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シスコ、ノンストップIPサービスを提供する技術“GRIP”を発表

2002年05月27日 19時37分更新

文● 編集部 田口敏之

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シスコシステムズ(株)(以下シスコ)は24日、都内に報道関係者らを集め、ネットワークインフラの耐障害性機能を大幅に向上させ、“ノンストップIPサービス”を可能にするという技術“Globally Resilient IP(GRIP:グリップ)”についての説明を行なった。

説明を行なった、シスコのマーケティング統括コアテクノロジーマーケティング本部本部長である木下剛氏
説明を行なった、シスコのマーケティング統括コアテクノロジーマーケティング本部本部長である木下剛氏

同社マーケティング統括コアテクノロジーマーケティング本部本部長の木下剛氏は、発表会において、同社が同技術を開発した理由などについて説明した。それによると「インターネットは、技術的に見るとオープンスタンダードで、大規模に拡大できる信頼性の高いネットワークということで進化を遂げてきた。しかし現在、ネットワークに求められる要件は大きく変わってきた。当初のウェブブラウジングだけでなく、ここ2、3年はカスタマーサービスやeコマースなど、ビジネス分野での利用が主体となった。コンテンツもスタティックなものからダイナミックなものへと変化し、8秒ではなく2秒以内にレスポンスが返ってこないと、ウェブサービスの利用に対する満足度が急激に下がると言われている」

「また、ブロードバンド化によって、それぞれのサービスが非常にミッションクリティカルなものになった。例えばVoIPを実際に使おうとすると、数100ミリ秒以内にパケットを送信しなければならない。サービスの進化に伴って、我々はIPネットワーク自体が進化しなければならない時代に来たと考えた。そしてそのためには、3つの重要な領域があると認識している」

「1つは、ブロードバンドに代表されるスケーラビリティー。通信速度が数10kbpsから数100kbpsで、バックボーンもせいぜい速くて数100Mbpsというネットワークの時代から、今日ではGigabitが当たり前になってきた。今年は10Gigabit Ethernetが話題になっている。トラフィックやアプリケーションが増えていくので、これは永遠の課題と言える。もう1つはインテリジェンスで、ミッションクリティカルなデータを、情報系のアプリケーションとして企業内のインフラの上で扱うためには、QoSが必要となるため、インテリジェンスはスケーラビリティーとともに高めておく必要がある」

ネットワークの信頼性を高める、従来の2つの手段に加えて、IPのプロトコルレベルで信頼性を確立する技術を開発した
ネットワークの信頼性を高める、従来の2つの手段に加えて、IPのプロトコルレベルで信頼性を確立する技術を開発した

「そして、これまで比較的手を付けてこられなかったのが信頼性。我々は、ユーザーのサービスに対する信頼性を提供しようということで、ノンストップIPサービスを提供する。これまで、具体的にネットワークの信頼性を高めるためには2つの手段があった。1つは、信頼性の高いシステム機器を導入すること。もう1つは、ルーターを二重化するなど、障害が発生しても、ネットワークに影響を及ぼさないよう設定すること。今回発表する、“GRIP”というシスコの新しいソリューションは、これら2つの手段に加えて、IPのプロトコルレベルで、ネットワークに対する信頼性を確立するというもの」

「これに注目した理由は、たとえノードの信頼性が上がっても、例えば回線に障害が発生すれば、ルーター自体はルーティングをしなくなってしまう。そうするとパケットロスが発生するし、最悪の場合セッションが切れてしまう。こういったセッション自体をダウンさせないことが、これからのブロードバンド時代のIPネットワークに求められる部分だと考えた」という。

GRIPを構成する4つのResilient技術
GRIPを構成する4つのResilient技術

GRIPは、具体的にはCisco IOS(※1)で提供される、新しく開発された“Resilient リンクレイヤ”“Resilient ルーティング”“Resilient MPLS”“Resilient IPサービス”という、4つのResilient(障害回復、高信頼性)技術と、それらが内包するいくつかの機能から構成されている。4つの技術が提供する機能と信頼性については以下の通り。

※1 IOS :シスコのルーターやスイッチ製品で使われている、シスコオリジナルのネットワーク制御用OS。

Resilient リンクレイヤ
アクティブ状態のルーターと、スタンバイ状態のルーターの2台を用意しておき、“Stateful Switchover(SSO)”機能により、障害回復処理と同時に、セッションを維持したままアクティブのルートプロセッサーから、スタンバイのルートプロセッサーへ切り替えが可能。障害発生に伴うリセットを回避するので、従来よりも復旧時間が大幅に短縮できるという。対応プロトコルは、ATM、FR、PPP、MLPPP、HDLC、Ethernet。
Resilient ルーティング
ルーティングに関する障害が発生した場合、“Non Stop Forwarding(NSF)”機能により、IPパケットの転送を継続し、ユーザートラフィックを保証できる。また“BGP(Border Gateway Protocol)Convergence Optimization”機能は、ルーターのネットワークルート再構成に要する時間を短縮できるという。さらに、“Multicast Sub-Second Convergence”機能は、企業内の多数のクライアントにオーディオ/ビデオ/ストリーミング配信をするためのマルチキャストを用いる際、障害が発生した場合に、1秒以内でルート構築を可能にするものという。これらの機能をSSOと組み合わせれば、ネットワークに障害が発生した場合も、エンドユーザーに影響を及ぼさずに復旧できる。
Resilient MPLS
MPLSとは、パケットの高速転送を可能にするレイヤー3のスイッチングの技術で、さらにMPLSの拡張機能“Fast Reroute”によって、リンクやルーターのダウンなど、ネットワークに障害が発生した際に、数ミリ秒以内に迂回ルートを確保してユーザートラフィックを保証できるという。
Resilient IPサービス
“Stateful IPsec”機能および“Stateful NAT”機能によって、IPsecやNAT(Network Address Translation)プロトコルのセッションステートを冗長ルーター構成全体で保持して、特定ルーターで障害が発生しても、これらのプロトコルを利用しているリアルタイムアプリケーションを継続して利用できる。また“Gateway Load Balancing Protocol”は、企業ネットワークのバックボーンにおいて、複数のルーターでIPトラフィックの負荷を分散して、スループットを向上させると同時に、耐障害性を確立できる。
GRIP導入によるノンストップIPネットワークの概念図
GRIP導入によるノンストップIPネットワークの概念図

これらの技術は、同社のインターネットルーター『Cisco12000』『同1000』『同7500』上において、Cisco IOSソフトウェアのアップグレードを行うことによって入手可能。提供開始は6月の予定。また同社は、今後同社のルーター製品群全体で、Cisco GRIP機能対応を順次サポートしていくという。

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