エクス・ツールス(株)は3日、都内に報道関係者や流通業者などを集め、同社が6日に発売する3D CGソフト『Shade 6 spirit(シェード シックス スピリット)』(以下spirit)の発表会を開催した。これは、同社が5月7日に発表した製品で、発表会では製品の開発コンセプトや、“Shade 6”シリーズのラインアップと発売時期、ゲストスピーカーによるスピーチなどが行なわれた。
『Shade 6 spirit』 |
spiritは、モデリング、レンダリング、アニメーションという、3つの基本機能を備えた、ホビーユース向けの3D CGソフト。モデリングは、ベジェ曲線の描画によって自由にラインをトレースできる“自由曲面モデリング”で行なえ、“ポリゴン”や“メタメッシュ”も利用できる。レンダリングでは間接光の計算を“ラジオシティ”で行なえるのが特徴。アニメーションでは、関節のある物体を関連づけて、1つの物体が動くと関連づけた物体も連動して動く“インバースキネマティクス”機能などを利用できる。またカメラ機能により、複数のカメラを利用してシーンを構成し、映画のような演出も行なえるとしている。対応OSは、Windows 98/Me/NT 4.0/2000/XP、Mac OS X 10.1~10.1.4。なお、Mac OS版は、Mac OS X以外の環境(クラシック環境を含む)では動作しない。
豊富なカスタマイズが可能なShade 6シリーズ
エクス・ツールス開発部本部長の岩下史郎氏 |
発表会の冒頭では、同社開発部本部長の岩下史郎氏が、Shadeの基礎技術とShade 6の開発コンセプトの説明を行なった。同氏は「Shadeは、3D CGのモデリングとレンダリング、アニメーション作成という3つの機能を備えている。他社にもこれらの機能を含んだ製品あるが、Shadeはレンダリングのイメージがきれいであることに定評がある。反射や透明感、リアリティーのある表現が優れている」と述べ、「Shade 6シリーズのキーワードはカスタマイゼーション。プラグインやスクリプトを、“window_interface”というプログラムと組み合わせることによって、パレットを持ったShadeの機能の1つとして組み込める。spiritでは、『Shade R5』に搭載されていたプラグイン“メッシュツールス”などを、パレットを持った基本機能として組み込んでいる。7月下旬に発売予定の『Shade 6 advance』や『同 professional』には、プラグインやスクリプトの開発ツールが付属しているので、これによってユーザーがShadeを自由にカスタマイズできる。なお上位2製品は、Shade R5シリーズでユーザーに人気のあったプラグインを、標準で搭載している」と語った。
プラグインやスクリプトを、“window_interface”と組み合わせることにより、パレットを持った機能として組み込める |
また同氏は「“window_interface”と開発ツールによって、プラグインの開発が盛んになると予想している。そのために我々は、より強いサポート体制を作って技術的なハードルを下げていきたい」とした。
商品企画部の西脇功氏 |
次に、同社商品企画部の西脇功氏が、spiritの商品説明を行なった。同社は初心者向けに、モデリング、レンダリング、アニメーションの基本機能を搭載した3D CGソフト『Shade Debut R5』と、モデリング機能とレンダリング機能のみの静止画3D CGソフト『myShade3』、およびそのMac OS版『iShade3』の3製品をラインアップしていた。同氏は「spiritは、『Shade Debut R5』と『myShade3』、および『iShade3』という、従来ラインアップにあった初心者向けの3製品を統合したもので、低価格ですべての3D CG作成機能を提供する」と述べ、「主要な新機能としては、任意の線形上を、指定した形状に貼り付けることができる“ラインフィット機能”、選択した複数の形状を、辺や中心線を基準に整列、均等配置できる“形状配列/配置機能”、線画のようなイメージを作成できる“ワイヤーフレームレンダリング機能”などを搭載している。また、ポリゴンメッシュ編集ツール“メッシュツールス”がパレットになり、形状データをカタログ化して視覚的に管理できるツール“ShadeExpolorer”が、フローティングパレットになって任意の場所に表示させたまま利用できるようになるなど、操作性が向上している。手描き感覚のモデリングツール『マジカルスケッチ2』も搭載している。このほか、解像度、αチャンネル、Zバッファチャンネル情報を保持できるTIFF形式でのイメージ保存が可能になった。また、任意のサイズと解像度を指定して、レンダリングイメージの作成が行なえるようになった」と語った。
製品ラインアップ。『Shade Debut R5』と『iShade3』、および『myShade3』という、従来ラインアップにあった初心者向けの3製品を統合してspiritにした |
続けて同氏は、製品のラインアップについて「通常版のほか、従来版ユーザーのためのバージョンアップパッケージ(『Shade 6 spirit VersionUP packege』)を5800円で、アカデミックパッケージ(『同 Academic Package』)を9800円で用意している。バージョンアップサービスは、これまではユーザーにファクスやインターネットで申し込んでもらい、郵送するという形をとっていたが、今回から店頭で発売する。ユーザー登録や、Shadeユーザーであることの証明書などは必要ない。なお、店頭で購入できないユーザーのために、従来の郵送によるバージョンアップサービスも用意する」と述べ、「Shade 6シリーズは、Mac OS Xにネイティブで対応している。Mac OS XのAquaインターフェースにも対応し、定規を半透明にできる機能など、Mac OS X独自の機能も搭載した。なお、Mac OS 9以前の環境では動作しないため、Mac OS版Shade R5シリーズを、Shade 6シリーズと並行して販売する」とした。
デジタルハリウッド(株)の学校長である杉山知之氏「プロを目指す学校はもちろんのこと、小学校や中学校に入っていても良いのではないだろうか」 |
そして、ゲストスピーチとして、デジタルハリウッド(株)の学校長である杉山知之氏がスピーチを行なった。同氏は「Shadeとは長い付き合いで、導入してから4年ぐらいになった。当校では、2D CGと3D CGの間の垣根を気にすることなく両方やったらいいのではと考え、学生に『Adobe Photoshop』や『Adobe Illustlator』と並んで、Shadeを使わせている」と述べ、「3D CG作成ソフトは絞られた数になってきたし、開発する会社も減ってきた。しかし、デジタルを使ってものを表現している人間は、世界的に見ても増えている。日本はゲーム市場のメッカということもあり、3D CGの市場としては非常に大きい。Shadeは日本から生まれた、日本のユーザーに支持されているソフト。spiritで、エクス・ツールスが思い切った価格改定を行なったことにより、より多くの人が3D CGを作成する機会を得るだろう。このようなソフトは、プロを目指す学校はもちろんのこと、小学校や中学校に入っていても良いのではないだろうか」と語った。
営業企画部の園田浩二氏 |
デモンストレーション。画面下部に並んでいるのが、形状データをカタログ化して視覚的に管理できるツール“ShadeExpolorer” |
続けて行なわれたデモンストレーションでは、同社営業企画部の園田浩二氏が、3D CGの作成の過程を通して、spiritの機能などについて説明した。
営業本部長の川端良夫氏 |
最後に、同社営業本部長の川畑良夫氏が挨拶を行ない、「エクス・ツールスは、今回初めて発表会というものを行なった。目的は、Shadeのユーザーが約32万人いることや、Shadeの開発コンセプト、およびそれに関わる開発者や営業の人間など、いろいろ知っていただくこと」と述べ、「Shade 6シリーズは、spiritを皮切りに、7月末にはadvance、professionalを発表していく。そして9月末には、子供向けのShadeも発売する予定。今後も、新しい魅力のある製品を発表していこうと思っている」とした。
なお西脇氏に、同製品の売り上げの見込みについて尋ねてみたところ「今後半年間で、VersionUP packegeが3万本以上、通常版が2万本以上と見込んでいる」という答えが返ってきた。