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“プログラミング”も“アート”表現の一種 ―― NTT ICC、“アート.ビット コレクション展”を開催中

2002年06月29日 03時51分更新

文● 編集部 内田泰仁

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Behind the Network
ネットワークの裏側

壁に投影された『tcpdump』の画面。展示会のテーマが“アート”なこともあり、こんなバイナリーデータもサイバーで前衛的な芸術作品に見えてくる
このセクションは、ネットワーク上を飛び交うデータも見せ方を変えれば摩訶不思議なアート作品に大変身、というテーマ。筆者の個人的な印象としては、このセクションで紹介されている各ソフトは会場の中で最も“サイバーな前衛芸術”という面持ちだった。ネットワーク上を流れるデータを取り出して文字列化する『tcpdump』は、UNIXユーザーには比較的馴染み深いかもしれないかもしれない。しかし、薄暗いライティングが施された会場の、真っ白い壁面にプロジェクターで映し出しているtcpdumpが出力した文字列は、単なるバイナリーデータのダンプ文字列なのにもかかわらず、これだけでひとつの立派なアートに見えてしまう。コンピューターとアートをテーマにした展示会の雰囲気を盛り上げる、なんとも不思議な映像だ。



Web Browser historical view and alternatives
ウェブ・ブラウザの歴史と、ちょっと違ったブラウザ

こちらはウェブブラウザー展示の専門スペース。いまや懐かしい『Mosaic』もしっかり動いているところが見られる
現在のパソコンの用途になくてはならないウェブブラウザー。アート.ビット コレクション展では、昔なつかしのMosaicなど、歴代のウェブブラウザーが一堂に会している。

これに加えて、日ごろ慣れ親しんでいるウェブの世界をアーティスティックな作品に仕立て上げてしまおう、という一風変わった志向のウェブブラウザー(?)もあわせて紹介されている。実験建築ユニット・doubleNegativesが作成した『ResourceHanger+』は、入力したURLから張り巡らされたハイパーリンクを、グルグル回転する“車輪”のように表示するブラウザー。画面内に複数のサイトを表示し、この車輪同士を重ねると、さらに面白いアクションが起きたりする。ウェブサイトに掲載されている情報を見ることはできないが(果たしてそれをウェブブラウザーと呼んでいいのかどうかは微妙なところだが)、ウェブのリンク構造を利用してまったく新しいアートを創作してしまおうという発想は見事。



ホームページから張り巡らされているリンクを、車輪のように表現する『ResourceHanger+』

NoiseWare - deconstructing desktop and application
アプリケーションやデスクトップを疑う

入力した姓名とインターネット上から自動収集したデータを元に、ホームページを自動的に作ってくれるソフト『TraceNoizer』
“アプリケーションやデスクトップを疑う”というテーマの下に集められたソフトのうち、会場でついつい面白がって遊んでしまったのが、スイスの学生、デザイナー、アーティストらが集結したLANというレーベルの『TraceNoizer』というソフト(ウェブブラウザー上で動作するJAVAアプレット)。これは、テキストボックスに“姓”と“名”を入力し、2つの単語の組み合わせやそれぞれの単語にマッチした語が含まれるウェブサイトの情報を引っ張ってきて、自動的にホームページを作ってくれるというものだ。できあがるページは“ようこそ~のホームページへ!”というタイトルがつけられ、“私はこんなことに興味があります”などといったお題目の元に、ヒットしたページに含まれている要素の中から、重複する要素などを得点化して“テーマ”を割り出し、関連する内容の子ページを作る、というものだ。



とある超有名人の名前でホームページを作らせてみた。子ページに“money”や“wealth”が出てくるあたりは、ニヤリと笑える
ためしに世界有数の富豪であるアメリカの某氏の名前を入れてみたところ、なんとトップページにはご本人の画像が上手いことレイアウトされている。某氏のご興味のあるジャンル(といっても、ソフトが勝手にチョイスしたものだが)を見てみると、“software”“computer”“windows”など、もっともらしいものがあがっていたが、9番目に“money”、10番目に“wealth(富)”が出てきたあたりも、この某氏の人となりを物語っているかも……。

上記の某氏のような超VIPだけではなく、ごくごく一般市民な名前を入れてもページは生成される。もちろん、実際の人物とはまったく何の関係もない情報が選択されることもあるが、それはそれでなかなか面白いものだったりする。日本語に対応していないのがちょっと残念だが、たまたま入れた名前で突拍子もないページができあがったり、入力した名前の人物の意外な側面(正確には、入力した名前の人物と“似た”名前の、無関係な誰かの情報だったりするわけだが……)が垣間見えたりと、かなり笑えるソフトだ。

 

会場ではこのほか、

  • 音声と映像をパソコンに取り込んだり、新しい音声と映像を作り出したり構成しなおしたりするなど、さまざまなメディアを結合することで新しいアートを生み出そうというソフトウェアを紹介する“Media Programming Environment(音や映像を扱うプログラミング環境)”
  • コミュニケーション手段としてのコンピューターやソフトの新しい方策を探る“CommunityWare(人と人をつなぐためのソフトウエア)”
  • コンピューターが作り出した仮想現実の世界とその中で暮らす架空の生き物を作ったり動かしたりするソフトを集めた“Virtual Environment(仮想現実環境のソフトウエア)”

といったテーマでの展示も行なわれている。展示作品は約40にもおよび、このページに掲載したほかにも、数多くの“アートなソフト”が紹介されている。

展示ホールを入って真正面の壁には、ワイヤーフレームのオブジェクトが動き回る3Dアニメーション作成ソフト『sodaplay』の画面が表示されている。筋力や摩擦、重力などのパラメーターを調整すると、それまでとは全く違った動きに変化する

 

“アート”という単語のイメージにちょっと小難しいモノを感じる、という人もいるかもしれないが、展示されているソフトは遊び心にあふれ、見ても触っても楽しめる興味深いものばかり。普段目にするようなパソコンのプログラムも、製品(作品?)の集め方の切り口次第では立派な芸術に見えてくるという企画のセンスも面白いところ。コンピューターやネットワーク、プログラミングの全く違った視点での楽しみ方や芸術的な表現を、この機会にぜひ楽しんでみてほしい。

なお、開館時間は午前10時から午後6時まで、休館日は月曜日と6月4日。入場料は一般が800円、大学生・高校生は600円、中学生以下は無料となっている。

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