間や対戦相手と声でやり取りできるという。
『Xbox Liveスタータキット』は、Xbox Liveのサービス利用ライセンス(12ヵ月間)、すぐに遊べるパックインゲーム、Xboxボイスコミュニケータをセットにしたパッケージで、Xbox Liveのサービス開始後1年間限定で販売される。なお、日本向けのXbox Libeスタータキットには、(株)セガの『ファンタシースターオンライン(仮称)』(以下、PSO)を同梱する。Xbox Liveスタータキットは今秋発売で、価格は6800円。
今秋発売の『Xbox Liveスタータキット』のイメージ |
マイクロソフトは現在、Xbox Liveのサービス開始に向けて、主要DSLキャリアやCATVオペレーターと接続検証を行なっており、主要ISPと協力して6月下旬にテクニカルベータを実施し、今夏には一般ユーザー向けのベータプログラムを開始するという。日本での募集要項については後日発表するとしている。
会場では、(株)ソニックチーム代表取締役社長の中裕司氏と、マイクロソフト小出氏によるボイスチャットを利用したPSOのデモが行なわれた。
中氏は「戦闘中で手が離せないときもコミュニケーションをとれるというのは画期的」と説明。また、知らない人同士でも気軽に話せるようボイスエフェクト機能を導入し、自分の声を男性の声や女性の声、ロボットの声などに変更できるほか、パラメーターを調整することでさまざまな声色を作れるようにするという。
ボイスチャットを使ってPSOのデモを行なうソニックチーム中氏(右)とマイクロソフト小出氏(左) (C)SONICTEAM/SEGA,2000,2002 |
マイクロソフトは、Xbox Liveのサービス開始時にリリースするXbox Live対応タイトルとして、PSOのほか、(株)フロム・ソフトウェアの『サウザンドランド』、マイクロソフトの『Whacked!(仮称)』を挙げた。また、米国で発表されたXbox Live対応タイトルのうち『MechAssault』と『Midtown Madness 3』を日本向けにも発売するという。
また、日本国内の開発チームが、Xbox Live対応タイトルとしてオンラインRPGとオンラインフィッシングゲームを現在開発中であり、既存の『HALO』、『Project Gotham』、『天空』、『RalliSport Challenge』といったオリジナルタイトルの将来バージョンについてもXbox Live対応を検討していくという。なお、現時点で、Xbox Live対応タイトルの開発を表明している日本国内の開発会社は39社、開発タイトル数は47タイトルとなっている。
さらに同社は、会場にゲーム開発会社の代表者を招き、今後発売されるXboxタイトルを紹介した。まず、新たに開発表明されたセガの『SPIKEOUT X-TREME(仮称)』について、開発元である(株)アミューズメントヴィジョン代表取締役社長の名越稔洋氏は、「SPIKEOUTは反骨精神に溢れた高度なファイティングゲーム。Xboxのマシンパワーを借りることで、思い通りのビジョンを再現できる自信ができた」とコメントした。なお、このSPIKEOUTについてもXbox Liveへの対応が決定しているという。
(株)アトラスのRPG『真・女神転生 NINE』。今秋発売予定で価格は未定。画面はタクティカル戦闘シーン (C)ATLUS 2002 |
(株)コーエーのアクションゲーム『紅の海 Crimson Sea』。今秋発売で予価6800円。「Xboxはグラフィックス性能もさることながら、演算能力も高い。現実を越えたリアルさ、迫力を表現したい」(コーエー紅の海プロデューサーの杉山芳樹氏、同ディレクターの小堤啓史氏)。画面は主人公“ショウ”の特殊攻撃シーン (C)2002 KOEI Co.,Ltd. |
会場で挨拶を行なったマイクロソフト常務取締役Xbox事業本部長の大浦博久氏は、「Xboxの3万4800円という価格が大きな障壁だった。5月22日より価格を2万4800円に下げたことで、同じ土俵に立ち、一般ユーザーにXboxの魅力を伝えられると感じている。Xboxはブロードバンドオンリーという大きな賭けに出たが、それは見事に当たりブロードバンド環境が整ってきた。まもなくXbox Liveがスタートする。われわれは今後もチャレンジを続けていく」
「マイクロソフトは無敵の巨人のように思われているが、これまですべてにおいてNo.1だったわけではない。表計算ソフトではロータス1-2-3に、ワープロソフトではWord Perfectや一太郎に、グラフィックスソフトではMacintoshに圧倒的なシェアを取られていた。しかしすべて逆転していった。マイクロソフトは1度やると決めたらものすごくしつこい会社。今後も徹底的にやっていく」と語った。
また、E3でSONY COMPUTER ENTERTAINMENT AMERICA側が“コンソール戦争は終わった”と発言したことに対しては、「終わればいいが(笑)。マイクロソフトは社風として1番になるのが哲学。われわれは止めない気でいる。引き続きチャレンジャーとしていろいろなことをやっていく」とコメントした。
大浦氏曰く、マイクロソフトの“勝ち”の定義は「現状でゲーム業界が持つパイを取り合うのではなく、インターネットがきっかけでパソコンのパイが増えたように、Xbox Liveをトリガーに市場を大きくし、新たに増えたユーザーを取ること」。ちなみに“負け”の定義をたずねると、「“負ける”という言葉はマイクロソフトの辞書にはない」。