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日本HP、4800dpi&6色フォトインクに対応したインクジェットプリンターを発表

2002年05月10日 23時26分更新

文● 編集部 佐々木千之

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日本ヒューレット・パッカード(株)(日本HP)は10日、都内で記者発表会を開催し、最高印刷解像度4800×1200dpiで6色フォトインクに対応したインクジェットプリンター『hp deskjet 5550』と『hp deskjet 5551』を発表した。はがきの自動両面印刷にも対応する。5月25日に発売予定で、価格はhp deskjet 5550が3万2800円、hp deskjet 5551が3万9800円となっている。

『hp deskjet 5550』
『hp deskjet 5550』
『hp deskjet 5551』
『hp deskjet 5551』

4色インク/6色フォトインクの両対応

従来の日本HPのコンシューマー向けインクジェットプリンターは、4色(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)インクを使ったプリントエンジンを採用してきた。コピー紙など普通紙へのカラー印刷で高い評価を得る一方で、6色や7色のインクを採用するセイコーエプソン(株)やキヤノン(株)などのプリンターに対し「写真画質では劣勢というイメージ」(日本HPコンシューマ事業統括本部ペリフェラルマーケティングマネージャの関根光次氏)を持たれてきたという。

『hp deskjet 990』の4色プリントとdeskjet 5550/5551の6色プリントの比較
『hp deskjet 990』の4色プリントとdeskjet 5550/5551の6色プリントの比較
4800×1200dpiの印刷解像度のイメージ
4800×1200dpiの印刷解像度のイメージ

deskjet 5550/5551は、最高印刷解像度4800×1200dpiで6色インクを採用し、写真画質の向上を図ることで「イメージの払拭を目指した」(関根氏)としている。4800×1200dpiという印刷解像度は、コンシューマー向けインクジェットプリンターとしては最高レベル(※1)で、同社のフラッグシップモデル『hp cp1160』(2400×1200dpi)を上回るスペックとなっている。インク滴は4pl(ピコリットル)でcp1160と同じだが、インクノズルヘッドの横方向(印刷方向に対して直角の方向)への精度を上げ、横縞(バンディング)を低減したとしている。

※1 セイコーエプソンの『PM-950C』は2880×1440dpi、キヤノンの『BJ F900』は2400×1200dpi。

『PM-950C』と『BJ F900』の色再現域(グレーのメッシュ)とdeskjet 5550/5551シリーズの色再現域(カラーのメッシュ)の比較
『PM-950C』と『BJ F900』の色再現域(グレーのメッシュ)とdeskjet 5550/5551シリーズの色再現域(カラーのメッシュ)の比較

インクカートリッジは、シアン、マゼンタ、イエローの3色が1つになったカラーインクカートリッジと、フォトシアン、フォトマゼンタ、フォトブラックの3色が1つになったフォトインクカートリッジの2つに分かれている。フォトインクの各色は通常インクの4分の1の濃度で、プリントの粒状感を低減した。また、これまで各色別々に行なってきたインク滴のドット配置の最適化をカラーインク全体に対して行ない、1ピクセル当たり最大32回のインクドロップによって、より滑らかな階調表現が可能としている。発表会では、『PM-950C』(エプソン)、『BJ F900』(キヤノン)とdeskjet 5550/5551の色再現域のグラフを見せ、「他社のフラッグシップ機を上回る色再現力」(関根氏)を持つとした。

deskjet 5550/5551のインクカートリッジ部分
deskjet 5550/5551のインクカートリッジ部分(左がカラーカートリッジ、右がブラックまたはフォトインクカートリッジ)

さらにフォトインクカートリッジをブラックインクカートリッジに交換して、4色インクのプリンターとしても利用でき、従来の普通紙向けの高画質プリントも可能となっている。インクはすべて顔料系で、耐水性、耐光性に優れるとしている。同時に発表した印刷用紙『プレミアムプラス フォト用紙』では約50年の耐光性(※2)を持つという。

※2 米国の独立調査機関である米Wilhelm Imaging Research社による調査で、ガラスカバーありで65年以上、カバーなしで約49年の耐光性があると評価されたとしている。

hp digital photography機能を搭載したドライバーのコントロールパネルと、逆光により暗くなった画像の明るさとコントラストを自動調整する“デジタルフラッシュ”の効果
hp digital photography機能を搭載したドライバーのコントロールパネルと、逆光により暗くなった画像の明るさとコントラストを自動調整する“デジタルフラッシュ”の効果(この画像では分かりづらいが、子供の表情がはっきり分かるように補正されている)

デジタルカメラで撮影した画像の印刷を想定し、逆行やピントずれなどの画像を自動的に補正する“hp digital photography”機能をプリンター内蔵のASIC(特定用途向けIC)に持たせている。この機能のコントロールは、プリンタードライバーソフトで行なう仕組み。また、これまで“エコノ”“ノーマル”“ベスト”(デフォルトはノーマル)の3段階だった印刷モードを、“はやい(最速)”“はやい(標準)”“きれい”“高画質”の4段階とした。デフォルトは“はやい(標準)”となり、従来の“エコノ”よりもきれいで“ノーマル”よりも早い印刷が可能としている。

新しい4段階の印刷モードと、従来の3段階の印刷モードの比較
新しい4段階の印刷モードと、従来の3段階の印刷モードの比較

また、印刷機能としては、はがきの自動両面印刷機能や、はがき用紙と純正プリンター用紙である『hp プレミアムプラス フォト用紙 光沢(10x15cm)』で、3辺のフチなし印刷機能を搭載した。はがきの自動両面印刷機能の利用には、ソフトウェアの対応が必要だが、(株)アジェンダの『宛名職人』をバンドルするほか、(株)クレオの『筆まめ』が対応を予定しているという。hp プレミアムプラス フォト用紙 光沢(10x15cm)に3辺フチなし印刷した場合は、用紙の下部分にあるミシン目から切り離すことで、4辺フチなしのプリントとなる。

『hp プレミアムプラス フォト用紙 光沢(10x15cm)』への印刷例
『hp プレミアムプラス フォト用紙 光沢(10x15cm)』への印刷例。上が印刷したままの状態で、下はミシン目から切り離したもの

このほか、cp1160などが持っていた、印刷データを受信すると自動的にプリンターの電源がオンになる“自動オン機能”に加えて、30分データなしの場合に自動的に電源をオフにする“自動オフ機能”を搭載した。2つのカートリッジ(フォトインクカートリッジまたはブラックインクカートリッジと、カラーインクカートリッジ)の片方のインクが無くなった場合でも、モノクロになるが(※3)残ったインクで印刷を続ける“リザーブモード”も搭載している。従来はモノクロ印刷しかしない場合でも、カラーインクカートリッジをセットする必要があったが、deskjet 5550/5551ではブラックインクカートリッジのみをセットして印刷できる。

※3 ブラックインクが無い場合は、カラーインクでモノクロ印刷する。

deskjet 5550/5551発売後のインクジェットプリンターのラインアップ
deskjet 5550/5551発売後のインクジェットプリンターのラインアップ

deskjet 5550とdeskjet 5551は、印刷機能については同等だが、deskjet 5551は日本市場向けの筐体デザインを採用し、deskjet 5550ではオプションとなっている『両面自動印刷モジュール』(6980円)とフォトインクを同梱している。deskjet 5550/5551は世界市場に先駆けて日本で発表した機種だが、deskjet 5551は日本でしか発売しないモデルだとしている。

deskjet 5550/5551の主な仕様は、A4モノクロ印刷速度最大毎分17枚、A4カラー印刷速度最大毎分12枚、インターフェースはパラレルインターフェースおよびUSB 2.0、バンドルソフトははがき印刷ソフト『宛名職人』と画像管理ソフト『ACDSee』。電源は外付けのACアダプターとなっている。対応OSはWindows 95/98/Me、Windows NT4.0/2000/XP、Mac OS8.6以降(USBポート必須)。サイズと重さはdeskjet 5550が幅456×奥行き385×高さ156mmで5.26kg(両面印刷モジュールなし)、deskjet 5551が幅449×奥行き432×高さ143mmで5.68kg(両面印刷モジュール含む)。

deskjet 5551の背面
deskjet 5551の背面。両面印刷モジュールがセットとなっている。左側にパラレルインターフェースとUSBポートが見える。左手前にあるのはACアダプター

日本向け製品開発プロジェクトの第1弾

発表会で挨拶した代表取締役社長の寺澤正雄社長は「日本のインクジェットプリンター市場は、ユーザーが高い要求を持つ厳しい市場。日本HPでは、日本ユーザーの要望を米本社に対してフィードバックしてきた。米本社でも日本市場の重要性を認識し、要望を受け入れてくれるようになった。ここ数年“デザイン・フォー・ジャパン”というプロジェクによって、日本市場に合う製品開発を行なってきた。これは日本が特殊ということではなく、HPのプリンターの価値をさらに高めて、日本を含めてトップを目指すもので、今回発表する製品はその第1弾だ。日本市場においてもより高いシェアを目指して、エプソンやキヤノンなどの尊敬すべき競合会社と競争していく」と述べた。また「来年の今頃にはかなりのシリーズの製品が出ているよう努力していく」として、日本市場のフィードバックをインクジェットプリンターの製品開発に反映していく姿勢を明らかにした。

日本HP代表取締役社長の寺澤正雄氏
日本HP代表取締役社長の寺澤正雄氏

コンシューマー事業統括本部本部長の滝澤敦氏は、「日本のインクジェットプリンター市場は、購入ユーザーの50%以上が買い換え・買い増しとなっている成熟期にあり、今後は今まで以上に高い付加価値の製品が選択されるようになる」と述べ、プリンターそのものだけでなくサポートなどのソフト面も重要になるとしている。高い付加価値を持つ戦略的商品の投入、販売店との協調体制、消費者への需要喚起によって、deskjetシリーズ全体で今後1年間に約80万台の販売を目ざすという。

「HPとコンパックは来週から協業する」

発表会後の質疑応答では、7日(米国時間)にスタートした米HPと米コンパックコンピュータ社との合併による新生HPに関連して、日本での合併スケジュールに関しての質問が出た。これに対し、寺澤社長は「日本ではこれから公正取引委員会ほか各官庁への届けなど法律上の手続きがあり、しばらく時間がかかるが、秋口までには新会社を設立したい。(新会社では)私が会長になり、コンパック(現社長)の高柳さんが社長になるということは決まっている。製品ロードマップなどの戦略はすでにアナウンスしたとおり。これらの合併に関する作業は、昨年9月の合併発表以降、世界で1200名、日本でも数十名からなる、社内業務から独立したチームを作って進めてきており、ほとんどの作業は終了している。(HPとコンパックは)先週までは競合していたが、来週からは協業していく」と答えた。

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