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マイクロソフト、次期Windows Media技術“Corona”のデモを初めて日本で披露

2002年06月07日 02時09分更新

文● 編集部 佐々木千之

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CoronaのBeta版は夏の終わりまでに登場。正式リリースは年内予定

古川氏に続いて登壇したフェスター氏は、ストリーミング技術について、ナローバンド対応であまり品質の良くなかった第1世代、ブロードバンドに対応し品質が高まった第2世代、さらに新機能を持ちブロードバンドビジネスが可能な第3世代に分け、第3世代の最初の製品がCoronaであると説明した。フェスター氏によるとCoronaは、前バージョンである“Windows Media 8”から、Windows Mediaサーバー、Widnows Media Player、Widnows Media A/V Codec、Windows Mediaエンコーダー、Windows Media SDKといったコンポーネントすべてをバージョンアップする。

米マイクロソフトのWindowsデジタルメディア事業部ジェネラルマネージャのデイブ・フェスター氏米マイクロソフトのWindowsデジタルメディア事業部ジェネラルマネージャのデイブ・フェスター氏
Coronaを構成するソフトウェア群
Coronaを構成するソフトウェア群

フェスター氏はCoronaの映像/音楽配信関連の新しい機能として、“Instant-on”“Always-on”のデモを行なった。この2つの機能は、新しいWindows MediaサーバーとWindows Media Playerの組み合わせで利用できる機能で、利用できる帯域やパソコンのメモリーなどに応じてダイナミックに動作する新しいキャッシュ/バッファリング技術に基づいている。

Instant-on、Always-onはストリーミングファイルの扱いをテレビのチャンネル並みにする
Instant-on、Always-onはストリーミングファイルの扱いをテレビのチャンネル並みにする

これまでのストリーミング配信では、再生ボタンを押してから最初の数秒~数十秒はファイルのバッファリングを行なうため、実際の再生が始まるまでしばらく待つ必要があった。CoronaのInstant-onでは、再生ボタンを押すとほとんど即時に再生が始まるうえ、ストリーミングファイルの途中からでも、すぐに再生される。デモンストレーションでは従来のWMT(Windows 2000 Server+Windows Media Player)とCorona(Windows .NET Server+Windows Media Player)で250kbpsの音声付き映像を再生した。従来のWMTが再生まで8~10秒ほどかかったのに対し、Coronaでは一瞬のラグ程度(約0.1~0.2秒)で再生が始まった。Coronaでは複数のコンテンツを次々に切り替えて再生するデモも行なわれたが、こちらもすぐに再生され、TVのチャンネルを切り替えるような感覚で操作できていた。

Instant-onのデモ。右側のCoronaは再生ボタンを押すとすぐに再生が始まった
Instant-onのデモ。右側のCoronaは再生ボタンを押すとすぐに再生が始まった

Always-onのデモは、画像再生中にEthernetケーブルを抜いてしまうというもので、従来のWMTがすぐにエラーとなって、画像が泊まってしまったのに対し、Coronaでは何事もなく再生が継続していた。これはストリーミング再生中に、ネットワーク帯域やパソコンのメモリー/HDDの状況に余裕があればどんどんデータをプッシュしてキャッシングする設計となっているためという。また再生が中断後に再び接続した場合でも、従来のWMTでは最初から再生となるが、Coronaは中断した時点からすぐに再生が始まるという。

Always-onのデモ。右下にネットワーク接続が切れたという警告が出ているが、右側のCoronaは画像の再生を続けている
Always-onのデモ。右下にネットワーク接続が切れたという警告が出ているが、右側のCoronaは画像の再生を続けている

ストリーミングファイルの途中からでもすぐに再生できるという特徴について、新しい技術を開発したことによるものだとしたが、特許申請中ということで詳しくは明かさなかった。

Coronaは映像/音声ともに品質が向上
Coronaは映像/音声ともに品質が向上

また品質に関しては、音声、映像ともに圧縮率が20%向上した。このうち音声では“Windows Media Audio Professionalコーデック”によって24bit/96kHz(128k~768kbps)、5.1chといった高品位ステレオ、マルチチャンネル対応となった。マルチチャンネルの対応では5.1chの出力を持つサウンドカードが必要となる。映像では1280×720ピクセル(秒24コマ)という、HDTVに匹敵する映像の再生が可能になった。パソコンのパフォーマンスによっては最大1920×1080ピクセルの再生も可能としている。1GHzクラスのCPUと256MBのメモリーのパソコンであれば、1280×720ピクセルの映像を再生できるというが、Coronaに対応したグラフィックスアクセラレーターチップを利用することで、より低い性能のCPUであっても再生できるとしている。

Coronaではデジタルハイビジョン並みの映像が扱える
Coronaではデジタルハイビジョン並みの映像が扱える

発表会ではウォルト・ディズニー・ピクチャーズの『ダイナソー』をCoronaでエンコードした映像のデモが行なわれたほか、Streaming Media Japan 2002の基調講演中では、Coronaでエンコードした2Mbpsの映像とMPEG-2による6Mbpsの映像(DVD相当)とを比較するデモも行なった。注意して見れば、色味や細部の解像度で若干の差異はあるものの、マイクロソフトでは“ほぼ同等の映像品質が得られる”としており、「6Mbpsがきちんと送られる回線はなかなか難しいが、2Mbpsならば現実的だ」(古川氏)などと述べた。

2MbpsのCoronaと6MbpsのMPEG-4との比較
2MbpsのCoronaと6MbpsのMPEG-4との比較。このほかマイクロソフトブースでは750kbpsと1.5Mbpsでの比較も行なっていた

Coronaはこれまで同様に、Windows Media PlayerやSDKなどは無償での提供となる。Corona対応サーバーはWindows .NET Serverに搭載する予定で、現在提供中のWindows .NET ServerのBeta版にも含まれている(Beta版)ほか、Windows Media Playerなどは夏の終わりまでにBeta版をリリースする予定。正式バージョンも年内には出荷したいとしている。

「CoronaはQuickTimeやRealよりも優れている」

発表会後の質疑応答では、先日米アップルコンピュータ社が発表した『QuickTime(Public Preview)』や米リアルネットワークス社の『Real Player』などとの比較についての質問が出た。これに対してフェスター氏は「アップルやリアルネットワークスの技術を多くの点で上回っている。例えばサーバーでは従来からRealServerの2倍の配信能力を持っていたが、Coronaではさらに配信能力が2倍になったので、トータル4倍の性能差がある。音質に関してはリアルネットワークスもサラウンド技術を持っているが、それぞれのチャンネルから別々の音がでるというものではない。また24bitオーディオにも未対応だ。またQuickTime 6はMPEG-4だが、CoronaはMPEG-4の画質を上回っているうえ、アップルはまだDRM(デジタル著作権管理)技術を持っていない」と自信を見せた。

WMTのDRM(Digital Rights Management)の仕組み
WMTのDRM(Digital Rights Management)の仕組み。再生可能な期限や回数、コピーの条件などさまざまな制限を持たせた配信が可能になる
WMTのパートナー企業
WMTのパートナー企業
Streaming Media Japan 2002の展示会場のマイクロソフトブースは大盛況
Streaming Media Japan 2002の展示会場のマイクロソフトブースは大盛況で、ステージでCoronaのデモンストレーションを行なう際にはブースの周囲はぎっしり人で埋まっていた

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