このページの本文へ

米ザイリンクスのロレンツ社長兼CEO記者会見──「最先端技術のPLDでASICのシェアを奪う」

2002年04月24日 00時45分更新

文● 編集部 佐々木千之

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

ザイリンクス(株)は23日、米ザイリンクス社のウィム・ロレンツ(Willem Roelandts)社長兼CEOの来日記者会見を開催した。ロレンツ氏は、「新技術を積極的に投入してASIC(特定用途向けIC)のシェアを奪い、PLD(※1)業界で5割超のシェアを狙う」などと語った。

※1 PLD(Programmable Logic Device):ASIC(特定用途向けIC)の一種で、ユーザーが設計した回路を電気的に書き込んで(プログラミング)、任意の機能を持ったICを作成できるデバイス。一度書き込んだ後で再プログラミングも可能。FPGA(Field Programmable Gate Array)ともいう。一般的に、FPGAでは回路情報を保持するメモリーにはSRAMが使われることが多く、CPLD(Complex PLD)ではFlashROMやEEPROMなど不揮発性メモリーが使われることが多い。

ザイリンクス(株)代表取締役社長川上誠氏
ザイリンクス(株)代表取締役社長川上誠氏

会見ではまず、ザイリンクスの代表取締役社長の川上誠氏が、米国時間18日に発表したザイリンクス(全社)の2002会計年度(2001年4月~2002年3月期)決算を受けて、日本市場の状況について説明した。

川上社長が示した国内競合他社とザイリンクスの比較表
川上社長が示した国内競合他社とザイリンクスの比較表(公表された資料をもとにザイリンクスが作成したもの。競合A社は日本アルテラ(株)を示すと推測される)

川上氏は「国内のPLD市場におけるザイリンクスのマーケットシェアは7%強増加した。全社の売り上げの12.5%が日本市場からで、2001会計年度の10%からアップした。国内競合他社との差は縮まっている。2003会計年度は年間売り上げを30%増やして250億円を達成し、国内No.1のFPGA/PLDサプライヤーになる」と語った。

300mmウエハーを持つ、米ザイリンクス社長兼CEOのウィム・ロレンツ氏
300mmウエハーを持つ、米ザイリンクス社長兼CEOのウィム・ロレンツ氏

続いて壇上に上ったロレンツ氏は「ザイリンクスはファブレス(工場を持たない)という戦略をとった第1グループの企業。販売部門も直接販売組織を持つのでなく独立系の販売組織にまかせている。2001年に大きなマイナス成長に見舞われたように、半導体は大きな浮き沈みのある分野。半導体企業にとって最もお金がかかるのは販売と製造であり、これらの部門を持たないため、ザイリンクスは“新製品のデザイン”“マーケティング”“技術サポート”の3つの領域にフォーカスできる。結果として、1984年の創設以来黒字を続けており1億ドル(約130億円)超のキャッシュフローがある」

2000年、2001年におけるPLD/FPGA企業の世界市場シェアグラフ
2000年、2001年におけるPLD/FPGA企業の世界市場シェアグラフ

「我々はチップだけでなく(設計用の)ソフトウェアを持っており、全世界で10万以上のインストールベースがある。またファブ企業との戦略的パートナーシップによって、最先端のプロセス技術をいち早く利用できる。ザイリンクスは9層銅配線による0.13μmプロセスを利用できる第1グループの半導体企業だ」と述べて、ファブレスであることを最大限に生かした戦略が好結果を生んでいるとした。

ザイリンクスのサプライチェーン概要
ザイリンクスのサプライチェーン概要。ウエハーの供給は台湾UMCグループから70%、米IBM社から5%、セイコーエプソン(株)から25%の割合という。また販売チャネル別の内訳はディストリビューター経由が80%、直販が20%という
ザイリンクスの300mmウエハーの生産計画グラフ。2004年には生産量の約半分が300mmウエハーになるという
ザイリンクスの300mmウエハーの生産計画グラフ。2004年には生産量の約半分が300mmウエハーになるという

またロレンツ氏は「6月には300mmウエハーでのPLD生産を開始する。1年後には300mmウエハーによる製造の割合を50%にまで高める。こうした移行のスピードは競合他社と比べて非常に速いが、これは当社の(ファブレスであるという)コスト構造や、PLDチップが比較的ダイサイズが大きいために(大きなウエハーのほうが)生産効率が高まるということが理由だ」と述べて、300mmウエハーへの移行を積極的に進める考えを示した。

ザイリンクスの会計年度別売り上げグラフ
ザイリンクスの会計年度別売り上げグラフ

今後の業績については「業界にとってたいへん厳しかった2001年、ザイリンクスはPLD企業の中で唯一シェアを増加することができた。2001年の世界のPLD市場におけるシェアは47%だが、2002年は過半数が取れると考えている」と強気の姿勢を見せた。さらに売り上げに関しては「2002会計年度はIT業界の不況の影響を受け、2年前の売り上げレベルに戻ってしまった。しかし、四半期ごとの売り上げ推移を見ると2002会計年度第4四半期は前四半期比で20%増となっており、回復しつつある。この20%の増加部のうち85%は新しく投入した製品群の売り上げによるもの。今四半期(4~6月期)は6~8%の成長率を見込んでいる。また、2003会計年度全体の成長率は世界経済に大きな変化のない限り、25~30%が達成できると見ている」と述べ、IT市場の回復につれて、同社の売り上げも急上昇するという見通しを明らかにした。

ザイリンクスの会計年度四半期ごとの売り上げ推移グラフ
ザイリンクスの会計年度四半期ごとの売り上げ推移グラフ。グラフ中のEPSは1株当たりの利益

ロレンツ氏は「我々は業績を伸ばすにあたってはPLDの競合他社のシェアを奪うのではなく、ASICの市場を取っていこうと考えている」と述べた。さらに「2004年における、ASICとPLDを合わせた市場規模の予測は145億ドル(約1890億円)で、PLDの占める割合は39億ドル(約5070億円)未満だが、この割合を増やそうとしている。我々は高速プロセッサーやGbitレベルのトランシーバーをPLDコア上に実装する技術を得た。これによってPLD全体の市場はさらに40億ドル(約5200億円)増加すると考えている」とし、高性能・高機能のIPをPLD/FPGAと組み合わせ、従来ASICでなければ得られなかった性能/機能をPLD/FPGAベースで実現することで、PLD/FPGAの市場を広げていくという戦略を進めていくとの考えを示した。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン