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【ビジネスシヨウ 2002 TOKYO Vol.1】電子政府・電子行政向けシステムに注目――アドビやNTT東日本が展示

2002年05月25日 02時08分更新

文● 千葉英寿

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5月21日から24日まで“ビジネスシヨウ 2002 TOKYO”が東京ビッグサイト(東京・有明)において開催された。主催は(社)日本経営協会/東京商工会議所。今回は、ブロードバンドの一般への普及を受けて、ますますIT色の強い展示会となっている。本稿では同展の目玉ともなった携帯電話関連の話題は“携帯24”に譲ることとし、特にビジネスのより一層のデジタル化や電子政府・電子行政の推進を受けた展示として、東日本電信電話(株)やエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ(株)といったキャリアー系に加え、PDFの行政、自治体の指定を追い風に勢いを増しているアドビシステムズ(株)などの出展に関してリポートする。

●B to B、B to Gに向けて動きだしたPDF

Photoshop 7.0とAcrobat 5.0をデモ
Adobe Photoshop 7.0とAdobe Acrobat 5.0を中心にデモンストレーションを行なっていた

アドビシステムズは、発売を目前に控えた同社の画像編集ソフト『Adobe Photoshop 7.0』とAdobe PDFを中核技術とした『Adobe Acrobat 5.0』を紹介する“Adobe Products Theater”とAdobe PDFを中心としたデジタルドキュメント技術を紹介する“Adobe PDF Solutions Theater”のふたつのステージが展開されていた。いずれもプレゼンテーションが開始されると大変多くの来場者が足を止めるため、ステージ前の通路がふさがれてしまうほどの盛況ぶりで、関心の高さが伺えた。

ところで、パソコンやクリエイティブ関係者で“アドビ”という社名は知らない人は少ないと思うが、一般的なビジネスの世界での認知はどうだろうか? デモを熱心に見ていた新卒で今年入社したという会社員の女性おふたりにお聞きしたところ「フォトショップは知っています。でも“アドビ”という会社が出していることは、ここではじめて知りました」と語り、もうひとりは「PDFはインターネットを見てるとよく出てきますよね。会社に入ってみて、文書の多くがWordのほかにPDFがたくさんあるのを知りました」と語ってくれた。どうやらビジネスの世界でアドビ製品や技術への認知は進みつつあるようだ。

というのもビジネスにおけるファイルのやり取りにAdobe PDFがかなり普及してきたことに加え、電子認証や電子申請などの正式ファイルフォーマットとして行政、自治体からの指定が進んでおり、今後のB(Business)to BやB to G(Gouverment)において重要な技術となってきていることも要因のひとつと言えるだろう。

Adobe PDFのソリューションを紹介
こちらのステージではAdobe PDFのソリューションを紹介していた

●PDFの次の戦略「Accelio」が登場

そんな中、こうしたB to Gへの対応を押し進める同社の戦略において重要なソリューションとなる新製品群が紹介された。それは4月に買収を完了したカナダのAccelio(アクセリオ)社の製品で、国内ではじめてアドビ製品として“Adobe Accelioファミリー”が紹介された。

Adobe Accelioは企業間の取引・指示、行政機関への各種申請・届出、企業内での稟議や報告・作業の指示といった“フォーム”をインターフェースとする多くのビジネスプロセスにおけるやり取りを支えるものだ。フォームの入力からワークフロー、そしてアウトプットに至るまでウェブ/XMLでのシームレスな結合・拡張を実現する総合的なサーバ製品群だ。出展されたのは、『Adobe Accelio Capture』、『Adobe Accelio Integrate』、『Adobe Accelio Present』の3製品だ。

アクセリオ製品
本邦初公開となったアドビ製品となったアクセリオ製品群を紹介していた

Adobe Accelio Captureは、ウェブ/XML/電子署名に対応する電子フォーム作成・運用ツールの“FromFlow”とXMLキャプチャソリューション“ReachForm”がある。FormFlowは企業内外のビジネスプロセスに不可欠なハイクオリティなフォームをウェブブラウザーに表示でき、印刷やDB(データベース)とのコネクティングなどにも対応する。また、電子署名プロバイダーとの連携によりセキュリティーにも配慮されている。ReachFormは企業や行政機関がインターネットを介した電子フォームの配信、データ入力や送信を行なえるように。

Adobe Accelio Integrate Intempoは、Adobe Accelioソリューションの中核をなすIntegrateエンジンだ。電子フォーム(Adobe Accelio Capture FormFlow/ReachForm)を介し、人や組織をつなぐプロセスの自動化、APIによる外部アプリケーションとの連携といったビジネスプロセスをウェブ/XMLでつなぐ“フレームワーク”を提供する。

Adobe Accelio Presentには、Adobe Accelio CaptureやAdobe Accelio Integrate、さらに外部アプリケーションから送られた入力データを高品位なフォームやXMLデータにアウトプットするためのアウトプットサーバーである“Central”とCentralで使用するフォームを設計する“Output Designer”がある。さらにSAPやOracleに対応したERP対応アウトプットスイート製品も用意されている。

マン・ツー・マンでデモ
Photoshopを中心にマン・ツー・マンでデモを行なっていた

●NTT東日本でも電子自治体ソリューションを提案

NTT東日本のブースにおいても、電子申請に関連したB to G、C to Gのソリューションが紹介されていた。電子自治体ソリューションとして、“電子申請システム”、“電子投票システム”、“電子入札システム”などを紹介していた。

電子申請システムとは、PKI(公開鍵基盤)に基づく認証プラットフォームと自社開発によるICカードの組み合わせにより、認証・セキュリティを確立することで、閲覧や入力するフォームはHTMLをインターフェースとしている。他社におけるPDFを使ったソリーションでは、入力フォーム、つまりフロントエンドになるインターフェースはウェブブラウザーに表示されるPDFと電子署名プラグインを組み合わせてセキュリティーや認証を確立しているが、同社ではICカードとカードリーダーを組み合わせている。

PDFをフロントに持ってこない理由として「PDFを否定するものではまったくありません。実際、書類をPDF出力するボタンもありますので、帳票管理のためにPDF出力したり、PDFを添付してメール送信することも可能です」としている。さらに同社のクライアント端末には、パソコンはもちろん、Lモード対応ファクスやFOMAなどのcHTML、WAP対応の携帯端末、自社開発によるWindowsベースのSTB(試作機)など、本当の意味でのクロスプラットフォームでのサービスの実現を前提としており、「現状ではHTMLが最適」という判断をしているようだ。

電子投票システムでは、ワンウェイのICカードを使用した体験投票を行なっており、ワールドカップでの優勝国予想の投票を行なっていた。このICカードは一度、投票に使ってしまうと再度投票できないようになっていた。

前述の電子申請システムでもICカードが登場していたが、通常のICカードに比べ格段の記憶容量をもっており、今後、さまざまな機能を投入することが可能だが、逆に必要な機能だけに特化させることも可能だとしている。大変便利なイメージがある反面、国民総背番号制を想起させるカード管理につながる感じもあり、諸手をあげて賛成はしかねることを考えさせられるシステムとも言える。

NTT東日本の電子申請システム
NTT東日本の電子申請システム。申請者端末として、左奥より、Lモード対応FAX『でんえもん753LC』、Windowsパソコン、iモード対応のNTTドコモ携帯電話“FOMA”、ブロードバンド対応セットトップボックス(試作機)。パソコンとSTBにはICカード対応リーダーが接続されていた

このほか、電子認証関連ではシヤチハタ(株)が電子印鑑システム『パソコン決裁4 with PKI』を出展していた。パソコン決裁はPDF電子署名プラグインを使って、PDFファイルに電子署名をする際に“印影”をデジタル的に捺印することができるというもの。電子署名を行なう際に必ず印影が必要なわけではないが、日本の商習慣から考えると印影があるほうが心理的にも安心感がある。なお、印影はパッケージ購入後、6種類の印影から1つを選択することができる。なお、印影データの作成を依頼すると同じ印影のシヤチハタ“Xstamper”が後日届けられる。

印鑑文化をデジタル化した提案
シヤチハタは日本における印鑑文化をデジタル化した提案を展開

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