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フランス テレコム日本研究所、航空写真と地図データから都市の3Dモデルを自動生成する技術をデモ

2002年05月13日 23時38分更新

文● 編集部 佐々木千之

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フランス テレコム(株)の研究開発部門であるフランス テレコム日本研究所は13日、航空写真と地図データから、都市の精緻な3Dモデルを自動生成する技術“FastBuilder(ファーストビルダー)”のデモンストレーションを公開した。フランス テレコム日本研究所では、研究開発中の技術を日本の研究者向けに不定期に公開しており、今回の技術デモ公開も“デジタルシティへのいざない”として、17日まで行なっている。

航空写真と地図データから3Dモデルを自動生成

FastBuilderは、航空写真と高さ情報を含む地図データをもとに、建造物の1つ1つまでをモデリングした都市の精緻な3Dモデルを生成する技術。都市の大きさやデータ量にもよるが、例えばパリならエッフェル塔や凱旋門といった特別な建造物を除いた、一般的な建物は、数日~1週間程度で3Dモデル化できるという。エッフェル塔や凱旋門など一部の建造物の3Dモデリングは手作業になるが、従来この種のデータ生成は基本的にすべて手作業に頼っていたことを考えると、大幅な作成期間の短縮が可能としている。

FastBuilderによって3D化したパリを約1万4500m上空から見下ろしたところ
FastBuilderによって3D化したパリを約1万4500m上空から見下ろしたところ

FastBuilderは仏IWI社(※1)と、フランス テレコム研究所が共同開発した技術。FastBuilderの詳細な動作については明らかにしていないが、航空写真の撮影高度や向きから建物の高さを割り出し、陰になって写っていない部分についても写っている部分からテクスチャーを貼り付けていくという。都市の建物といっても外形などのバリエーションが多く、自動化が難しいと思われるが、フランスでは都市の景観に関する規制が非常に厳しく、建物の外観を変えるような改築は難しいという。この規制の結果、都市の建物の屋根や壁などの形や色は、各地方に特徴的なものがあり、これらの特徴をアルゴリズム化してモデリングに適用しているという。3DデータはOpenGLによって記述されており、データ量は1都市当たり数10GBにもなる。

※1 仏IWIは仏フランス テレコム社の関連会社である仏フランス テレコム テクノロジー社が1999年に出資(100%ではない)して、3Dの仮想世界の構築を目的として設立した企業。

パリの凱旋門を高さ288mから見たところ。街路樹1本1本まで3Dモデルとなっているのが分かる
パリの凱旋門を高さ288mから見たところ。街路樹1本1本まで3Dモデルとなっているのが分かる。車はモデル化していない
レンヌの街。レンヌでは建物の屋根の形や色に特徴があり、その特徴を生かした3Dモデルを生成している
レンヌの街。レンヌでは建物の屋根の形や色に特徴があり、その特徴を生かした3Dモデルを生成している
昔の地図を元に作った、18世紀のレンヌの街
昔の地図を元に作った、18世紀のレンヌの街。こうした過去の街の作成にも応用できるという

FastBuilderによって3Dモデル化した都市データを見たが、中庭のある建物や街路の樹木までモデリングした非常にリアルなものだった。データ化した都市はパリをはじめ、リヨン、カンヌ、グルノーブル、レンヌなどフランス内の300都市および、スペインのバルセロナやベルギーのブリュッセル、モナコ公国のモナコ、オーストリアのウィーンなどがあるという。フランス テレコムではこの技術を、都市計画や旅行案内、博物館展示物、放送、エンターテイメントなどの分野に応用可能だとしている。現在、フランステレコムが仏国内向けに提供しているポータルウェブサイト“VoiLa”の1コンテンツとして、保養地で知られる都市ニースの旅行者向けのリアルな3D地図に応用している。OpenGLの都市データそのままでは大きすぎるため、ここではMacromedia Flashのデータに変換して使用している。

ポータルサイト“VoiLa”にある、ニースの観光案内
ポータルサイト“VoiLa”にある、ニースの観光案内。FastBuilderで生成した都市データをベースに作ったもの

Macromedia Flashのデータに変換してしまうと、データ量は減るが、3Dデータの中を自由にウォークスルーで移動して楽しむことはできなくなる。転送するデータ量を抑えつつ、3D空間の中を移動できるように、フランステレコム研究所では現在、3Dデータをサーバーに置き、3D空間のビューデータをクライアント側にMPEG-4のストリーミングデータとして送信するというシステムを開発中。クライアント側では『Wavier』というフランステレコム研究所が開発したビューアーソフトを使う。

Wavierで再生中の山のデータ
Wavierで再生中の山のデータ。中心部に比べ、周辺のデータは解像度が低いものになっている
Wavierの設定画面
Wavierの設定画面。青線で囲まれた部分のデータがサーバーから転送され、そのうち赤い線で挟まれた部分は高解像度のデータとなる

このシステムでは、Wavierの1つのウインドー内で、ユーザーが最も注目する画面中央部は高解像度のデータ、周辺部は低解像度のデータを表示することができ、データ転送量を減らせるという。最終的にはモデムによるダイヤルアップでも受信できるデータ量(約30kbps)まで対応するとしている。

デモンストレーションと説明を行なった、フランス テレコム日本研究所 準研究員の福田剛氏
デモンストレーションと説明を行なった、フランス テレコム日本研究所 準研究員の福田剛氏。後ろに見えているのはモナコのデータ

かつてVRMLによる3Dデータのインターネット上での公開がブームになったことがあった。街の案内などに利用できるとされながら、詳細なデータを作るとダウンロードに時間がかかることや、データの作成にコストがかかることから、広く普及するまでには至らなかった。インターネットアクセスのブロードバンド化が進んだ今、FastBuilderによって作られた美しい3Dモデル都市を使ったサービスは、ブロードバンドのキラーコンテンツになる可能性を秘めているのではないだろうか。FastBuilderで作られた日本の都市が見てみたい。

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